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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 8C  ネットワークプロトコル(QAI)
日時: 2007年7月6日(金) 10:50 - 12:30
部屋: 砂子〜磯笛
座長: 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学)

8C-1 (時間: 10:50 - 11:15)
題名ストリーミングサービスにおけるSLA利益最大化方式の検討
著者*長野 純一 (創価大学大学院工学研究科), 深瀬 伸城 (創価大学工学部), 阿部 伸俊, 勅使河原 可海 (創価大学大学院工学研究科)
Pagepp. 1596 - 1601
Keywordストリーミング, SLA, 利益, レート制御, 受付制御
Abstract1.研究の背景と目的  近年,インターネットの普及と共にストリーミングサービスの需要は高くなり,様々な場面で利用されている.それに伴い,サービスへのユーザの要求は多様化すると予想される.例えば,高額であっても高品質な映像を望む場合や,品質が多少悪くても低価格な映像を要求する場合が考えられる.そのため,サービス提供者はユーザの要求に応じたサービスを提供することが望ましい.  一般的に,サービス提供者とユーザ間で品質に関する取決めをSLA (Service Level Agreement)と呼ぶ.SLAでは,ユーザは要求する品質を選択し,それに応じた料金(保証額)を支払う.一方,サービス提供者はその品質を保証する.保証出来なかった場合には,ユーザに賠償を支払う.SLAの導入により,ユーザは品質を,サービス提供者は対価を得ることができる.しかし,SLAの運用・管理が適切でないと,品質が保証できない場合や,利益が得られない場合がある.サービス提供者は,SLAを導入する際,設備投資などにより大きな負担を強いられるため,運用・管理の誤りによってSLAによる利益が得られないと問題である.そこで本研究では,ストリーミングサービスを対象とし,サービス提供者がSLAを導入した場合におけるSLAの運用・管理方式について利益最大化の手法を検討する. 2.想定環境  想定する環境として,サービス提供者はストリーミング配信サービスと共にネットワーク接続サービスを提供しているものとし,SLAはサービス提供者とストリーミングを閲覧するユーザの間で結ばれているものとする.ストリーミングの代表的なサービス形態として,オンデマンドとリアルタイムがある.本研究では,まずリアルタイムストリーミングに着目し,フロー毎にユーザとSLAを結ぶ.  リアルタイムストリーミングにおけるSLAで保証すべき品質として,再生が始まるまでの待ち時間,画像の乱れや停止,画質(再生レート)が挙げられる.再生までの待ち時間は,通信開始時の受信側でのバッファ量を少なくすることで保証できる.一方,画像の乱れや停止は,ネットワークの輻輳を原因とするバッファ枯渇によって発生する.これに対し,送信側で少ないバッファ量でもデータを再生できるように,再生レートを低下させ,それに応じて送信レートも下げることにより対応できる.そのため本研究では,保証品質を画質,つまり再生レートとする.また,再生レートを基準としたクラスを用意し,ユーザはそのクラスを選択できるものとする. 3.SLA運用管理方式  本研究では,サービス提供者の利益を最大化する運用・管理方式の実現を目的としている.特に,SLA利益を最大とするような受付制御とレート制御について取り組む.例えば,ユーザを制限なく受け付けると,ネットワークの使用帯域の増加により,ユーザへの提供再生レートが低くなり,賠償が発生する.逆にユーザの受け付けを極端に制限すると,賠償は発生しないがサービス提供による対価を得ることができない.また,利用可能なリソース内で,できる限り賠償が発生しないようレート制御を行う必要がある.従って,受付ユーザ数と割り当てレートを適切に決定することが研究の課題となる. 4.SLA利益最大化手法の検討  SLAによる利益を大きくするための受付制御手法として,要求ユーザを受け付けた場合に発生する保証額と賠償額を比較し,受付を判断する受付制御を考案した.  また,レート制御としては,ストリーミングサーバの限界帯域を超えるユーザ要求が新たに受け付けられた場合に,サービス中のフローに割り当てられた帯域を減少させ,新たなユーザに割り当てるという制御とした.今回,帯域を減少させるフローの選択基準として公平レート制御,ランダムレート制御,時間判断レート制御を考案した.公平レート制御は全フローの帯域を減少させる手法である.次のランダムレート制御は帯域を減少させるフローを出来るだけ少なくするが,減少させるフローはランダムに選ぶ手法である.最後の時間判断レート制御はランダムレート制御と同じ考え方で,減少させるフローをストリーミング終了までの時間を考慮し,選択する手法である. 5.シミュレーションによる評価  考案手法の有効性を検証するためにOPNETを用いてシミュレーションを行った.シミュレーションでは,それぞれのレート制御方式において,ユーザを制限なく受け付ける場合と極端に拒否する場合,また提案した受付制御を適用した場合での利益を比較した.なお,シミュレーションにおいて,到着間隔とサービス時間はポアソン分布とした.  シミュレーション結果では,極端に受け付けを拒否する受付制御についての全レート制御方式を適応した場合と,全ての受付制御について,公平レート制御方式を適応した場合において,ユーザ拒否が多くなり,利益が低くなるという結果となった.  また,ランダムレート制御と時間判断レート制御方式を適用しての利益は,公平レート制御方式での利益の2倍の値を示した.さらに,それぞれのレート制御方式に,提案した受付制御方式を適用したところ,制限なくユーザを受け付けする場合より,高い利益を得ることができた.

