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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 3F  P2P(2)(DPS)
日時: 2008年7月9日(水) 17:20 - 19:30
部屋: コスモ(2)
座長: 佐藤 健哉 (同志社大)

3F-1 (時間: 17:20 - 17:45)
題名PSP2P:P2Pネットワークを用いた高画素写真の共有
著者*洞井 晋一, 松浦 知史, 藤川 和利, 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科)
Pagepp. 658 - 667
Keywordオーバーレイネットワーク, ピア・ツー・ピア
Abstractデジタルカメラの低価格化やパソコンの普及に伴い、 高画素なデジタルカメラが一般に広く普及してきている。 デジタルカメラが従来のフィルムカメラと違うところは、膨大な量の写真を撮影できる点にある。 フィルムカメラにはフィルムの枚数という制限があったが、 デジタルカメラが利用しているカードメディア等は大容量化を続け、 多くの写真を撮影しても容量が不足するということは少なくなってきている。 また、フィルムカメラの場合は現像しなければ写真を見ることができなかったが、 デジタルカメラで撮影した写真はパソコン等での閲覧を行うことにより、現像する必要がなくなった。 そのため、従来は厳選した場面のみで写真を撮影し、その写真を現像し、保存していたのに対し、 現在ではとにかく多くの写真を撮影し、パソコン等に取り込んだ後で気に入った写真を探すという利用方法に変わってきている。 このような膨大な量の写真データをインターネットを用いて共有するさまざまなサービスが考えられている。 著名なものとしては「Flickr」というサービスがある。 写真を撮影したユーザはFlickrのサーバに画像をアップロードし、 一般のユーザはそのサーバ上の写真データを閲覧することができる。 また、日本においても「はてなフォトライフ」や「PHOTOHITO」といったサービスを用いることで写真の共有が行われている。 しかし、こうしたサービスでは膨大な量の写真を高画質のまま共有することが難しい。 これにはサーバ側の負荷や、ユーザがアップロード時に要する時間など、さまざまな要因が考えられる。 一方で、様々なユーザの需要に応えるためには撮影された膨大な写真を共有することが必要であり、 また高画質なままの写真はトリミングを行う時や印刷時に需要がある。 本研究ではこの「高画質なままの膨大な量の写真」を共有するために、独自のP2Pネットワーク「PSP2P」を提案し、実装した。 従来のシステムの場合、大量の写真を共有しようとしたとき、写真のアップロードに長い時間がかかってしまう。 また、サーバの負荷も大きくなることから多くのサービスでは一度にアップロードできる写真の数を制限している。 そこで、PSP2Pでは写真のサムネイル画像のみを共有することで、 写真の枚数が多くとも高速に共有することを可能とした。 サムネイルのみを共有の対象とした理由は、負荷の問題のほかにユーザの写真探索の手順を考慮したためである。 ユーザが目的の写真を探すとき、写真の一枚一枚を吟味するとは考えにくい。 ユーザはまず写真のサムネイル一覧を閲覧し、その中から目的となる写真を探索する。 その後、目的の写真について高画素の写真を取得することが予想できる。 そのため、共有される画像はサムネイル画像のみで十分であると考え、 元の高画素な写真は共有元のユーザが保持する。 写真を得ようとするユーザはまずサムネイル画像を得るための任意のクエリーを送信し、 サムネイル画像の一覧を得る。 ユーザがそのサムネイルの一覧の中から興味のある写真を見つけた場合、 高画素画像を共有元のピアから直接取得することができる。 このように用途によってサムネイル画像と高画素画像を使い分けることで、 高速な写真のアップロードや、効率的な写真の探索、また高画素な写真の取得を可能とした。 PSP2Pの実装を行う上では特にサムネイル画像の共有に着目し、 筆者らが提案している時間を考慮したP2Pネットワーク上での共有を行った。 そのため、PSP2Pでは撮影時間の範囲を指定したクエリーを効率よく処理することができる。 また、こうした撮影時間を指定したサムネイル画像の取得を行うことで、 同じ時間に撮影された全く趣旨の異なる写真などをユーザに提供することを可能とした。 これは、目的となる写真とは別に「一方そのころ」といった新しい写真提供の方法を実現している。 また、PSP2Pを用いた場合、他のサーバ・クライアント方式やハイブリッドなP2P方式と比べてどのような利点があるか、また今後解決するべき問題点などについて考察を行う。

