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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 2H  ユビキタスアクセス制御(UBI)
日時: 2008年7月9日(水) 15:30 - 17:10
部屋: ビューホール(1)
座長: 寺田 努 (神戸大学)

2H-1 (時間: 15:30 - 15:55)
題名既存の組織構造を表すDNSを利用した認証と権限の分散管理
著者*榎堀 優 (立命館大学大学院理工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学情報理工学部)
Pagepp. 430 - 434
Keyword認証技術, 分散管理, スマート環境, ユビキタスコンピューティング
Abstract部屋などに設置したセンサなどの機器の連携により利用者をサポートするスマート環境を構築が試みられ,それらの相互連携により,よりよいサービスの提供が期待されている.しかしながら,スマート環境構築用ミドルウェアもその上で提供サービスも様々であり,かつ将来的には多数かつ勝手に構築されるであろうスマート環境間の連携を想定した認証・権限管理システムの研究は十分とは言えない.本稿ではスマート環境間の連携を想定した認証・権限管理システムの要件を検討として,1) 各自のスマート環境に存在する認証情報が他のスマート環境で認証情報として利用可能,2) 1)の認証情報の相互利用が粗な結合で行われる,3) 被認証者に対する権限は,認証を行った各スマート環境で個別に付与する,4) 被認証者の所属情報が判別可能,5) 被認証者の現在の場所(e.g. 所属ネットワーク)に基づいた認証が可能,の5点を挙げそれらを満たすDNSをベースとした認証機構の提案を行った.今後は,スマート環境の連携に提案機構を適用して運用しての問題の洗い出しや,シミュレーションなどによる負荷計測などを行っていく.

2H-2 (時間: 15:55 - 16:20)
題名イベントに基づくアクセス制御モデルのECAを用いた実装モデルへの変換
著者石川 冬樹 (国立情報学研究所), *清 雄一 (東京大学大学院情報理工学系研究科), 吉岡 信和, 本位田 真一 (国立情報学研究所)
Pagepp. 435 - 438
Keywordアクセス制御, ユビキタスコンピューティング, ECA
Abstract近年,ユビキタスコンピューティングにおける状況に基づいたアクセス可否判断や,プライバシ情報を扱う際の 振る舞い義務,アクセス許可後の監視等,イベントや状況に基づき権限判断や振る舞い起動を行う様々なアクセ ス制御モデルが提案されている.本論文においては,そのようなアクセス制御モデルに対し,ECA( Event-Condition-Action)ルールを用いた実装モデルへの変換を行うことにより汎用性や実行効率を高めるアク セス制御実装方式へのアプローチについて論じる.

2H-3 (時間: 16:20 - 16:45)
題名センサネットワークへの透過的なアクセス機構の設計と実装
著者*佐藤 龍 (慶應義塾大学 環境情報学部), 鈴木 茂哉 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科助教), 中村 修, 村井 純 (慶應義塾大学 環境情報学部)
Pagepp. 439 - 450
Keywordプロキシ, 実空間情報
Abstractセンサネットワークは,センサを用いて計測した実空間のある現象や状態のデータを伝播し,利用者へ提供するための通信ネットワークである.近年,センサ製造技術の向上により一般生活でのセンサネットワークの活用が可能となりつつある.そのため,センサデータを利用するシステムの開発者は,日常生活での多様な要求を満たすアプリケーションの開発が望まれている.しかし,センサネットワークを通じてセンサデータを利用するには,センサの仕様に応じてデータをリクエストした上で,多様なデータフォーマットを解釈しなければならない.この問題は多種類のセンサデータを統一的に取得できる機構がないことに起因する. アプリケーション開発者は,センサデータ取得処理を種類の異なるセンサネットワークごとに実装する必要があるのが現状である.その負担は,センサデータを統一的に取得できないことから,利用するセンサネットワークの数に応じて増加する.さらに,取得したセンサデータをセンサの仕様に応じて解釈する必要があるため,取得したセンサデータを統合させるのが困難である.結果,システムで利用するセンサの構成を変更するにはアプリケーションの多くの処理を再実装する必要があり,非効率である. 本研究では,アプリケーション開発者の実装負担を軽減させるために,次の二点を達成すべき課題とする.一点目はアプリケーションによるセンサデータアクセス方式の統一である.二点目は利用するセンサネットワーク構成の柔軟性の実現である. この二点の課題を実現するため,アプリケーションとセンサネットワークの通信モデルとしてプロキシモデルを提案する.アプリケーションからのデータ指定方式としてデータセントリック方式を利用する. プロキシモデルとは,アプリケーションとセンサネットワークが行う通信をプロキシが中継するとともに,データ変換をし,フォーマットの統一化を計るモデルである.異なるプロトコルとデータフォーマットを利用するノード間の通信を可能にできる利点がある.アプリケーションがセンサデータを解釈すると,利用するセンサネットワークの構成変更により,新たな構成に対応する処理を実装する必要がなる.この問題はアプリケーションが解釈すべきセンサデータフォーマットを統一することで解決できる.プロキシモデルを利用する場合,データ通信を中継する.そのため,プロキシにおいてセンサデータフォーマットを変換すると,アプリケーションは統一したセンサデータフォーマットでセンサデータを取得できる. データセントリック方式は,データ種類の名称やセンサデータを生成した時刻などの,データに関連付けられた付加情報を用いて,データを指定し要求する方式である.センサデータ要求において,センサノードを指定するノードセントリック方式では,あるアプリケーションが他のアプリケーションの要求を知るのは難しい.また,データフォーマット解釈の問題と同様に,利用するセンサネットワークの構成の変更により新たな実装が必要となる.データセントリック方式は,センサネットワーク内のセンサノード構成にほぼ依存せず,データを要求できる利点がある.さらに,プロキシノードはアプリケーションが要求するデータを把握できるため,同一センサネットワークを利用する要求を集約するなど最適化できる.そのため,これらの問題はデータセントリック方式による要求で解決できる. 本研究では以上のアプローチを実現するプロキシノードを設計し実装した.プロキシノードは,アプリケーションとセンサネットワークの通信のために,二方向のインタフェースを持つよう設計した.さらに,新規センサネットワーク追加時の対応処理を容易にするため,プラグインとして実装できるように設計した.プロキシノードがアプリケーション実装負担を軽減できていることを確認するため,環境モニタリング目的のサンプルアプリケーションを実装した.サンプルアプリケーションはセンサデータの照度と温度のデータから,室内の状態を判断して結果を表示する.プロクシノードは二種類のセンサネットワークからセンサデータを取得できる.一つ目のセンサネットワークはXBridgeとuPartで構成される.二つ目はMICAzで構成される. 本実装をセンサシステムに必要と考えられる規模性,拡張性において関連研究と比較評価を行った.その結果,センサネットワークに個別アプリケーションからでは要求数の制限がある場合において,プロキシノードで要求を集約して,接続アプリケーション数を増加できることを示した.本実装を使用することで,アプリケーションを少ないソースコード量で記述できることをサンプルアプリケーションのソースコード記述量により確認した.

