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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 3A  アドホックネットワーク3(MBL)
日時: 2007年7月4日(水) 16:50 - 18:30
部屋: 平安
座長: 古市 実裕 (日本IBM)

3A-1 (時間: 16:50 - 17:15)
題名無線アドホックネットワーク上の位置依存情報共有における複製の動的再配置に関する一検討
著者*土田 元, 石原 進 (静岡大学創造科学技術大学院)
Pagepp. 438 - 445
Keywordアドホックネットワーク, 位置依存情報, 複製配置, Geocast
Abstract無線アドホックネットワークでは,端末の移動等により,各端末が保持している情 報を他の端末から利用できなくなるという状況が発生する.この問題の解決手法として筆者らは,位置に依存した情報をサーバレスなアドホックネットワーク上で扱われ,利用される情報がGeocastによってアクセスされることを想定し,データ発生位置の周辺に複製を配置する手法として位置依存情報複製配布方式Skip Copy (SC) 方式,Adaptive Skip Copy (ASC)方式を提案・評価してきたが,応答経路上の端末にしか複製が再配置されないという問題点があった.そこで本稿では,これらの方式の問題点を解決するための手法LDR(Link-aware and Density-based Relocation)方式を提案する.LDR方式ではネットワークの分岐点となる端末の下流に存在する端末に複製を保持させる.シミュレーションの結果,LDR方式では既存の複製再配置手法よりもメモリサイズが小さいときに高いアクセス成功率が得られることが確かめられた.

3A-2 (時間: 17:15 - 17:40)
題名中継ノードの行動がWLANに与える影響の評価 -Mixed ModeとAd-hoc Modeの比較-
著者*市川 貴久 (愛知県立大学大学院 情報科学研究科), 奥田 隆史, 井手口 哲夫, 田 学軍 (愛知県立大学 情報科学部)
Pagepp. 446 - 450
KeywordAd-hoc Mode, Mixed Mode, 中継ノード, マルチエージェント
Abstract本稿では,WLANを利用するにあたり,中継ノードの行動がネットワーク全体に与える影響について検討することを目的とする. 我が国におけるインターネット利用者数は2005年末までの統計によると約8329万人,人口普及率に換算すると66.8%と推定されている.利用端末状況は,パソコンと携帯電話等の両端末を利用している人数が4862万人(57.0%)で,パソコンのみを利用している人数は1585万人(18.6%),携帯電話等のみを利用している人数は1921万人(22.5%)となっており,近年モバイル化がさらに進展している. また,ネットワーク技術の発展に伴い,携帯電話等の携帯情報端末を利用した無線通信が普及している.現在のサービスでは,基地局を介して行われているため,地震等の災害によって基地局の機能が停止した場合,通信が遮断されてしまう恐れがある.こういった問題を解決するネットワーク形態として,アドホックネットワークが注目されている. アドホックネットワークとは,「特別に」,「その場限りの」といった意味をもつラテン語からきたアドホック(ad-hoc) と,ネットワークインフラを組み合わせた言葉である.アドホックネットワークの利用方法としては,いつでも・どこでも・誰でもインターネットアクセス,イベント会場でのマルチメディア情報交換や,位置情報と連携した情報配信サービス,家族・友人・知人等でアドホックコミュニティを構築して情報交換といったものが考えられる. アドホックネットワークでは,広くコンピュータ等の無線接続に用いられているIEEE802.11x等の技術を用いながら多数のユーザ端末をアクセスポイントの介在なしに相互に接続する形態(マルチホップ通信) を取っている.このようなネットワークでは,ユーザの自由な行動(例えば,データ送信時には中継要求を中継ノードに依頼するが,中継側の立場になった場合,バッテリ消費やPCへの負荷を考え,中継を拒否する)により,ネットワークトポロジーが刻々と変化するため,新たなサービスを安定的に提供する場合,あらかじめネットワーク全体の接続率を見積もる必要がある.文献[1]では, 1.ユーザの行動を表現するために,人間の行動を表現する理論である「プロスペクト理論」を利用[2] 2.高い接続率を維持するためにはユーザの協力的行動が不可欠である.そこで,ユーザの協力的意欲を引き出すためのインセンティブとして,中継処理を行ったユーザに対してポイントを付与する「中継ポイント制」を導入 の2点を考慮に入れ,アドホックネットワークシステムをマルチエージェントシステム[3]として捉え表現することにより,地方都市でアドホックネットワークを利用した場合のネットワーク全体の接続率を評価する手法を提案した.提案手法により,人口密度の低い地域でアドホックネットワークを利用する場合,全ユーザが協力的な行動をしても高い接続率を維持することは困難であることがわかった.そこで本研究では,従来のネットワークインフラとして利用されている固定のアクセスポイント(以下,AP)を数ヶ所に設置し,各ユーザ端末だけではカバーすることができない範囲についてはAPを経由して通信を行うネットワーク形態(Mixed Mode)[4]について焦点をあてる.文献[1]では,純粋なアドホックネットワーク(ユーザ端末のみで構成されたネットワーク)において,ユーザの行動がネットワーク全体の接続率に与える影響およびコストについて評価している.本研究では,前述したMixed Modeにおいて,ユーザの行動がネットワーク全体の接続率に与える影響およびコストについて評価し,文献[1]の結果との相違を考察する. 参考文献 [1] 市川貴久,奥田隆史,“プロスペクト理論を用いたアドホックネットワークの性能評価手法 -中継ノードの行動がネットワーク品質に与える影響の予測-”,平成18度卒業論文,2007. [2] 多田洋介,『行動経済学入門』,日本経済新聞社,2003. [3] 大内東,山本雅人,川村秀憲, 『マルチエージェントシステムの基礎と応用』, コロナ社,2002. [4] Stefano M. Faccin,Carl Wijting,Jarkko Kneckt,Ameya Damle,“MESH WLAN NETWORKS:CONCEPT AND SYSTEM DESIGN”,IEEE Wireless Communications,April 2006.

