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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 8I  情報センシング(2)(UBI)
日時: 2008年7月11日(金) 10:20 - 12:00
部屋: ビューホール(2)
座長: 今井 尚樹 (KDDI研究所)

8I-1 (時間: 10:20 - 10:45)
題名遮蔽による受信強度変化を利用した状態検知方式 −扉,窓の開閉状態の遠隔モニタへの適用とその実証−
著者*田中 博, 五百蔵 重典, 谷中 一寿 (神奈川工科大学 情報学部)
Pagepp. 1951 - 1955
Keywordセンサーネットワーク, RFID, 受信強度, 携帯電話, データベース
Abstract ユビキタス時代を迎え,至るところにコンピュータ,センサが存在し,かつそれらがネットワークで接続されるしくみが実現可能となりつつある.特に最近のマイコンやワイヤレス機器の小型化,低消費電力化,高機能化は上記のしくみを多様な領域でコスト負担も少なく構築できることに大きく寄与していると考えられる.アクティブRFIDは微弱無線を用いた個別の識別情報であるIDの発信機器である.これまではその通信エリア内における人の存在や物品の有無の検知手段の一つとして主に用いられてきたが,電波を用いたID送信機であることからID情報とともに各RFIDから発信される電波の受信強度も情報として得ることが可能である.本論文では,アクティブRFIDが発信するID情報とともにその発信する電波の受信強度を利用する新たな状態検知方法を提案するとともに,応用システムを構築し,その有効性を実証した結果を示す.  基本的に受信強度は発信側と受信側の距離が広がる,あるいは金属などの遮蔽物が両者の間に置かれると低下するが,提案手法は後者の現象を利用して状態の変化を検知するものである.まず提案手法の妥当性を確認するために,引き扉を利用した.扉が開状態のときは発信機は遮蔽されず,閉状態のときは扉に取り付けられた発信機が固定側に取り付けられたアルミ板によって遮蔽される構成を設定した.なお本構成では発信機として,微弱無線装置であるアクティブRFID(寸法:48×29×9mm,重量:11g(ボタン電池を含),電池寿命:5.3年(10秒発信間隔),通信距離:半径10m程度)を用いた.そして,その構成において開閉の状態で受信機の受信電力強度が大きく変化(15dBm)することをスペクトルアナライザを用いて明らかにし,手法の妥当性を確認するとともに受信機のRSSI(Received Signal Strength Indicator)出力が受信強度に比例して変化することを確認した.本提案手法は,従来の開閉状態に連動するプッシュ(マイクロ)スイッチや固定側と可動側の距離に応じた磁力によって反応するリードスイッチなどのセンサを設ける必要がなく構成が容易であること,設置対象である既存施設の改造なども不要であることに特徴がある.  本提案手法の有効性を実証するために,研究室(100m2超)の扉,窓などの開閉状態の遠隔モニタへ適用した.実証システムの基本構成は,一定の時間間隔でRFIDから送信されるID情報とRSSI値を受信機を介してサーバが取得し,RSSI値の変化から開閉状態の変化を判断してサーバ内のデータベースを更新する.そして,このデータベースに格納した開閉状態やその変化の日時をPHPを用いてHTML形式で出力して携帯電話のWebブラウザで閲覧可能なしくみとし,どの場所からでも状態をモニタできるようにした.ここで,フェージングや各RFIDタグから送信される電波のコリジョンによって,RSSI値の変化や受信不可の状態も発生することを考慮し,一定時間内でのRSSI値の積算から開閉状態を判断するようにしている.  本システムでは各管理者が異なるモニタ箇所を有していることから,管理者ごとにモニタ箇所を限定することが重要となる.一方で,携帯電話からの操作を考慮すると可能な限りキー入力操作を少なくすることが望ましい.実証システムではこの点を考慮し,携帯電話が所有者自身のみの使用に限定されている実際の使用状況に着目し,携帯電話の個体識別番号とRSSI値を取得している受信機のアドレス情報を括りつけた.すなわち,各RFIDによるモニタ箇所→受信機アドレス(設置場所)→携帯電話所有者(設置場所の管理者)というリンクでモニタ点を限定するしくみを実現し,実験によって機能を確認するとともに実際に運用してその有効性を確認した.今回提案した手法は扉,窓の開閉監視だけではなく,ある領域におけるモノの有無の状態を検知するという目的にも適用可能であり,広範囲に適用可能な手法であると考えられる.

