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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 4A  ワイヤレスMACプロトコル(MBL)
日時: 2007年7月5日(木) 8:30 - 10:10
部屋: 平安
座長: 長谷川 輝之 (KDDI研究所)

4A-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名スマートアンテナを用いた指向性MACの空間利用効率に関する実証的考察
著者*渡辺 正浩 (ATR適応コミュニケーション研究所スマートネットワーク研究室), 河村 直哉 (静岡大学大学院情報学研究科), 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 小花 貞夫 (ATR適応コミュニケーション研究所所長), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院インフォマティクス部門)
Pagepp. 639 - 648
KeywordAd hoc, MAC, ZigBee, Throughput, SDMA
Abstract無線アドホックネットワークの指向性メディアアクセス制御(MAC: Medium Access Control)プロトコルの研究において,実際のアンテナのビーム形状,無線装置の固有の特性,実空間の電波伝搬による影響を含めた実環境での性能を評価する.スマートアンテナとしてESPAR (Electronically Steerable Parasitic Array Radiator)アンテナ,無線装置としてIEEE802.15.4規格のZigBeeチップをベースとして用い,指向性ビームを用いたMACプロトコルとしてSWAMP (Smart antenna based Wider range Access MAC Protocol)方式を実装する.実環境における基本特性として,SWAMPにおける空間分割多重化や通信の長距離化を主目的とするモードでは,それぞれの実効スループットとして,166.8Kbits/sec,175.2Kbits/sec(例:1500Bytesデータの場合)が得られることを示す.また,両モードを組み合わせたSWAMPの運用において,D-NAV (Directional-Network Allocation Vector)後のスペース時間を設けて,両モードがシェアしながら通信する特性を示し,D-NAVが直線トポロジーにおける指向性隠れ端末の発生を抑止出来る効果があることを示す.

4A-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名実環境における指向性MACプロトコルのDeafnessと隠れ端末問題について
著者*河村 直哉 (静岡大学大学院/情報学研究科), 高田 昌忠 (静岡大学大学院/理工学研究科), 萬代 雅希 (静岡大学/情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院/インフォマティクス部門)
Pagepp. 649 - 656
KeywordMAC
Abstract近年,無線アドホックネットワークが注目されている.全ての端末が無線チャネルを共有するアドホックネットワークでは,無線媒体の効率的な利用が重要課題の1つである.従来のアドホックネットワークでは無指向性アンテナの使用が前提とされてきた.無指向性アンテナは全方位に電波が放射されるため,位置を特定できない移動通信環境下において有効であるが,周囲の端末にとっては干渉波となるため,高スループットの実現は困難である.そこで近年,アンテナビームの指向性を任意に制御可能な指向性アンテナの利用が注目されている.指向性アンテナは,任意の方向へビームを形成することにより周辺端末への干渉を抑制することが可能となる.そのため,高い空間利用効率を実現できる.また,特定の方向に高い利得を持たせることにより同じ送信電力での通信距離を拡大することができる.しかし,指向性アンテナを使用することで無指向性アンテナでは起こりえなかった新たな問題が発生する.本論文では,特にDeafness問題と指向性隠れ端末問題に着目し,実環境テストベッドを用いて実環境での影響を示す. 指向性通信では特定方向で通信を行うことで空間利用効率が向上する反面,周辺の通信の状況を把握できない問題がある.Deafness問題は通信したい相手がビジーであることを知らず通信を試みようとするが,受信者が自身のビームを他の方位に向けているために通信が失敗してしまう問題である.通信が失敗すると再送,バックオフ処理を行う.これは意図する相手の通信が終了するまで,繰り返される.これによりパケットの廃棄,無線チャネルの浪費等を引き起こし,スループット性能に大きな影響を与える.  指向性隠れ端末問題とは,無指向性アンテナ,指向性アンテナの利得差によって発生する問題である.通常,アイドル状態では,各端末は無指向性アンテナで待機する.これは,パケットがどの方向から送信されるかわからないためである.そのため,各端末が周辺端末の通信を受信できる範囲としては,無指向性送信-無指向性受信,指向性送信-無指向性受信で通信可能な範囲となる.周辺端末の通信を受信した端末はNAV (Network Allocation Vector)を設定することにより,他の通信との干渉を回避する.しかし,指向性アンテナを用いたMACプロトコルでは,DATA受信に指向性ビームを用いる方式がある.この場合,影響を受ける範囲は指向性送信-指向性受信の範囲まで拡張される.つまり,NAVを設定させていない端末からの影響を受けることになる.これが指向性隠れ端末問題である. これらの評価は電波伝播環境や指向性のビームパターンを理想化した計算機シミュレーションによるものが多く,実環境における性能に関して十分な知見が得られていない.そこで本論文では実環境におけるDeafness問題と指向性隠れ端末問題の影響について考察する.Deafness問題については,実際のビームパターンではサイドローブが存在し,実環境においてはDeafnessの軽減がなされると考えられる.しかし,制御フレームが送信されない範囲が存在し,実環境においてもDeafnessは大きな問題であると考えられる.また,指向性隠れ端末問題についてもサイドローブの影響により軽減されると考えられるが,無指向性アンテナと指向性アンテナの利得差から,実環境においても影響が大きいと考えられる. これらの考察に基づき,無線MACプロトコルのテストベッドを用いて指向性MACプロトコルとしてDMACを,無指向性MACプロトコルとしてIEEE 802.11を実装する.実験によってDeafnessが実環境において発生することを確認した.DeafnessによってRTSの失敗が多く発生していることを確認し,その結果DeafnessによってIEEE 802.11よりもDMACのスループットが低下することを示す.また,指向性隠れ端末問題によってデータの衝突によりスループットが低下していることを示す.

