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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 1A  アドホックネットワーク1(MBL)
日時: 2007年7月4日(水) 13:10 - 14:50
部屋: 平安
座長: 岡崎 直宣 (宮崎大学)

1A-1 (時間: 13:10 - 13:35)
題名シームレスハンドオーバを実現する無線メッシュネットワークの提案とシミュレーション評価
著者*伊藤 将志 (名城大学大学院), 渡邊 晃 (名城大学), 鹿間 敏弘 (福井工業大学電気電子工学科)
Pagepp. 1 - 8
Keyword無線メッシュネットワーク, 無線LAN, アドホックネットワーク, ハンドオーバ
Abstract有線LANで接続していたアクセスポイント間の接続をアドホックネットワークのルーティングプロトコルで接続することによりバックボーンインフラを容易に構築する無線メッシュネットワークの研究に注目が集まっている.現在,無線メッシュネットワークは様々な機関で研究・開発が進められており,IEEEでも802.11のタスクグループsによって標準化が進められている.しかし,無線メッシュネットワークには様々な改善点が残されており,シームレスハンドオーバの実現,通信帯域の確保,最適なルーティングプロトコルの選定などが課題としてあげられる.我々はこれらの課題に対して次のような特徴を持つWAPL(Wireless Access Point Link)を提案する.(1)シームレスなハンドオーバを実現する.(2)ルーティング制御がトラヒックに及ぼす影響を極力少なくする.(3)アドホックルーティングプロトコルを自由に選択することができる.本稿ではWAPLをns-2に実装し,シミュレーションにより評価を行った結果を報告する.シームレスハンドオーバについて研究が行われている既存の無線メッシュネットワークとしてiMeshがある.iMeshはOLSRをベースに改造を施しており,端末がAPにアソシエーションを張ると,APは拡張HNAメッセージをフラッディングすることにより端末の情報を周囲に知らせる.拡張HNAメッセージを受け取ったAPは端末とその端末を配下に有するAPをマッピングすることにより,端末間通信に必要となる経路情報を構築する.端末が移動すると拡張HNAメッセージを再度送信して経路情報を更新する.フラッディングはMACブロードキャスト中継するものであり,RTS/CTS制御,再送制御などは行わない.従って,衝突が起きやすく,パケットロスが起きやすいという特性がある.そのため,背景トラヒックのあるような状態ではブロードキャストが消滅し,ハンドオーバを失敗することがある.また,HNAメッセージは上記のようなハンドオーバ失敗を修正するために定期的にフラッディングされる.これにより,システムの規模が大きいと,HNAメッセージのトラヒックが膨大になり,端末間の通信に影響を及ぼす. WAPLは端末とAPのマッピング情報のやり取りを行う機能をアドホックルーティングと独立することによって,既存のルーティングプロトコルを用途に応じて自由に選択することができる.端末とAPのマッピング情報の交換は通信開始時とハンドオーバ時のみであり,できるだけブロードキャストを使わない様にした.そのため,マッピング情報の交換によるトラヒックの影響は微小である.シームレスハンドオーバを実現するためにAPはプロミスキャスモードで近隣1ホップのAPの通信を常時監視しており,通信中の端末とAPの関係を把握する.これにより通信中の端末が移動した時のみユニキャストにより経路情報を更新することができる.シミュレーションではiMeshとWAPLをns-2のモジュールとして実装し,比較を行った.その結果,iMeshではハンドオーバ時にロスが発生するケースがあるのに対し,WAPLでは常にロスなしでハンドオーバが可能であることを実証した.今後は更に多様なシミュレーション条件を実行し,評価の信頼性を高めていく.