8C-2 (時間: 11:15 - 11:40)
題名分散協調基盤におけるQoSを考慮した動的ストリーミングサービス制御
著者*森村 吉貴 (京都大学大学院情報学研究科), 山 達也 (独立行政法人情報通信研究機構), 美濃 導彦 (京都大学学術情報メディアセンター)
Pagepp. 1602 - 1606
KeywordQoS制御, 分散処理, 情報家電, 家庭内ネットワーク, ストリーミング
Abstract本報告では,家庭内ネットワークの分散協調型の基盤ミドルウェアにメディア種別に応じたトランスポートプロトコルの自動選択機能やEnd-to-End のフィードバック型のQoS 制御機能を組み込む ことによって,動的なストリーミングサービス制御を実現する提案を行い,またその実装について報告する.提案手法では,サービスで相互接続したいアプライアンスを指定するだけで,ミドルウェアがアプライアンスの入出力可能なメディア種別に応じた接続を行い,それがストリーミング可能な映像・音声データであれば,自動的にストリーミングに適したトランスポートプロトコルを選択する.また,End-to-End の動的なフィードバック型QoS 制御を実現するために,ミドルウェアにRTP 及びRTCP の通信機能を組み込みAPI 関数から容易に利用可能とする.提案手法の有効性を確認するため,分散協調基盤ミドルウェアである「ゆかりカーネル」上でフィードバック型QoS 制御を行うアプライアンスを実装し,ミドルウェアの支援によってネットワーク状況に追随するQoS 制御が行えることを確認した.

8C-3 (時間: 11:40 - 12:05)
題名リッチメディアコミュニケーションにおけるリソースの傾斜配分による品質制御方式の提案
著者*金友 大, 中島 一彰, 大芝 崇, 田淵 仁浩 (日本電気 サービスプラットフォーム研究所)
Pagepp. 1607 - 1613
KeywordQoE, リッチメディアコミュニケーション, 品質制御, リアルタイムコミュニケーション
Abstract 本稿では、複数のアプリケーションを同時に利用するリッチメディアコミュニケーションにおいて、ユーザの要求に基づいて限られたリソースを傾斜配分することでアプリケーションの品質を動的に制御し、ユーザの感じる品質を高めることができる品質制御方式を提案する。企業内におけるイントラネットと汎用PCを利用してのリッチメディアコミュニケーションでは、性能のばらつきや同時に利用されるアプリケーションの負荷により、コミュニケーションのためのアプリケーションが端末やネットワークのリソースを十分に利用することは困難である。提案方式では、ユーザの品質向上要求に対し、ユーザにとって重要性の低いアプリケーションの品質を抑制することで、品質向上にその時点での余剰リソース量より多くのリソースを利用可能とする。また実際の品質向上時には、ユーザがその時点で主に利用するアプリケーションを対象に、必要とするリソース量に対し効率よく品質が向上できるアプリケーションから順にリソースを割当てる。これによりリソースの有効活用とユーザ要望を満足させることによる体感品質の向上を実現する。

8C-4 (時間: 12:05 - 12:30)
題名複数の無線基地局を用いたQoS制御システムにおける適応的接続制御アルゴリズム
著者*水野 邦彦, 伊藤 淳 (立命館大学大学院理工学研究科), 毛利 公一 (立命館大学情報理工学部)
Pagepp. 1614 - 1621
Keyword無線LAN, QoS制御, 適応通信
Abstract無線技術の発展は,2.4GHz帯や5GHz帯の周波数を用いた高速通信を実現し,IEEE802.11a/g規格の無線LANでは54Mbpsでの通信が可能となっている.また,無線LANが利用されている場所も増え,適用場面も,メール送受信やWeb の閲覧だけでなく,動画像のストリーミング,VoIPなどの音声通信,ユビキタスコンピューティングなど,大きな広がりを見せようとしている.しかし,このようなコンテンツの増加と大容量化,QoS(Quality of Service) 制御の必要性の視点から解決しなければならない課題は多い.例えば,1台の無線基地局ではクライアントの台数が増えると,全体としてのスループットが低下してしまう.これを解決するために複数の基地局を配置する場合があるが,端末が特定の基地局に集中し,得られる効果が少なくなる場合がある.