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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 7E  放送型情報配信(BCC)
日時: 2007年7月6日(金) 8:30 - 10:40
部屋: 鶴・亀
座長: 阿倍 博信 (三菱電機)

7E-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名情報配信システムにおける情報の取得先RSSサイトの遠隔指定機能の実装
著者*矢野 健太郎, 樋上 喜信, 小林 真也 (愛媛大学理工学研究科)
Pagepp. 1421 - 1426
KeywordRSS, 情報フィルタリング, ディジタルデバイド, 情報過多
Abstract 近年、情報ネットワークの普及により全世界と情報網が繋がり、情報通信が高速化した。それにより多くの人が今まで手に入れることの出来なかった情報を容易に手に入れることが出来るようになった。その革新的な情報社会において、情報システムを扱うことができる人と扱うことができない人との格差が大きな問題となっている。さらに、インターネットが普及する以前は手に入る情報が少なすぎることが問題であったが、現在ではインターネット上の高機能な検索エンジン等により取得できる情報は膨大になった。しかし、本当に必要な情報のみを取得するための情報選別が困難になるという問題が生じている。このような問題を解決するために、我々はPUSH型情報配信システムPinotを提案している。PUSH型情報配信とは、ラジオやテレビ等のように発信側がきっかけとなって受信側に情報を配信する方法である。従って受信側にとってその情報が不必要であったとしても配信されるが、誰でも簡単に利用することができる。  Pinotはテレビ局、情報配信サーバー、情報BOX、テレビ、リモコンで構成されている。テレビ局はテレビ番組、また情報配信サーバーはテキスト情報を配信する。配信されるテキスト情報には緊急情報、緊急詳細情報、確認情報、一般情報の4種類がある。情報配信サーバーのオペレーターが配信するテキスト情報の入力等を行い、情報配信サーバーが情報BOXにテキスト情報を配信する。次に情報BOXは、情報配信サーバーから送られてきたテキスト情報に対して情報フィルタリングを行い、ユーザーに興味があると判断したテキスト情報と、テレビ局から送られてきたテレビ番組の映像を合成してテレビ画面に表示させる。情報BOXが情報フィルタリングを行うことで情報数の増大を抑えることができる。ユーザーはリモコンを用いて、先飛ばし、逆戻し、一時停止の操作をテレビ画面のテキスト情報に対し行う。  現在、情報配信サーバーが配信するテキスト情報の取得方法は2種類あり、オペレーターの手入力による取得方法と、RSSサイトからのダウンロードによる取得方法が存在する。オペレーターの手入力による取得方法は、4種類全てのテキスト情報の取得に利用している。この取得方法は、オペレーターが情報を直接入力するため配信する情報を自由に決めることができるが、オペレーターの負担は大きい。一方、RSSサイトからのダウンロードによる取得方法は、現在一般情報の取得にのみ利用している。この取得方法は、オペレーターが情報配信サーバーに情報の取得元であるRSSサイトのアドレスを予め登録しておき、オペレーターが情報のダウンロードの指令を行うと情報をダウンロードし、情報BOXに配信する。この方法を用いると、オペレーターが自由に配信する情報を決めることはできないが、RSSサイトのアドレスを事前に登録しておくと、後はダウンロードの指令を行うだけなのでオペレーターの負担は小さい。  RSSサイトからのダウンロードによる取得方法の場合、情報の取得元であるRSSサイトと情報の配信先である情報BOXの数が増えると、情報配信サーバーの負荷が大きくなるという問題が生じる。また緊急詳細情報を配信する際に、オペレーターが手入力で情報を入力すると時間がかかり、情報配信が遅れしまうという課題も存在する。それらの解決のために、RSSサイトから情報をダウンロードするのは情報配信サーバーではなく、情報BOXが直接ダウンロードするという方法を提案する。まず、オペレーターが情報の取得元であるRSSサイトのアドレスを情報配信サーバーに入力し、RSSサイトのアドレスを情報配信サーバーが情報BOXに通知する。通知を受けた情報BOXはすぐにそのRSSサイトから情報のダウンロードを行い、そのアドレスは保持しておく。つまり、一度情報配信サーバーがRSSサイトのアドレスを通知すると、それ以後は定期的に情報BOXがそのRSSサイトから情報をダウンロードするので情報配信サーバーの負荷を軽減させることができる。さらにこの提案法を緊急詳細情報の配信に適用すると、オペレーターが緊急詳細情報を手入力で入力する必要がないので緊急詳細情報配信のリアルタイム性の確保が可能となる。また、ユーザーがRSSサイトのアドレスを指定するのではなく、情報配信サーバーが指定することにより、信頼できない情報を配信しているサイトや詐欺行為を行っているサイト等に誤ってユーザーがアクセスすることはなく、情報システムを利用する技術がないユーザーでも安心して利用することができる。提案法により、情報配信サーバーの負荷集中の問題解決と緊急詳細情報配信のリアルタイム性の確保ができ、さらにディジタルデバイドの問題も生じない。