1A-2 (時間: 13:35 - 14:00)
題名無線アクセスポイントリンク”WAPL”の提案と評価
著者*加藤 佳之, 伊藤 将志, 渡邊 晃 (名城大学大学院理工学研究科)
Pagepp. 9 - 15
Keyword無線メッシュネットワーク, アドホックネットワーク
AbstractIEEE802.11準拠の無線LANは導入が容易で高速な通信が可能であるため、近年急速に普及が進んでいる。今後、無線LANはより大規模な無線ネットワークを容易に構築できることが望まれる。しかし、既存のアクセスポイント(AP)が提供できる通信範囲は限られている。またAP間の接続は有線を前提としており、設置の自由度は低い。これらの問題を克服するために近年ワイヤレスメッシュネットワーク(WMN)の研究が進められている。WMNはAP間を無線で結合するため、容易に通信範囲を拡張が可能となる。我々はメッシュネットワークの実現方式の一つとしてWireless Access Point Link(WAPL)を提案している。 WAPLはWireless Access Point(WAP)と呼ぶ特別なAPを用いてネットワークを構築する。WAPは2つの無線インタフェースを持つ。一方はAPモードに設定し、インフラストラクチャモードの端末と通信を行う。もう一方はアドホックモードに設定し、WAP間の通信を行う。WAP間の通信にはMANET(Mobile Ad-hoc Network)のルーチングプロトコルを適用し、マルチホップ通信による無線結合を行う。端末間通信のIPパケットはWAPによりカプセル化され、端末からみるとWAPL全体が端末は一つのLANのように見える。 カプセル化されたパケットはリンクテーブル(LT)を参照して適切なWAPに転送される。LTは、端末のIPアドレスとその端末を収容するWAPのアドホック側のIPアドレスの対応関係を記録したテーブルである。LTが未生成の場合、WAPはLT生成要求/応答メッセージによるLT生成シーケンスを開始する。LT生成要求メッセージはフラッディングされる。このメッセージを受け取ったWAPは収容している端末に宛先端末が配下に存在するかどうかを確認する。存在する場合、LT生成応答メッセージを送信元WAPにユニキャストで送信する。このようにしてWAPはLTを生成し、以降の通信はLTを参照して行う。端末が送信するARP requestメッセージについてはWAPが代理でARP replyを返す。 本稿ではWAPLのインターネット接続について検討を行った。WAPLでは既存の有線ネットワークの接続点にGWAP(Gateway-WAP)と呼称する、特別なWAPを配置する。GWAPは外部接続用のインタフェースとルータ機能を持ち、WAPL内部から外部へと通信パケットを転送する機能を有する。各端末はデフォルトゲートウェイをGWAPに設定することで、インターネット接続が可能となる。デフォルトゲートウェイの配布はWAPL内に配置するDHCPサーバにより行われる。しかし、この方法ではWAPL内の端末のインターネット向けのパケットがすべてGWAPを経由することになるため、GWAP周辺のトラヒックが増大し、AP間通信のボトルネックとなる懸念がある。そこで本稿では複数のデフォルトゲートウェイを分散配置する。この方式は1つ以上のGWAPをWAPL上に配置する。WAPLは前述のアーキテクチャによりパケットは任意のWAPへとルーティングすることが可能である。端末からのインターネット向けのパケットを受信するとWAPは最適なGWAPを選択し、転送を行う。GWAPの選択手法には以下の2通りがある。ホップベース選択方式は送信元端末を収容するWAPと宛先のGWAPのホップ数を算出し、最小のものを選択する。この手法は端末へのトラヒックを最大化する効果が高い。フロー監視方式は各GWAPのトラヒックを監視し、トラヒックの低いGWAPに優先的にパケットを転送する。この方式はGW近傍のトラヒックを平均化する効果が高く、WAPL全体のトラヒックを最適化できる。 WAPLの基本機能は実装済みであり今後は本稿の提案手法を実装し、評価を行う。

1A-3 (時間: 14:00 - 14:25)
題名非対称無線マルチホップネットワークへのTDD導入とその効果について
著者*明石 藍子 (静岡大学大学院情報学研究科), 西井 龍五, 撫中 達司 (三菱電機情報技術総合研究所), 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院インフォマティクス部門)
Pagepp. 16 - 24
Keywordメッシュネットワーク, 非対称
