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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 7H  ネットワークと応用(DPS)
日時: 2007年7月6日(金) 8:30 - 10:40
部屋: 回転スカイラウンジ
座長: 重野 寛 (慶応義塾大学)

7H-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名構造化オーバレイを利用したコンテキスト管理サーバの実装および評価
著者*吉澤 政洋 (日立製作所中央研究所)
Pagepp. 1520 - 1527
Keywordコンテキストアウェアネス, 構造化オーバレイ, IP電話, プレゼンス, センサネット
Abstractコンテキスト管理サーバとは,各種センサから取得した情報からユーザの状況を推測し,状況に応じてユーザ間コミュニケーションを制御するサーバである.ユーザが携帯可能なセンサの普及に伴い,コンテキスト管理サーバの処理量は増加し,その重要性も増す.しかし,従来の負荷分散方式はシステム共通のデータベースを用いるため,大量のセンサ情報を扱うコンテキスト管理サーバには適していない.本研究では,データベースへの負荷集中を防ぐために,コンテキスト管理サーバ群が形成する構造化オーバレイを利用した負荷分散方式を提案する.また,従来方式と提案方式の両方の負荷分散を容易に切り替え可能なコンテキスト管理サーバContext Crossoverを提案する.本稿では,Context Crossoverサーバの実装と評価,ならびに今後の課題について述べる.

7H-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名連接共起単語を用いた形態素解析用辞書への新語獲得方式
著者*三枝 優一, 速水 治夫 (神奈川工科大学大学院 工学研究科 情報工学専攻)
Pagepp. 1528 - 1531
KeywordWeb, 自然言語, 品詞同定

7H-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名システムメトリックの相関関係を用いた自律制御ポリシ開発手法の提案
著者*西村 祥治 (NEC インターネットシステム研究所)
Pagepp. 1532 - 1537
Keyword自律制御, ポリシ, ポリシ開発, 相関性
AbstractWebシステムをはじめとするサーバシステムは、そのSLA(Service Level Agreement)を 遵守できるように、注意深く設計、開発、そして運用がなされている。現在は、 あらかじめ、想定される最大負荷に耐えうるように構成されることが主流であるが、 今後、負荷の増減にあわせて、その構成を変えることができると、 資源の有効利用やシステムに必要な費用削減などに効果があると期待されている。 この負荷に応じて、素早く対応するためのシステムとして、ポリシベースの 自律制御システムが提案され、その実現可能性の研究が進められている。 ここでいう、ポリシとは、SLAを遵守するために、システムがどのような状況に なったとき(コンディション)に、システムに対してどのような操作を適用するか (アクション)の組として記述されるものである。 ポリシベースの自律制御システムでは、このポリシのセットをあらかじめ制御システム に与えておくことで、システムに対する負荷の変動に応じて、自律的な制御を 実現している。 しかしながら、これらのポリシセットを設計、開発することは、一般的に困難である。 なぜなら、そのシステムが守るべきSLAとシステムのメトリックがどう関連づいているか、 そのシステムのメトリックがどんな閾値を越えたときに構成を変更すべきか、 構成変更するとき、どの層にどれだけの資源を投入すればよいか、 など、システム全体を見渡しながら設計、開発する必要があるからである。 そこで、我々は、Web3層システムに代表されるような多段構成になっている Webシステムを対象に、各層の処理能力のバランスを考慮して、ポリシセットの開発を 支援する方法を提案する。 システムのメトリックは、そのシステムにかけられたワークロードによって、 その値を変化させる。このとき、ワークロードとシステムのメトリックの間、および、 いくつかのシステムのメトリックの間で、相関性を持っていることが、 G. Jiangらの研究(Discovering Likely Invariants of Distributed Transaction Systems for Autonomic System Management: ICAC 2006)で報告されている。 我々は、この点に注目し、これらの相関関係を元に、各層の処理能力のバランスが とれたシステム構成の導出および、これらのシステム構成を遷移を駆動する コンディションの導出を試みる。 まず、テスト環境上のシステムに、ワークロードを与え、システムのメトリックの 時系列データを収集する。 次に、各メトリックの時系列データを回帰分析により、メトリック間の相関関係を 抽出し、個々の回帰式を元に、各メトリックの値の間の相対比を求める。 G. Jiangらの研究では、ARX(AutoRegressive models with eXogenous inputs)モデル により、相関関係の抽出を試みているが、我々は、メトリックの相対比を求めるには、 ARXモデルでは、回帰式が複雑であったことから、単回帰を用いた。 単回帰の結果、一定値以上の相関係数を持つメトリックの組が見つかれば、 それらのメトリック間に相関関係があるとみなす。 そして、これの相対比と、管理者により与えられた各メトリックの上限値から、 各層間の処理性能比を満たす台数構成のシステムを導出する。さらに、導出された 各システム構成の処理可能量をボトルネックとなるメトリックから推定することで、 システム構成遷移のコンディションを導出する。 他の同様の研究としては、B. Urgaonkarらによる待ち行列モデルを利用した研究 (Dynamic Provisioning of Multi-tier Internet Applications: ICAC 2005)がある。 上記手法を、Web/AP層とDB層の2層で構成されるオンラインショッピングサービスを 対象に評価を進めている。 各層1台ずつの最小のシステム構成にワークロードを与え、ARXモデルと同等数 の相関関係の抽出することができた。そして、ワークロードから各層のサーバの システムのメトリックにわたる相関関係のネットワークが構築できることを確認し、 この相関関係のネットワークからメトリック間の相対比を求めることができた。 今回の評価環境では、ソフトウエアの構成上DB層のサーバ台数を増やすことが できなかったため、Web/AP層がどれくらいまでサーバ台数を追加することが可能 であるか、そして、導出されたシステム構成が、どれくらい見積どおりの性能が 出ているかを本稿までに追加評価する。