3A-3 (時間: 17:40 - 18:05)
題名MANETにおけるモバイルDBデータ転送時の中継ノード高機能化
著者*松井 愛子, 神坂 紀久子 (お茶の水女子大学), 山口 実靖 (工学院大学), 小口 正人 (お茶の水女子大学)
Pagepp. 451 - 459
Keyword無線LAN, マルチホップ, プロトコル, モバイルDB
Abstract無線通信の一つの利用形態として、既存のインフラに頼らずに移動無線端末同士で動的にネットワークを構築する、モバイルアドホックネットワーク(MANET)がある。現在、MANEATを用いたセンサネットワークやモバイルDBについての多くの研究がなされている。そのMANETにおいて期待される手法としてマルチホップ通信がある。マルチホップ通信を用いれば、端末同士が直接通信するだけでなく、他の端末を経由することでより広い範囲の端末と複数の経路を介した通信が可能となる。 我々は、これまでに無線LAN通信および無線LANを含むマルチホップ環境等におけるTCPパラメータの振舞やスループット等を詳細に調べてきた。その結果、有線LANと比べ極めて小さい無線LANの帯域幅が、無線LAN独自の通信を行わせることが分かった。 その経験から、無線LANの帯域幅が小さいため、無線LANをインタフェースとして持つ端末は下位層の通信処理に比べて上位層において余裕がある可能性が高いことが予想される。従ってマルチホップ通信におけるデータ中継ノードに、中継データをキャッシュしたりアグリゲートする等の高度な処理を行わせたとしても通信性能にはさほど影響が出ない可能性があると考えられる。MANETは無線LANの一部の区間が断続的に切断される状況が多く起こると考えられるが、そのような場合、中継ノードにキャッシュやアグリゲート等の高度な処理をさせるという形態は極めて有効である。そもそも無線LANは有線LANと異なり、帯域に大きな制約があることから、通信は出来るだけ節約し、中継ノードの機能を出来るだけ高機能化させる、という考えは自然である。 このような考えのもと、既に我々は、無線LANツーホップ通信環境において |羞僖痢璽匹肪韻縫如璽燭鮹羞僂気擦訃豺腓斑羞僖痢璽匹離▲廛螢院璽轡腑鸛悗砲いてデータをread/writeさせた場合 2台の端末のDB間でデータ転送を行う際に、中継ノードに単にデータを中継させる場合と中継ノード自体にDB動作(データキャッシュ)を行わせた場合 について通信性能測定実験を行い、中継ノードにおける処理の有無に対する通信性能の差について調べた。その結果、中継ノードにおいて処理を行っても十分に良い性能が得られ、中継ノードにおける処理の有効性を確認した。 そこで本研究では、より具体的なアプリケーションを想定し、その環境に応じた実験を行う。まずモバイル通信に適していると考えられるインメモリDBを採用し、無線LANマルチホップ環境におけるインメモリDB転送システムを構築する。その環境においてストリームデータを流し、中継ノードにおける処理の有無に対する通信性能の差を測定し解析を行う。

3A-4 (時間: 18:05 - 18:30)
題名ペアワイズテストを応用した無線ネットワークの性能評価技法
著者*中村 雅俊, 前田 久美子, 山口 弘純, 東野 輝夫 (大阪大学 大学院情報科学研究科)
Pagepp. 460 - 467
KeywordMANET, ペアワイズ, 性能試験, 組み合わせ試験
Abstract近年,ユビキタス社会を支える技術として無線通信ネットワークが重要な役割を担っている.無線 通信によるサービスは基地局などのインフラを用いるものが一般的であるが,一方では特定の基地 局を用いずにそれぞれのノードがルータの役割を担うモバイルアドホックネットワーク(MANET) による新しい形の通信サービスが期待されている. MANET によって構成されるシステムやサービスは,リンク層,ネットワーク層,トランスポー ト層の既存のプロトコルや要求する通信の性質に合わせて新たに実装されたプロトコルを組み合わ せて実現され,得られる通信性能はこれらの複数層に渡るプロトコルの持つパラメータ値に左右さ れる.