7E-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名Tickerの情報表示動作への指示操作に基づく興味の有無の判断法の改善
著者*遠藤 洋記, 樋上 喜信, 小林 真也 (愛媛大学大学院理工学研究科)
Pagepp. 1427 - 1439
Keyword情報過多, ディジタルデバイド, 興味の類推

7E-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名放送型配信を用いたデータ収集のためのセンシングシステム
著者*藤田 直生 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻), 義久 智樹 (京都大学/学術情報メディアセンター), 塚本 昌彦 (神戸大学大学院/工学研究科電気電子工学専攻)
Pagepp. 1440 - 1447
Keyword放送, センサネットワーク, 投機型センシング, ユビキタスコンピューティング
Abstract近年,医療,セキュリティ,防災,環境リスクの把握のため,温度や湿度といったセンサが情報ネットワークを形成して通信するセンサネットワークに対する注目が高まっている.センサネットワークでは,センサから発生するデータを収集してからデータ処理を行う場合が多く,様々な手法が提案されている.非常に多数のセンサが存在する場合通信量が多くなり,データの収集に時間がかかるといった問題がある.これまで,筆者らの研究グループでは,推測値を放送型で配信してデータを効率的に収集する手法を提案してきたが,シミュレーションによる評価がほとんどであり,実機による性能評価を行っていなかった.実環境では,配信エラーや,輻輳が発生するため,実環境での評価は重要である. そこで本研究では,ハードウェアに提案手法を実装し,その性能評価を行った.評価の結果,複数のセンサに同時に推測値を送信でき,通信量が削減された.これにより多くのセンサノードを配置する環境で問題となる通信の輻輳を解消できることを確認した.また,センサノードからの送信が抑制されるため,センサノードの消費電力が削減された.