8I-2 (時間: 10:45 - 11:10)
題名センサネットワークにおけるプライバシーとサービス品質を考慮した提供情報決定方式の検討
著者*中川 紘志, 一枚田 隆史, 加藤 弘一, 勅使河原 可海 (創価大学大学院)
Pagepp. 1956 - 1963
Keywordプライバシー, センサネットワーク, ユビキタス, 意思決定
Abstract1. 研究の背景と目的 近い将来、至る所に設置されたデバイスが人や環境の情報などを自動で検出し、利用者に対して快適なサービスを提供するユビキタス社会の到来が期待されている。このユビキタス社会を実現するための技術の一つとしてセンサネットワーク空間があり、人や環境などから多種多様の情報を取得し、利用者に対してサービス提供を行うための研究や開発が多く行われている。このセンサネットワーク空間において、利用者に対し様々なサービスを提供するためには多種多様な情報が必要であり、利用者が気付かない間に個人の情報が取得されてしまう可能性がある。そのため、空間の利用者はプライバシーに関わる情報の取得に関する不安を抱くことが予想される。 本研究はこれまで、センサネットワーク空間における安全な情報利用環境の実現を目的とし、ユーザの望むサービス提供と情報の保護を実現するために、ユーザが取得を許容する情報の範囲内でサービスの提供を最大化するための提供情報決定方式について提案してきた。この方式は、取得してよい情報や利用したいサービスをユーザが選択的に決定し、ユーザの要望をユーザポリシーとして定義する。しかし、本方式においてユーザの選択結果がプライバシーやサービス品質にどのような影響を与えるのかが不明瞭であった。そこで本稿では、プライバシーへの影響やサービス品質を考慮した提供情報決定方式について検討する。 2. ユーザの要望の抽出方法とその課題 ユーザの望むサービス提供と情報の保護を実現するためには、ユーザの要望を正確に抽出し、定義することが必要である。しかし、提供サービスや取得情報は空間によって異なり、空間利用時ごとの要望の定義はユーザの負担を考えると現実的ではない。さらに、要望が曖昧なユーザからも要望を正確に抽出する必要がある。また、サービス提供に必要な情報と取得されたくない情報が競合する可能性がある。仮に情報保護を優先した場合、情報不足によりサービスの品質が著しく低下したり、サービスの提供自体が不可能となる。 本研究では、自身の望むサービス提供と情報保護を定義したユーザポリシーを作成し、それを利用空間に反映するアプローチを取る。またユーザが空間の性質に応じたユーザポリシーを所持することにより、空間ごとの要望の違いに対応する。ユーザポリシーの作成時には、要望の曖昧さを解消するために、取得されうる情報や利用可能なサービスを具体的に提示し、その中から利用サービスや取得情報を選択する。この選択方法として、利用するサービス、コンテキスト、センサ情報の項目を選択的に決定する方法や、守りたい情報のみを決定する方法が考えられる。前者は要望の変化や細かい設定に対応できるが、新サービスの導入など状況の変化時には要望の再定義が必要となり、また項目数が多くなるとユーザの負担が大きくなる。後者は、ユーザが保護したい情報を取得しない範囲内でサービスを提供する方法である。一度要望を定義すればサービスに変更があっても再定義の必要はなく、また項目数が少ないためユーザの負担を軽減できる一方で、望むサービスを享受できるとは限らない。 さらに、サービス提供と取得情報が競合した場合、代替可能な別の情報をユーザに提示し、ユーザが代替情報の取得を受け入れればユーザの望むサービス利用と情報保護を達成できる。 しかし、取得情報や利用サービスを選択できたとしても、その達成がプライバシーの保護やサービスの品質に与える影響が不明瞭であると、選択結果がユーザの要望を正確に反映しているのかが曖昧となり、結果として望まない情報取得やサービス享受へと繋がってしまう。そのため、ユーザの選択結果に対するプライバシー保護やサービス品質の程度を評価できる仕組みが必要である。 3. プライバシー保護とサービス品質を考慮したユーザ要望の抽出 ユーザの要望がプライバシー保護を十分に達成できているのか、提供されるサービスの品質がどの程度なのかをユーザが確認できるよう、これらを客観的指標により提示する。