Abstract 近年の無線技術の進歩,ネットワーク技術の発展に伴い, APをメッシュ状に無線接続したメッシュネットワークが注目されつつある.メッシュネットワークとは半固定的に設置された無線通信機能を持つアクセスポイント(Mesh Access Point : 以下AP)と移動端末であるモバイルノード(Station : 以下STA)で構成されるネットワークで,ネットワーク構築・システム保持の容易性,通信領域の拡大,APの負荷分散などの特性を持つ.メッシュネットワークではAPの通信範囲はSTAと同一であるため通信はシングルホップで行われている.  本研究では無線LANの規格であるIEEE802.11をベースとし,無線マルチホップネットワークネットワークの高効率化を目指すためにTDD(以下Time Division Duplex)の導入,検討を行う.メッシュネットワークの構成要素であるAPの送信出力を大きくする非対称無線マルチホップネットワークを利用することで下りデータ送信にかかる中継時間を減らすこと,TDD(Time Division Duplex)を導入することで上りデータ送信と下りデータ送信の衝突を少なくすることで,従来のメッシュネットワークからのスループットの向上を図る.  本研究のベースになっている非対称無線マルチホップネットワークとはSTAの省電力化を目的として提案されたネットワークである.メッシュネットワークにおけるAPはその設置条件上電力供給が見込めるが,一方のSTAは小型化による電力制限が厳しい.この差に着目してAPの無線出力到達距離を長くすることでAPからSTAへの通信はシングルホップ通信,STAからAPへの通信はマルチホップ通信という非対称な通信方法を持つネットワークを構成することができる.この非対称なネットワークではSTAがAPからのデータ中継を行わないため,中継にかかる電力消費・中継遅延を抑えることが可能となる.  また,携帯電話のようなモバイル環境においてはSTAからのインターネットアクセスというメッシュネットワーク利用方法が一般的と考えられる.このような環境ではサーバからSTAへのデータ(下りデータ)が端末からサーバへのデータ(上りデータ)に比べはるかに多いという前提が成り立つため,下りデータをマルチホップ通信する際の遅延やSTAにかかる負担が上りデータに比べて大きくなる.そのため,サイズの大きな下りデータをシングルホップ通信で行い中継遅延を短縮できることはネットワークの処理能力を向上させると考えられる.  しかし非対称無線ネットワークに通常のデータ通信を適用すると,APがSTA間の通信をキャリアセンスできない(電力送信範囲と電力受信範囲は異なる)ため,高出力のAPがSTA間の通信に干渉・衝突するという問題が発生する.そこで,効果的な下りデータ配信を目的として非対称無線マルチホップネットワークに対してTDDを導入する.本方式ではネットワークの運営時間を「各STAがAPに対してデータ配信を行う(上りデータ処理)期間」と「APが要求のあったSTAに対してデータ配信を行う(下りデータ処理)期間」に明示的に分離,管理する.上りデータ処理期間はAPからのデータ送信を,下りデータ処理期間はSTA間のデータ通信を禁止することでAPがキャリアセンスできないSTA間のデータ通信とAPからのデータ送信との衝突を避ける.  TDD導入の基礎評価として,従来方式(IEEE 802.11)と提案方式との性能比較を行った.トポロジやパラメータには同一の値を用いる一方,従来方式と提案方式でAPの通信範囲と動作を変更している.従来方式ではAPとSTAの通信範囲が等しいが,提案方式ではAPの通信範囲を拡大することで下りデータシングルホップを実現した.また,提案方式においてAPは全要求データ受信まで送信しないとし,全要求データ受信までを上りデータ処理期間と仮定することで時間分割による通信方向の制御を行った.また,評価指標には遅延とスループットを用いた.  シミュレーション結果として,提案方式は従来方式を基準としたときに7%〜21%の遅延時間、5倍〜15倍のスループットを示した.  本研究では下りデータを効率よく配信する非対称無線マルチホップネットワークに対してTDDを導入した際の効果について述べた.下りデータ処理と上りデータ処理を分割することでデータの干渉や衝突を減らし,効率のよいデータ通信を目指し,計算機シミュレーションを用いて有効性を示した.今後は効率的なデータ処理期間長を計算によって求め,動的に期間切り替えを行いながら現実的なデータ通信モデルを用いたシミュレーション評価を行う.また複数APを設置した場合のデータ処理等についても考察し,高性能なメッシュネットワークに関する技術を提案していく.

1A-4 (時間: 14:25 - 14:50)
題名無線ネットワークシミュレータMobiREALの並列化機構の性能向上手法と性能評価
著者*花房 諒, 山口 弘純, 楠本 真二 (大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻), 東野 輝夫 (大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学専攻)
Pagepp. 25 - 32
KeywordMobiREAL, 並列, シミュレータ, ネットワーク, lookahead
Abstract本論文では,イベントの先読み機構による移動無線ネットワーク を対象とした並列シミュレータの同期効率向上手法を提案し, その性能を評価する.本手法が対象とするネットワークシミュレ ータはシミュレーション対象の領域を複数に分割し,分割した領 域ごとに担当プロセスを割り当てる.各プロセスは結果に矛盾が 生じないように協調してシミュレーションを実現する.この種の 同期手法の性能はlookaheadと呼ばれる値に大きく依存する. 提案手法ではイベントを先読みして,lookaheadをより早期に,よ り高い精度で動的に求めることで同期効率を高める.本論文では シミュレーション対象領域の面積やノード密度を変化させて提案 手法の性能評価を行った結果,静的なlookaheadを用いた場合と 比較し約4%から約50%の性能向上が見られた.