3F-2 (時間: 17:45 - 18:10)
題名P2Pネットワークにおけるユーザの嗜好特性を考慮した検索方法に関する一考察
著者*宮崎 知美, 渡辺 俊貴, 神崎 映光, 原 隆浩, 西尾 章治郎 (大阪大学大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻)
Pagepp. 668 - 675
KeywordP2P, 検索, キーワード, 嗜好特性
AbstractP2Pネットワークにおいてデータを検索する場合, ユーザの指定した任意数のキーワードを用い, これらと一致するデータを獲得する方法が 一般的である.しかし,この方法では, データの内容を考慮せずに検索を行うため, ユーザが必要としないデータも同時に獲得してしまう可能性が高い. 筆者らはこれまでに,P2Pネットワークにおいて, ユーザの嗜好を考慮した検索方法を提案した. この方法では,各ピアが所持するデータの特徴を表すキーワードを基に ユーザの嗜好を学習,推測し,これを用いて 返送するデータのフィルタリングを行う. しかし,この方法は,ピアのネットワークへの参加や脱退の発生しない, 静的な環境を想定している.そのため,動的な環境では, ユーザの嗜好の学習速度や 推測した嗜好の信頼性が低下し, フィルタリングの効率が低下してしまう. そこで本稿では,これまでに提案した手法を拡張し, 動的な環境に適した検索方法を提案する. 提案方法では,ピアが嗜好を推測する際に, 他のピアから嗜好情報を受け取ることで,ユーザの嗜好の学習速度や精度を 向上させ,動的な環境においてもフィルタリングの効率を維持する.

3F-3 (時間: 18:10 - 18:35)
題名IPv6の通信性能を考慮したネットワークプラットフォームの提案
著者*岡村 拓, 井手口 哲夫, 田 学軍, 奥田 隆史 (愛知県立大学情報科学研究科)
Pagepp. 676 - 681
KeywordIPv4, IPv6, LAN, コンピュータネットワーク, 実測
Abstract近年、インターネットの急速な普及によりインターネットへの参加端末が多様化、増大化してきた。そのため各端末に割り当てるグローバルIPアドレスの不足が懸念されている。そこで現在主に使用されているIPv4(Internet Protocol version 4)から次世代インターネットプロトコルであるIPv6(Internet Protocol version 6)への移行が進められている。このようなIPv6への移行に伴い、著者等が所属する研究室ではネットワーク技術の研究のためにIPv6通信の実験プラットフォームの構築が必要とされている。また、研究室ネットワークもIPv6通信への対応が必要となっていることから、最適な研究室ネットワークを構築する上でIPv6の通信性能に関しての情報が必要である。しかし、実際にはIPv6の通信性能に関するデータは公開されていないというのが現状である。本稿では、IPv6を使用することでどのようなメリット・デメリットが得られるかを端末間ユニキャスト通信で実測し、IPv4と比較することにより評価する。さらに、研究室ネットワークとして最適なネットワークプラットフォームの構築条件を示す。

