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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 6F  遠隔教育とWeb応用(DPS)
日時: 2008年7月10日(木) 13:50 - 16:00
部屋: コスモ(2)
座長: 上原 稔 (東洋大)

6F-1 (時間: 13:50 - 14:15)
題名学生が作成した問題の類似度算出手法の提案と評価
著者*高木 輝彦 (創価大学大学院), 高木 正則 (創価大学工学部), 勅使河原 可海 (創価大学大学院)
Pagepp. 1408 - 1417
Keyword類似問題, 作問演習, 自動分類, 類似度, 自然言語処理
Abstract1.研究の背景と目的本研究室では2002年度から高等教育におけるe-Learningコンテンツの不足解消と教師−学生間,学生同士のインタラクティブ性の向上を目的とした,学生が協調的に作問可能なWBTシステム「CollabTest」を開発し,実装・評価を行ってきた.本システムでは学習者が問題を作成し,作成した問題をグループ内の学生間で相互に評価(グループレビュー)し,教師はその問題を集めてオンラインテストを作成する.これまで過去5年間にわたり,本学の講義,本学通信教育部の講座,八王子市の小学校などで利用実験を実施し,作成された問題数は4400問以上,レビューで投稿されたコメントは10000件以上となった(2007年12月時点).このことから,e-Learningコンテンツ不足の解消に寄与できると考えられ,また,教師−学生間,学生同士のインタラクティブ性の向上を示した.しかし,CollabTestの課題の1つとして,作成された問題の管理・再利用があげられる.本システムでは学生が問題を作成するため,講義を重ねるごとに問題は増加し,それらの問題の種類や内容の把握・管理は困難になる.また,1つの講義内でオンラインテストに出題する問題数は多くても100問から200問程度であり,実際,多くの問題は再利用されずに埋もれている.これらの過去の講義で作成された問題をいかに再利用するかが重要となってくる.そこで,現在,我々は過去の問題の有効利用を目的とし,類似問題群から動的に問題を出題するテスト出題方式について検討している.この方式を実現するためにはまず,学生が作成した問題を類似問題群へ分類する必要がある.本研究では,類似問題群への自動分類方式を提案し,自動分類における類似度算出手法の有効性について種々実験を行い定量的な評価尺度により検証を行った. 2.類似問題群への自動分類方式の概要 2.1.似問題群への自動分類手順CollabTestの問題はカテゴリ,サブカテゴリ(以下,カテゴリ項目)によって管理されている.このカテゴリ項目は教師が登録し,学生は問題を登録する際にカテゴリ項目を選択する.まず,教師はクラスライブラリ(各講義で作成された問題群)の問題を利用してテストを作成する.そして,テスト問題の中から類似問題群に登録したい問題を選択し,検索対象をコースライブラリ(過去に行われた全講義の問題をカテゴリごとに統合した問題群)から指定する.検索対象は選択した問題と同じカテゴリ項目を選択する.そして,類似元となる問題と検索対象の問題との類似度を算出し,あらかじめ登録してある類似度の閾値を超えた場合,その問題が類似問題群に登録される. 2.2.類似度算出手法提案する類似度算出手法について順を追って説明を行う.なお,これらの過程は類似元となる問題と検索対象の問題の両方において行われる. (1)問題情報の決定CollabTestでは問題情報としてキーワード,問題文,選択肢,解説が登録されている.このうち,キーワード,問題文,正答(正解となる選択肢)を使用して類似度を算出する.ただし,問題文の形式が「〜適切でないものを選べ.」などのようにその問題文の内容とは異なる選択肢を選ばせる問題である場合は正答もその他の選択肢も使用しない. (2)索引語の単位前述した問題情報から単名詞,複合名詞を索引語として抽出する. (3)重み付け複合名詞は語の連接頻度と出現頻度から重み付けを行い,単名詞に関しては語の出現頻度のみから重み付けを行う. (4)不要語の削除一般的には低頻度語や高頻度語を不要語の対象とする.まず,サブカテゴリ内で出現頻度が1の語を削除する.そして,出現頻度が極端に高い語に関しては同じ問題内にその語よりも高い重みの語が存在するときだけ削除する.さらに,言い換え表現による上位概念を表わす語(「目視的コミュニケーション」に対して「コミュニケーション」は上位概念を表わす語)が同じ問題内で存在する場合その語を削除する.その他に,問題特有の決まり文句に含まれる語を不要語として削除する. (5)類似度算出式最後に,一般的に最も使用されている類似度算出式であるコサイン尺度により類似元となる問題と各問題との類似度を算出する. 3.実験と評価本研究では,提案した類似度算出手法の有効性を検証するために実験を行い,定量的な評価を行った.前述したように提案する類似度算出手法には5つの過程が存在する.そして,各過程において様々な手法が考えられる.そこで,各過程において提案手法が有効であるかどうかを示すために,考えられる他の手法を適用した場合どのような算出結果になるか比較実験を行った.また,講義によって作成される問題の形式や表現の仕方など様々である.そこで,比較的講義内容の異なる講義間で類似度算出結果がどのように変化するか比較し,分析を行った.実験は,予めあるカテゴリ項目における問題集合を手動で類似問題群に分類し,提案した類似度算出手法での類似問題の算出結果を比較する.評価尺度としては情報検索の分野で一般的に利用されている再現率,適合率,F尺度を利用した.関連研究の手法と比較した結果,F尺度において本手法の値が高くなり,有効性が示唆された.