ここで、どの情報の取得がプライバシーの侵害と捉えるかといったプライバシーへの考え方はユーザにより異なり、取得する情報がプライバシーに影響を与えるのかを評価することは難しい。そこで例えば、ユーザの望む情報取得をどの程度守れるかという、ユーザの要望に対する達成度などにより、プライバシーの保護の程度を評価する。 一方、サービス品質については、ユーザ個々にパーソナライズされたサービス提供、取得情報を利用した自動的なサービス提供など、品質を評価するためにはいくつかの項目が考えられる。そのため、品質評価に必要な事項を洗い出し、事項ごとや総合的なサービス品質を評価する。 これらの評価により、取得情報や利用サービスについてユーザが選択した結果として、どの程度のプライバシー保護とサービス品質が得られるのかをユーザに明示することができ、ユーザの要望を正確に抽出する上で効果的である。

8I-3 (時間: 11:10 - 11:35)
題名三次元環境での無線センサネットワークにおける省電力性を考慮したイベント検出
著者*鳥海 晋, 清 雄一 (東京大学), 本位田 真一 (国立情報学研究所/東京大学)
Pagepp. 1964 - 1972
Keywordセンサネットワーク, イベント検出
Abstract無線センサネットワークにおけるイベント検出技術は環境モニタリング,目標追跡などに応用できることから非常に重要な技術である.イベントを検出するためには各センサの測定値を収集する必要がある.しかし,各センサはバッテリで駆動しているため,計測値の収集に伴う消費電力量を低減する必要がある.既存の集約ベースによるイベント検出手法は,全てのセンサ計測値を必要とするため,省電力性が低い.そこで,本論文では,一部のセンサ計測値のみを用いて環境の概要を推定し,推定された概要に基づいてイベントを検出する手法を提案する.本手法では,三次元環境のイベントを検知するために,既存の二次元空間での等位図作成手法を三次元空間対応に拡張し,環境の概要を等値面の集合としてモデル化する.一部のセンサ計測値からイベントを検出することができるため,全センサ計測値を用いる既存のイベント検出手法と比較して,本手法は省電力性を向上させることができる.本論文では,シミュレーション結果に基づき,本手法を省電力性の観点に基づき評価する.この結果より三次元環境でのイベント検出の省電力性を向上させることが示せた.

8I-4 (時間: 11:35 - 12:00)
題名ユーザとの近接関係に基づいた最近傍センサノード検知とデータ取得手法の提案
著者*小島 一允, 樫原 茂 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科インターネット工学講座), 横山 輝明 (サイバー大学), 奥田 剛, 山口 英 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科インターネット工学講座)
Pagepp. 1973 - 1979
Keyword無線センサネットワーク, コンテキスト, 近接関係, データ取得, ZigBee
Abstractユビキタス環境では,ユーザのコンテキストに応じた有用な情報やサービスを提供することが求められている.コンテキストはユーザの周囲の情報から構成される.現在,無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network : WSN)を用いることで,そうしたコンテキストを構成する情報を収集することが可能である.しかし,現在の無線センサーネットワークでは,収集したセンシングデータとユーザの対応関係を明らかにするために,追加の位置検知機構が必要となる.本稿では,WSN上で追加の位置検知機構を必要とせずに,ユーザの周囲のコンテキストを取得する手法を提案する.提案手法では,ユーザとともに移動する端末が最近傍のセンサノードを検知し,そこからユーザの周囲のセンシングデータを直接取得する方法を提案する.また,ZigBeeセンサノード上に本提案手法を実装し,そのプロトタイプを用いて実環境において有効性の評価を行う.