4A-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名On an Ad Hoc Routing Protocol using Directional Antennas
著者*Masanori Takata, Masaki Bandai, Takashi Watanabe (Shizuoka University)
Pagepp. 657 - 662
KeywordAd Hoc Networks, Routing Protocol, Directional Antennas, Load-Aware Routing
AbstractDirectional antennas have great potential such as high spatial reuse and range extension. To fully exploit the benefits of directional antennas in ad hoc networks, efficient routing protocols as well as MAC schemes are to be considered. This paper proposes Load-Aware Directional Routing (LADR) to establish routes with fewer loads. Each node maintains current load information for each beam. In LADR, a route request packet is sequentially transmitted from the beam with few loads to establish a fewer loads route. LADR realizes load balancing without additional control overhead. Simulation results show that LADR outperforms DDSR and DSR in terms of the packet delivery ratio, throughput, and end-to-end delay, especially when the sending rate is high and the number of the sessions is large.

4A-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名指向性アンテナを用いたアドホックネットワークMACプロトコルにおける隠れ端末問題への対処法について
著者*高塚 雄也 (静岡大学大学院情報学研究科), 高田 昌忠 (静岡大学大学院理工学研究科), 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院インフォマティクス部門)
Pagepp. 663 - 670
Keywordアドホックネットワーク, MACプロトコル, 指向性アンテナ, マイナーローブ
Abstract近年,アドホックネットワークにおける指向性MACプロトコルが提案されている.指向性アンテナを使用することにより,ネットワーク性能は大きく改善されると考えられる.しかし,指向性アンテナの使用により,無指向性アンテナでは発生しなかった新たな問題が発生する.本論文では,二つの問題に注目する.一つ目は指向性隠れ端末問題である.指向性隠れ端末問題は無指向性アンテナ,指向性アンテナの利得の違いにより発生する.二つ目は,マイナーローブによる影響である.実際のアンテナでは,サイドローブ,バックローブ等のマイナーローブが発生する.これらのマイナーローブは,ネットワーク性能に影響を及ぼすことが考えられる.本論文では,指向性隠れ端末問題,マイナーローブによる影響に対処する指向性MACプロトコルであるDMAC-PCDR (Directional MAC with Power Control and Directional Receiving) を提案する.DMAC-PCDRは二つの特徴を持つ.一つ目は,指向性巡回受信であり,二つ目は,宛先端末の位置情報により選択される3つのアクセスモードである.シミュレーション評価により,DMAC-PCDRはスループット性能が向上することを示した.