以上より,本論文では,複数の基地局を配置することによって全体としてのスループットの向上を狙い,さらに,QoSを考慮しながら,基地局と端末の接続を動的に制御するシステムを提案している.以下では,特に,基地局と端末の組合せを決定するためのアルゴリズムについて述べる. 本システムでは,上述のとおり,教室など特定のエリア内に複数の基地局を配置する環境を想定している.ただし,動的な基地局と端末の制御を実現するために,各基地局の通信可能な範囲がそれぞれ重なるように配置したり,一つの基地局に複数の無線NICを装着したりする.このような環境では,位置によって接続可能な基地局群やそれらの電波状況は異なる.本システムは,QoSを保証するために,各端末のQoS要求や各端末が通信可能な基地局群と電波状況などを管理し,それらの情報に基づいて,基地局と端末の適切な組み合わせを求める.さらに,その結果に基づいて接続を切り替える.具体的な動作は次のとおりである. (1) エリア内の全基地局から代表基地局を1台選出する. (2) 代表基地局で,各基地局におけるトラフィック状況・帯域予約状況,各 端末の接続状況・接続可能な基地局群とその電波状況・要求帯域を収集する. (3) 代表基地局で,適応的接続制御アルゴリズムに従って端末の接続先を決 定する.当該アルゴリズムでは,プロセスの要求帯域をどれだけ満たし ているかを示すQoS満足度を指標とする. (4) 各基地局と端末に切替え指示を行う. 以上によって,システム全体のQoS満足度を最大化させる. 適応的接続制御アルゴリズムでは,収集した情報から,各基地局と端末の組合せ毎に,要求帯域を満たすために必要な割付け時間割合を動的に求める.この割付け時間割合を使用して,端末の接続先を決定する.これにより,より多くの要求帯域を満たし,QoS満足度を最大化させる.現在,(A)〜(C)に示す3つの適応的接続制御アルゴリズムを検討している.ただし,各アルゴリズム共通の方針は次のとおりである. ・割付け時間割合の合計値がより高い基地局から低い基地局へ切替える. ・切替え元基地局における割付け時間割合の合計値と,切替え先基地局の合 計値が,切替え前後で増加する場合は移動しない. (A) 積極的な割付時間割合の分散を目的としたアルゴリズム (1) 各端末が最良の電波状況となる基地局に接続された状態を初期状態とする. (2) 切替えによる切替え先基地局で割付け時間割合の増加が,最小となる基 地局を切替え候補とする. (3) 切替え可能な端末が無くなるまで(2)を繰り返す. (B) 接続先の切替え回数を少なくすることを目的としたアルゴリズム (1) 割付け時間割合がより大きい端末について,割付け時間割合が最小とな る基地局を切替え候補とする. (2) 各基地局の割付け時間割合の合計が一定以下となるまで(1)を繰り返す. (C) 複数のパラメータを用い,割付け時間割合の分散と切替え回数の均衡を目 的としたアルゴリズム (1) 各端末から接続先切替えの積極性をパラメータとして収集する. (2) 切替え元における割付時間割合に対する切替え先における割付時間割合 の倍率に,切替え元における割付時間割合の大きさと積極性で補正をか けた値が,最小となる基地局を切替え候補とする. (3) 補正後の値が一定以下の間(2)を繰り返す. 以上3つのアルゴリズムに関して,実測とシミュレーションの両面から評価を行った.各アルゴリズムの傾向は,次のとおりである. (A) 利点: 新規に端末が帯域要求をした際に,接続されている基地局で要求 帯域を満たせる確率が最も高い. 欠点: 接続先を切り替える回数が最も多く,要求帯域の小さい端末ほど 移動頻度が高い. (B) 利点: 接続先を切り替える回数が最も少ない. 欠点: 新規に端末が帯域要求をした際に,接続されている基地局で要求 帯域を満たせる確率が最も低い. (C) 利点: 平均して切替え回数が少なく,新規に端末が帯域要求をした際に, 接続されている基地局で要求帯域を満たせる確率も高い. 欠点: 各パラメータの考慮度合い,積極性の値によっては,切替え回数 の多い状況,要求帯域が満たせない状況が存在する. 本論分では, 3つのアルゴリズムについての考察を比較し, アルゴリズム(C)における各パラメータのQoS満足度への影響について述べている.