6F-2 (時間: 14:15 - 14:40)
題名デスクトップブックマーク:計算機上の仕事状態の保存と復元機能の評価
著者*小笠原 良, 乃村 能成, 谷口 秀夫 (岡山大学 大学院自然科学研究科)
Pagepp. 1418 - 1423
Keyword分散処理, 応用・社会システム, インターネット
Abstract計算機内で過去に参照したデータの想起と参照を効果的に行うため,我々は,計算機上の仕事状態の保存と復元の機能を提供する「デスクトップブックマーク」を提案した.本稿では,デスクトップブックマークによって仕事の途中状態を容易に復元できるかについて,関連ツールと比較考察した結果を報告する.具体的には,各ツールが統一的履歴情報として取得したパスに着目し,評価尺度としてデータの再現率と適合率を導入した.そして,デスクトップブックマークは,関連ツールに比べ,データの再現率は同程度であるものの,データの適合率は大きく改善されることを示した.

6F-3 (時間: 14:40 - 15:05)
題名グループワーク手法による情報系学生の育成実践
著者*吉田 幸二, 坂下 善彦 (湘南工科大学/情報工学科), 宮地 功 (岡山理科大学/総合情報学科), 山田 圀裕 (東海大学/情報メディア学科), 市村 洋 (サレジオ工業高等専門学校)
Pagepp. 1424 - 1428
Keywordグループ学習, 協調学習, 遠隔教育, プログラミング教育, ソフトウエア工学
Abstract1.概要  近年ソフトウェア開発の大規模化に伴い,グループによる開発が重要になってきている.しかし,コミュニケーションが不得手で,協調する作業やプログラムを効果的に分担して作成することが,不得意な学生が増えてきている.そこで,ゼミ等で情報系の学生にグループワークでの実践を行い,その問題点と効果を分析し実践してみた.  第一に,遠隔システムを使用して一定の知識獲得には良いが、自力でプログラムを完成するのは難しい.第二に,お互いの教え合いや議論の活発化は,モチベーションを高め完成する意欲を高める効果がある.第三に,活発な議論と協調性に比例して,アイデアや作業が効果的に進む.一方,枠組みの規定の絞り込みすぎは自由度を奪い,教師の放任性は目的への方向性を失うため,この効果的なバランスが大事であることも判明したのでここに報告する. 2. システム概要  このシステムは,プログラムの作成学習を通して,設計からプログラミングまでを理解する.次に,perl言語によりプログラミングの基本から応用までを学ぶこと共に,グループによるプログラムの結合その中のプロセスを通して議論やコミュニケーションの学習もする.そして,グループによるプログラムの組み合わせの実習を体験することにより,プログラムを繋いだり結合したりする注意点を体得できる特徴がある.  学習者はまず支援システムエントリから閲覧し,PERL言語学習支援,コミュニケーション支援等により学習とグループ作業を進めて行く.また,プログラム作成やプログラム結合についても学ぶことができる.また,確認問題を解くことによって理解度をチェックする.  一方,学習内容を閲覧するだけでなく,学習者間や講師とコミュニケーションすることや,データベースの検索機能により情報の検索と閲覧が可能となり,情報も検索することができる. 3.まとめ  グループ学習においても,遠隔システムや支援機能を使用しての効果は知識獲得には効果があるが,これでマスターできるわけではない.また,お互いの教え合い,特にグループを越えての討議に効果があった,一方,電子によるコミュニケーションは,一部の感情面での意思疎通に欠け問題が発生しやすい.しかし,ゼミ等の対面によるコミュニケーションが週に2回程度あるため,その問題も解決されていた.  電子によるコミュニケーション・ギャップやグループの枠組とそのフォローアップを体系的にシステム的にサポートして,よりよい支援できるシステムの開発につとめたい.今後は,これらのことを基本に枠組みをサポートするシステムの構築と,教師の指導が効果的に生きるアドバイスのサポート方式を取り入れるシステムの構築を進めて行く.