7E-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名P2Pネットワークを用いた連続メディアデータの放送型配信手法
著者*後藤 佑介 (京都大学大学院), 義久 智樹, 金澤 正憲 (京都大学学術情報メディアセンター)
Pagepp. 1448 - 1455
Keyword放送, 通信, プロトコル
Abstract 近年の放送通信融合環境への注目の高まりにともない,ネットワーク接続型の映像再生装置が普及している.これらは,映像データを放送波から受信して視聴し,視聴している映像に関連する情報をインターネットから取得している.例えば,ドラマの主人公が着ている服の情報を表示したり,サッカーの試合中に他会場の得点状況を表示する場合が考えられる.しかし,視聴できる映像データは現在放送されている映像データのみであり,視聴者が見たい映像を見たいときに視聴することはできなかった.このようなオンデマンド型の視聴形態は,近年のインターネット放送の普及により一般化しており,ネットワーク接続型の映像再生装置においても見たい映像を見たいときに視聴できる視聴形態が求められている.これまで,周期的に繰り返して同じ映像データを放送することで擬似的にオンデマンド型の視聴形態を実現する擬似オンデマンド型の放送型配信に関する研究が多数行われているが,放送する映像データの数が増えると、待ち時間が長くなるといった問題がある.  そこで本研究では,ネットワーク接続型の映像再生装置でP2Pネットワークを構成し,映像データを共有して視聴するシステムを提案する.P2Pネットワークでは,ピアと呼ばれるクライアントがサーバを中継することなくデータを送受信することで,サーバへの負荷集中を回避できる.このため,BittorretやNapstarといったP2Pシステムが普及している.クライアントが保持しているデータを共有できるため,多数の映像データの配信に適していると考える.あるデータに対して受信要求が偏ると,他のデータに対する受信時間が長くなるが,本研究では,放送波を用いた映像データ配信も同時に行うことで,P2Pネットワークにおけるこの受信時間を短縮する.例えば,映像データの一部をP2Pネットワークから受信すると,規定の時間より受信待ち時間が長くなる場合,放送サーバにその部分の配信を依頼し,放送波からデータを受信する.P2Pネットワークと放送型配信を融合することで,互いの問題点を軽減し,視聴者が見たいときに見たい映像を視聴できる視聴形態を可能とする.本研究では,P2Pネットワークにおいて人気のある映像データや,受信クライアント数を把握する必要があるため,受信状況を管理できるBitTorrentプロトコルを用いる.BitTorrentプロトコルでは,ピアはP2Pネットワークへの接続時に一度サーバに接続するため,ピアの動作を常に監視できる.また,データを固定長に分割して送受信するため,あるピアが通信を占有することがない.分割されたデータの受信要求には幾つかの戦略がある.Strict Priority戦略では,クライアントが連続メディアデータの分割ファイルの受信を開始すると,他の分割ファイルは受信せずに,受信対象となる分割ファイルをさらに等分割したサブファイルをすべて受信する.すべてのデータを受信すると,そのピアは他のピアからダウンロードされる対象になる.他のファイルの受信にかかる時間分だけ受信待ち時間を短縮できるという利点があるが,この手法では,ノード群のレベルで見ると,分割ファイルがいくつかのピアに集中してしまうため,結果として他のピアがデータの受信を要求したときにデータの受信要求から受信完了までの時間が大きくなってしまう.そこで,Rarest First戦略では,ノード群のレベルで見たときに,いかにピアのノードを分散させる.この手法では,最終的にすべてのノードがすべての分割ファイルを取得できる環境を目指している.ピアがデータの受信を要求すると,他のピアが持っていない分割ファイルを優先的にダウンロードしようと試みる.これは,分割ファイルをノード間に分散させるための戦略である.本研究で提案するシステムでは,Rarest First戦略を用いて,分割ファイルをすべてのピアに効率的に分散させる.また,放送サーバと連携することで,ピアのデータ受信における待ち時間を短縮する.  結果として,P2Pネットワークと放送型配信を併用し,クライアントが受信するデータを効率的にスケジューリングしてデータの受信にかかる時間の最大値を放送型配信で軽減させることで,クライアントがデータの受信を要求してから受信を完了するまでの時間を短縮できた.

7E-5 (時間: 10:10 - 10:35)
題名実ネットワーク環境を考慮したP2Pビデオ配信システムの提案
著者*横川 芳隆 (岩手県立大学大学院 ソフトウェア情報学研究科), 橋本 浩二, 柴田 義孝 (岩手県立大学 ソフトウェア情報学部)
Pagepp. 1456 - 1463
KeywordP2P, マルチメディアシステム, 放送プロトコル
Abstract近年,効率的なビデオ配信手法としてP2Pネットワークの研究が数多く行われているが,多くはユーザの属する現実のネットワーク環境を考慮せず,配信にはIP unicastを用いているため,各ノードの配信負荷が課題となる.また,ユーザの多様化する品質要求に対応するため,適切な品質で配信を行う方法も必要となる.本稿では,多様な接続形態が混在する環境に属するユーザに対して,ユーザのネットワーク環境や品質要求,および配信に利用するP2Pネットワークの動的な変化に柔軟に対応するため,1) ユーザのネットワーク環境に応じたIP unicast/multicastの配信方式の選択機能,2) ユーザ要求に基づくコンテンツのトランスコーディング機能,3) サブストリーム配信による配信連続性保証の機能 を持ったP2Pビデオ配信システムを提案する.