また同時に,MANET を構成しているノードの密度や速度,移動方向などのモビリティも通 信性能に大きな影響を与えている. 本研究では,このように性能に多くのパラメータを持つMANET の組み合わせ性能試験をなるべ く少ないテスト数で行う一手法の提案を行っている. ここでは,それぞれのパラメータに値を指定したものをテストケースと呼ぶ. パラメータのうち,整数値や実数値のように多様な値をとりうるパラメータに対しては, 値を数段階に区切り,その中の代表値を水準として組み合わせテストに取り入れる. 水準の取り方としては,仕様書などでデフォルト値として提案されて いる値やその2 倍,4 倍といった値,1/2 倍,1/4 倍といった値を用いることが考えられる.ここで 例えば,n 個のプロトコルパラメータが含まれているあるMANET アプリケーションの実装に対し て,それぞれのパラメータが代表値としてm 水準の値をとった場合のテストを行いたいとする.す ると,網羅的に考えられる組み合わせを列挙した場合,m^n 個と膨大な数になってしまう.そこで, あらゆる2 個のパラメータについて取りうる水準の組み合わせが全て網羅されるようにテストケー ス集合を生成するペアワイズテスト,及び注目するパラメータの個数を2 個から任意のt 個に拡張し たt-wise テストの手法を用いる.t-wise テストにより,通信性能に影響を持つパラメータがせ いぜいt 個に限られるとき,その組み合わせを全て含みながら単純な網羅による組み合わせとくらべ 大幅に少ない数のテストケース集合を得ることができる.このようなt-wise テストによる通信性能 の試験を行うことで高い通信性能が出たり,通信に不具合をもたらすようなパラメータ値の組み合わ せを明らかにできると考えられる. t-wise テストの組み合わせの数を削減するには,t をできる限り低くとることが効果的であるが, パラメータ間の網羅率の低下につながる.例えば,t を最小に取った2-wise テストでは,性能に影響 を与えるパラメータが2 個を超えると性能評価が難しくなる.特にパラメータがそれぞれ別個に性 能に対して影響しているのではなく,複数のパラメータの組み合わせによって影響の現れ方に差があ る場合,一般的にはt の値を大きく取る以外の方法はない.しかし,パラメータの及ぼす影響が単純 な形で現れている場合,例えばあるパラメータを特定の値に固定することが性能の向上に寄与す る場合,パラメータをその値に固定する.また,通常はパラメータの影響は見られないがあ るパラメータの組み合わせを取ったときのみ通信が全くできないというような極端な性能の低下が ある場合,望ましくない影響が現れる値の組を禁則として除外することでt を低い値に保ちながらテ ストを実施できるようにする. 一方,MANET ではノードの密度や速度,移動方向などのモビリティも通信性能に影響を与えて いるため,提案手法ではこのような使用環境を環境パラメータとして与える.環境パラメータはその 何れもが通信性能との相関が強いと考えられ,プロトコルパラメータと同様に組み込んでt-wise テ ストを実施しようとすると,t を大きく取らざるを得なくなりテストケース数は膨大になってしまう. このため,性能試験を前後半の二段階に分離して実施する.前半では性能と関係の深いパラメータを 調べ,後半の性能試験に組み込むプロトコルパラメータを絞り込む. 後半では,関係の薄いと考えられるプロトコルパラメータ間の組み合わせを除外し, 絞り込んだプロトコルパラメータを用いて環境パラメータとの組み合わせ試験を実施することで, テスト数を大幅に増やすことなくプロトコルパラメータと環境パラメータの関係を調べることが可能である. このような方法でt-wiseテストをMANET に適用し,少ないテスト数で網羅率の高い性能試験を行うことを目指している. 提案手法の有効性を確認するため,MANETのルーティングプロトコルDSR上のTCPセッション に対する性能試験を実施した. 無線ネットワーク上でTCP通信を行ったとき,通信の帯域や安定性に問題があることや, 複数のセッション間ではfairnessが保たれないことが知られている. 今回,これらの問題を提案手法で確認し,関係の深いパラメータを明らかにした.