6F-4 (時間: 15:05 - 15:30)
題名音情報によるフィードバックを用いた動作の非同期型学習支援システム
著者*渋沢 良太, 渡邉 貴之 (静岡県立大学経営情報学研究科), 酒井 美那 (静岡県立大学経営情報学部), 湯瀬 裕昭, 鈴木 直義 (静岡県立大学経営情報学研究科)
Pagepp. 1429 - 1434
Keyword遠隔学習, 非同期型学習, 教育工学, マルチメディアシステム, ヒューマンインタフェース
Abstract 現在までに様々な分野の学習において,ICTを活用した支援に関する研究がなされている.その中で筆者らは,学習内容および評価の客観化が特に困難であり,また遠隔学習,非同期型学習が困難な動作の学習支援を研究対象としている.本研究が対象とする動作学習は特定の動作に限定しておらず,様々な分野に適用できる知見を得ることを目的としている.しかし,以下に示す研究背景を踏まえ,支援の必要性が高いフィジカル・アセスメントスキルに関係する動作をまず考察対象として設定した.  フィジカル・アセスメントとは, 臨床現場において患者の健康状態や必要なケアを決定するために,視診,聴診,打診等により患者の全身をスクリーニングし,得られたデータを患者のライフスタイルにマッチングさせながら分析するプロセスを指す.現在国内において,看護のフィジカル・アセスメント教育を正規に受け,自らその技術を使いこなしている技術指導者は数少ない.また,フィジカル・アセスメントスキルが国内の看護大学教育に導入されたのは1996 年であるため,臨床現場においては未だ定着していない.加えて初級レベルのスキルを学習するために,60時間にわたる実習主体のプログラムをこなさなければならず,現職の臨床看護師にとって,その教育を受ける機会を作ることは困難な現状である.このようにフィジカル・アセスメントスキルに関する動作学習は,遠隔学習,非同期型学習を効率的に支援する必要性が高い具体例の一つであると言える.  動作の学習における指導は通常,模範動作と言語情報によってなされる.しかし,それらはいずれも表現と解釈の一意性が乏しく,学習者の経験や知識の差によって受容のされ方が異なってしまう.この問題は特に直接接触による指導が不可能な,遠隔学習や非同期型学習においてより顕在化する.筆者らは2005年および2006年の2度に渡り,現職の看護師に対するフィジカル・アセスメントスキルの遠隔実習指導の支援を行い,この問題を確認している.筆者らはこの問題に対して,模範動作と言語情報に加え,各種センサにより動作の客観的指標を生成して提示する学習支援方法を提案する.この指標は,動作の新たな客観的な評価基準の一つとして,また動作指導の補助的役割としての活用が期待できる.動作学習には,(1)身体の動かし方の理解,(2)対象物への作用の理解の側面があるものとして考えることができる.筆者らは現在,前者に加速度センサ,後者に圧力センサを用いた指標生成を行っている.  筆者らはまず,フィジカル・アセスメントスキル学習の一項目である触診および打診を模擬した動作の学習を題材に,動作の客観的指標の提示による効果を調査するための実験を実施した.実験結果からは,指標提示時における動作の改善を確認することができたが,一方で指標の提示支援がなくなった際に,動作の記憶,再現性に問題があり得ることが明らかとなった.実験時に使用したシステムでは,動作の指標を視覚情報として波形グラフで学習者役の被験者に提示していた.これに加えて指導者の動作についても視覚情報として提示しており,双方を同時に見て学習することが困難であったことが質問紙調査の結果から明らかとなった.  この課題に対して,動作の指標提示を音情報で行うようにシステムをさらに改良し,その効果を調査するための実験を行った.本システムには,指導者の模擬試技の映像,およびその動作時の圧力指標,加速度指標の値を教示データとして予め記録させる.そして学習者が本システムを利用して動作を行うと,学習者の動作の指標データと教示データを比較し,学習者に対して自らの動作と指導者の動作との差異を音情報により自動的にフィードバックする.実験では本システムによる支援の有無,およびフィードバック方法の違いによる,被験者動作の指標データの差異を調査した.  本研究では,動作の非同期型学習の支援を想定したシステムを試作,実験を行った.今後は,同期型遠隔学習と非同期型学習を連携した形での学習支援を行えるように改良,評価を行っていく.

6F-5 (時間: 15:30 - 15:55)
題名フォルダ・プログラミングとネットワーク・フォルダ・サービス
著者*赤間 浩樹, 内藤 一兵衛, 内山 寛之, 山中 真和, 谷口 展郎, 長谷川 知洋, 三井 一能, 山室 雅司 (日本電信電話 NTTサイバースペース研究所)
Pagepp. 1435 - 1442
Keywordフォルダ・プログラミング, 処理付きフォルダ, ネットワーク・フォルダ・サービス, 追記・参照DMS
Abstract本研究は,Web上の部品に対して (1) 幅広い層のエンドユーザがダイレクトに,かつ,気軽に部品群を組合せて活用可能な環境を提供すること,同時に,(2)プログラマもRESTの延長上として気軽に利用可能なマッシュアップ環境であること,といった,エンドユーザとプログラマの双方の要求を満足する共通のプログラミング基盤の創出を目指している.我々は,フォルダ名に処理を割り当て,そのフォルダへのデータ投入によって処理が実行され,フォルダの階層構造に従って処理が連鎖していくプログラミング・モデルによって前述の狙いにアプローチする.本論文では,我々の提案するフォルダ・プログラミング・モデルについて特徴,プログラミング環境,サンプル・プログラムなどを紹介し,また,それを活用したネットワーク・フォルダ・サービスについて考察を行う.