7H-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名XML文書に対する構造を指定した全文検索方式の提案
著者兵藤 正樹, *榎本 俊文, 江田 毅晴, 山室 雅司 (NTTサイバースペース研究所 OSSコンピューティングプロジェクト)
Pagepp. 1538 - 1544
KeywordXML, 全文検索, 部分文書
Abstract近年,XMLは様々なアプリケーションで用いられるようになってきている.XMLは,タグを字の文に埋め込むことで文書やデータの意味や構造を記述することが出来るため,計算機で用いられる様々なデータがXMLで記述されている.このような背景から,XMLで記述され,蓄積されたデータを効率よく検索する技術の研究は急務といえる.現在,XMLデータの検索には,XPathやXQueryなどの構造を指定可能な問合せ言語が広く用いられており,今日まで盛んに研究が行われている. XMLデータには文書指向(document-centric)のものと,データ指向(data-centric)のものがある.文書指向のXMLデータは,データ指向のXMLデータに比べ,記述内容が文章的で各ノードに多くのテキストを含む傾向にある.ここでは文書指向のXMLデータをXML文書と呼ぶ.そのため, XML文書に対して検索を行う場合,全文検索の手法を適用することが有効であると考えられる.これまでに提案されている手法は、基本的にXML文書のテキストノードを全て対象にし,全文検索を行うというものだった. しかし,文書指向といえどもXMLは構造化データであり,構造を指定し,検索する対象の文書の範囲を限定して全文検索を行う手法が今後必要になるのではないかと考えられる.例えば,本のデータを構造化し,章ごと,節ごとにテキストを分類する.ユーザが,ある検索単語で文書の検索をする時,検索単語が含まれる本一冊分のデータを結果として返される場合,返されたXMLデータの中からさらに必要な部分を探索せねばならず,ユーザにとって利便性が低いことが考えられる.しかし,もしユーザがある検索単語を含む本の一節を検索できるとしたらユーザは本一冊分という大きな一つのXML文書から,必要とする部分だけを取り出すことが出来る. そうした上で,様々な構造を指定した問合せを可能にすることで,検索対象とするテキストの範囲を柔軟に決定したい.上記の例では,検索単語を含む文書をより局所的に検索する場合には節単位で,ある程度広く探索する場合には章単位で,といった検索が考えられる.この場合,節は章に含まれるため,章単位で構造を指定した場合,章ノード以下の節のテキストノードも全て検索される.この様な,構造を指定することによって限定される文書をここでは部分文書と呼ぶ. 上記のような検索を行う場合,問合せ(クエリ)に依存して検索する部分文書が決定されてしまうため,検索されうる部分文書全てに対してテキストインデックスを作成することが考えられる。ただしその場合,部分文書のバリエーションおよび重複するテキストノードにより,非常に膨大なテキストインデックス群の作成を必要とし,巨大なディスク容量を必要としてしまう. 本論文では,XMLデータに対し効率よく構造検索を実現する手法であるストロングデータガイドおよび範囲ラベルを対象にした全文検索方式を提案し, XML文書に対し,構造を指定した全文検索を効率よく行う手法を提案する.本方式では,ストロングデータガイドや範囲ラベルにパス構造やノード間の先祖子孫関係情報のほかに,全文検索インデックスと共通のIDを保持することで,これらの手法を組み合わせた時に効率よく検索を実行することが出来る.本方式を用いることで巨大なテキストインデックスを作成することなく構造を指定した全文検索を行うことが出来る.