3F-4 (時間: 18:35 - 19:00)
題名P2Pストリーミング放送における複数端末へのデータ配信手法
著者*後藤 佑介 (京都大学大学院情報学研究科), 義久 智樹 (大阪大学サイバーメディアセンター), 金澤 正憲 (京都大学学術情報メディアセンター)
Pagepp. 682 - 689
Keyword放送型配信, ストリーミング, 待ち時間, P2P
Abstract 近年の映像視聴形態の多様化にともない,P2P (Peer-to-Peer) 技術を用いたストリーミング放送に注目が高まっている.P2Pストリーミング放送では,映像を要求する端末(以下,要求ピア)は,映像の再生に必要なデータを他の複数の端末(以下,供給ピア)から受信する.ピアと呼ばれるクライアントは,データを受信するだけでなく,他のピアからデータを要求されたときはサーバとして動作する.要求ピアは,セグメントと呼ばれるデータを等分割した部分を供給ピアから受信し,データの先頭部分のセグメントの受信が完了すると,再生を開始できる.  従来のP2Pストリーミング放送では,ピアの負荷を分散するため,要求ピアがデータの受信に使用する供給ピアをランダムに選択していた.しかし,選択した供給ピアが使用できる帯域幅が小さい場合,受信開始から再生開始までの時間(以下,待ち時間)が大きくなる.そこで,待ち時間をできるだけ短縮するため,受信先のピアを効率的に選択する必要がある.  筆者らはこれまで,P2Pストリーミング放送において,データ受信時の待ち時間を短縮するピア選択手法を提案してきた. 提案手法では,要求ピアが複数の供給ピアにセグメントの最初の部分から順番にデータを要求するとき,各セグメントの配信終了時刻が一番早い供給ピアに受信を要求することで待ち時間を短縮する.しかし,この手法では,1つの供給ピアが複数の要求ピアに対して同時にデータを配信することを想定していない.供給ピアが使用できる帯域幅は,最初にデータを要求したピアにすべて使用するため,新たな要求ピアがデータを要求しても,配信に使用する帯域幅を確保できず,最初にデータを要求したピアが使用している帯域幅が解放されるまで待つ必要がある.  そこで本研究では,P2Pストリーミング放送において,同時に複数の要求ピアにデータを配信する場合のピア選択手法を提案する.提案手法では,各供給ピアが使用できる帯域幅を考慮して供給ピアを選択することで,要求ピアがデータを受信するときに発生する待ち時間を短縮する.

3F-5 (時間: 19:00 - 19:25)
題名異種端末環境に適応したオーバレイマルチキャストによるビデオストリーミング方式の検討
著者*田中 貴章, 相田 仁 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
Pagepp. 690 - 697
Keywordオーバレイマルチキャスト, P2P, ライブストリーミング, トランスコーディング
Abstract近年、 P2P技術を用いたオーバレイネットワーク上で実現するライブストリーミングサービスが登場し注目を集めている。しかし、そのようなサービスのほとんどは提供する動画品質が固定されてしまっており、あらゆる端末で動画を視聴することは困難である。そこで、動画品質が端末の処理能力やネットワーク帯域に最適化され、それぞれの端末でライブストリーミングを快適に視聴できるようにするためのコンテンツ配信手法について提案を行う。本研究では、端末の環境に適応した品質のデータを流通させるために、オーバレイネットワーク上で動画を中継する端末が受信したデータのビットレートや符号化形式を転送先に適応(トランスコーディング)させて中継する、という手法をメッシュ型トポロジに対して適用する。従来提案されていた手法であるツリー型トポロジでは、ビデオストリームを一つの端末がリアルタイムでトランスコードを行うには、特にH.264のような高忠実度符号化手法を用いた場合に、現状では処理能力の面で困難である場合が多い。そのため、配信データを分割し、それらを各端末が部分的にトランスコードを行い、さらにそれを同じ動画品質を要求する端末間で共有し合う、というメッシュ型の特徴を利用することにより、柔軟かつ効率的、そして配信元にかかる負荷を低減させるデータ配信が可能になる。この提案手法の実現のためには、同じ品質の動画を要求する端末同士の連携が効率的に行われるためのネットワークトポロジの構築が必要となる。そこで、このような端末同士の効率的な連携のために、動画品質と符号化方式との組み合わせからなるクラスタを形成する。端末はパラメータとして処理性能、上り帯域、下り帯域を持ち、それらの値から自身がどのクラスタに所属するかが決定される。そして、クラスタ間でデータがやりとりされる際にのみトランスコード処理がなされるようにする。このようなネットワークトポロジ構築の有効性をシミュレーションによって検証を行う。