2H-4 (時間: 16:45 - 17:10)
題名パイプライニングを用いたWSNにおけるソフトウェア配送の効率化
著者*橋詰 葵 (静岡大学情報学部), 宮丸 卓也 (三菱電機株式会社), 峰野 博史 (静岡大学情報学部), 寺島 美昭, 徳永 雄一 (三菱電機株式会社), 水野 忠則 (静岡大学情報学部)
Pagepp. 451 - 457
Keywordワイヤレスセンサネットワーク, リプログラミング, パイプライニング, アドホックネットワーク
Abstract近年,MEMS 技術や低消費電力無線通信の発展によりワイヤレスセンサネットワーク (WSN) を実現する環境が整いつつある.WSN とは,通信機能を付加した小型センサ(センサノード)を複数配置し,自律的にネットワークを構成して,周囲のあらゆる環境情報を収集するシステムのことである.こうして収集した情報を利用して,様々なサービスやアプリケーションが開発されている.この例として,環境モニタリングやセキュリティ監視,災害発生時の被災者の位置情報取得などが挙げられる. WSN において,センサノード上のソフトウェアを更新するリプログラミングは重要なサービスの 1 つである.WSN が比較的新しい技術で構成されるため,多くのアプリケーションはアドホックルーティング,新たなデータ処理手法,位置推定など様々な発展途上の技術を含んでいる.そのため,アプリケーションを長期間運用することでこれらのソフトウェアの変更や拡張が必要となる可能性が高い.したがって,一度に多くのセンサノードを簡単に更新するリプログラミング手法が必要となる.古典的なリプログラミング手法として,ソフトウェア開発用のコンピュータとセンサノードを直接ケーブルで接続し,ケーブルを介してソフトウェアをノードに書き込む手法がある.しかし,ノードを 1 台ずつケーブルで接続してソフトウェアを更新するのは,無数のノードで構成されるような大規模な WSN では非効率的である.そこで近年注目されているのが,無線マルチホップ通信を用いてソフトウェアを多くのセンサノードに配送するワイヤレスリプログラミングという技術である。ワイヤレスリプログラミングでは,信頼性の向上,電力効率性の向上,そしてソフトウェア配送時間の短縮という 3 つの設計目標が重要視されている. また,WSN における一般的なプロトコルでは,1 つ 1 つの小さなセンシングデータを末端センサノードから基地局へ集約することを目標としているのに対して,リプログラミングのソフトウェア配送では,ソフトウェアというサイズの大きなデータを基地局から末端センサノードまで拡散させることが目標である.そのため大容量のデータを高速にネットワーク全体へ拡散させる技術としてパイプライニングが利用されている.パイプライニングとは,ソフトウェアデータを複数のセグメントと呼ばれる単位に分割し,並列にセグメントを配送することで高速なソフトウェア配送を実現する技術である.パイプライニングでは,セグメント分割数を増やせば増やすほど配送の並列度が増し,高速なソフトウェア配送を実現できる.しかし同時にコントロールパケットが急増し,電力消費の増加や信頼性の低下を引き起こすという特徴がある. 現状のパイプライニングの問題に対処するため,本研究室ではローカルパイプライニングと呼ばれるソフトウェア配送手法を提案している.ローカルパイプライニングでは,ネットワーク上のノードを複数のサブグループに分割し,グループごとにセグメント分割数を割り当てる.そうすることでコントロールパケット数や消費電力をグループの状態に応じて柔軟に変更し,配送パフォーマンスを維持したまま現実的な配送を可能とする. 本論文ではローカルパイプライニングについてシミュレーション評価と検討を行う.シミュレーションにより,グループなどネットワークの局所で配送性能を調整できることを確認し,どのようなグループ設定が適しているのかを調査する.