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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 4D  位置情報(ITS)
日時: 2008年7月10日(木) 8:30 - 10:10
部屋: ペガサス
座長: 桐村 昌行 (三菱電機)

4D-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名位置特定のための携帯電話向け道路標識認識アルゴリズム
著者*宮川 了, 戸川 望, 柳澤 政生, 大附 辰夫 (早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻)
Pagepp. 844 - 852
Keyword歩行者ナビゲーション, 位置特定, 道路標識, 画像認識, 携帯電話
Abstract携帯電話による歩行者ナビゲーションにおける位置特定では,GPS測位,もしくはGPSと携帯電話の基地局を用いたハイブリッド測位が主流である.一方,都市部においてはマルチパスや補足衛星数の減少などの原因により大きな誤差が生じる.そこで我々は道路標識とランドマークの位置情報を利用した高精度な位置特定システムの構築を目指している.とりわけ道路標識の認識工程では,これまでに我々が提案しているシステムは,携帯電話カメラによって撮影された道路標識を含む画像をサーバに送信し,サーバによる画像処理結果を利用者に返す仕組みをとっており,サーバとの複数回の通信による時間コストが課題となっていた.本論文では道路標識の撮影から画像処理までを携帯電話内のアプリケーションとして実現し,サーバとの通信を1回のみとする新しいシステムの実現を目標とした携帯電話向け道路標識認識アルゴリズムを提案する.実地調査によって位置特定に必要とされる道路標識の認識要求を明らかにし,この認識要求と利用者が耐えうる待ち時間要求双方を満たす携帯電話向け道路標識認識アルゴリズムの実現を目指す.本手法をNTTドコモ社のiアプリとして実装し,携帯電話端末を用いて評価実験した結果,認識要求,待ち時間要求共に満足でき,目標システムに有効な手法であることを確認した.

4D-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名無線端末間の通信情報を利用した移動軌跡推定手法の実環境を想定した評価事例および実機による性能評価
著者*藤井 彩恵, 内山 彰 (大阪大学大学院情報科学研究科), 梅津 高朗, 山口 弘純 (大阪大学大学院情報科学研究科,独立行政法人科学技術振興機構(CREST)), 東野 輝夫 (大阪大学大学院情報科学研究科,独立行政法人科学技術振興機構,(CREST))
Pagepp. 853 - 861
Keyword移動軌跡, 位置推定, 遭遇情報, 無線アドホックネットワーク
Abstract我々はこれまでに,無線端末間の遭遇情報を用いた移動軌跡推定技法TRACKIEを提案している. 本稿では,実機実験により実装における課題発見を行い,その知見に基づきTRACKIEの改良を行った. 実環境における性能評価を行うために, Micaz Mote端末を所持した10人の実験参加者が屋外の領域内にてあらかじめ定められた経路を歩行した際の端末間の遭遇情報を収集し,TRACKIEにより移動経路の推定を行った. その結果,通信可能範囲の揺らぎが精度に悪影響を及ぼしていることがわかったため, 収集した遭遇情報を選別する手法を提案した.これを用いた結果,同じ環境において誤差が約30%低減されたことを確認した. また,現実に即した環境を再現したシミュレーションにより実利用環境における課題発見も行い,課題解決のためのいくつかの拡張案を提案した.シミュレーションによる評価の結果,それらの拡張が約20%の誤差低減に貢献していることがわかった.

4D-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名指向性アンテナを搭載した複数車両の協調による歩行者位置検出方式
著者*澤 悠太, 木谷 友哉 (奈良先端科学技術大学院大学), 柴田 直樹 (滋賀大学), 安本 慶一, 伊藤 実 (奈良先端科学技術大学院大学)
Pagepp. 862 - 871
KeywordITS, 危険通知, 歩行者検知, 車車間通信, 指向性アンテナ
Abstract現在、各自動車メーカーを中心として交通安全支援を目的とした歩行者・2輪 車検知システムの開発が進められている。それらのシステムでは、各車両に搭載 されているセンサを用いて自車両周辺の歩行者検知を行う方法や交差点の信号機 等にセンサを設置し、交差点領域において歩行者を検知しその結果得られた情報 を各車両に通信する方法が採用されている。しかし、前者の場合、各センサには 死角や誤差に起因する問題が発生し、後者の場合、交差点地点ごとに設置しなけ ればならずさらに導入コストの問題が発生するという問題がある。  本研究では、指向性アンテナを搭載した複数車両の協調によって安価にかつ高 精度で歩行者位置を検出可能となる手法を提案する。車車間通信を用いて車両同 士の協調を図ることにより、ある車両における車載センサの死角が存在していて も、その死角が他の車両の車載センサの範囲内にあれば、センシングの結果得ら れた情報を受け渡しすることで車載センサの死角の解消を図ることが可能となる。 誤差に関しても車両1台で検知した場合において無視できない誤差であっても複 数車両分の情報があればその誤差を低減できる可能性が高い。また、車車間通信 では車両同士で直接通信を行うため、交差点ごとにセンサを設置する必要がなく、 システム導入コストについても低減が期待できる。  提案手法では、歩行者は定期的にビーコンを発信する無線端末を保持し、車両 はビーコンを受信する指向性アンテナおよび自車両の位置を測定可能な装置(GPS など)を保持している環境を想定する。ビーコンを用いることにより歩行者は自 位置を能動的に検知する必要がなくなるため、システム導入がより容易になる。 提案手法では、各車両においてビーコン電波強度より歩行者と車両間との間の距 離を測定するとともに指向性アンテナによりビーコン電波の到来角度を測定する。 これら測定情報には誤差が含まれる。そこで、測定誤差が2変量正規分布に従う と仮定し、方向および距離の情報を用いて歩行者の位置を歩行者の存在範囲およ び範囲内の各地点における歩行者の存在確率として検知する。次に、各車両にお いて得られた歩行者の存在範囲および存在確率を、車車間通信により他の複数車 両と交換し、歩行者の存在確率の和を計算することにより新たに歩行者の存在確 率が更新され、歩行者の存在範囲も狭まり、歩行者の位置を高い精度で特定する が可能となる。連続して歩行者の存在範囲および存在確率を交換・解析すること により、歩行者の移動軌跡が推定可能となる。以上の方法により歩行者の移動方 向が車両の移動方向と交差する場合、歩行者と車両が接触するであろう危険な状 況であると判断できる。この判断を利用して運転手に対して注意喚起および警告 を行うことが可能となる。 本研究では、ネットワークシミュレータを使用した実験により、実環境に近い環 境において、車車間通信によりどのように歩行者の存在範囲および存在確率が変 化するかを評価する。