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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 1F  協調作業支援(GN)
日時: 2007年7月4日(水) 13:10 - 14:50
部屋: 展望サロンA
座長: 井上 智雄 (筑波大学)

1F-1 (時間: 13:10 - 13:35)
題名情報の重畳提示による多言語間協調作業の支援
著者*吉野 孝, 小菅 徹 (和歌山大学システム工学部), 松下 光範 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
Pagepp. 139 - 149
Keywordテーブルトップグループウェア, 多言語
Abstract急速なグローバル化の進展にともない,対面環境での多言語間協調作業に対するニーズも高まることが予想される.対面環境でのPC 利用による作業の支援を行うシステムとしてSingle Display Groupware(SDG) の利用は,対面協調作業においては,有効な手段の一つである.しかし,多言語協調作業においては,表示言語の問題が生じる.つまり,複数言語の参加者の全ての言語情報を画面上に表示すると,いわゆる情報爆発が発生する.これらの問題の解決のために,方向依存ディスプレイテーブルLumisight Table 上で多言語間協調作業システムKOSGET を構築した.多言語間協調作業システムにおける情報の重畳提示方式の評価および多言語間協調作業システムKOSGET の試用結果について述べる.

1F-2 (時間: 13:35 - 14:00)
題名方向依存ディスプレイテーブルが発想支援システムに及ぼす影響
著者*大橋 誠, 伊藤 淳子, 宗森 純 (和歌山大学), 松田 昌史, 松下 光範 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
Pagepp. 150 - 154
Keywordグループウェア, 発想支援, KJ法, Lumisight-Table
Abstract1.はじめに  KJ法とは、東京工業大学名誉教授川喜田二郎氏が考案した発想法である。KJ法は、紙面上で行うKJ法とネットワークを通じて統合された複数の計算機を使用して行う分散型KJ法に大別される。紙面上で行うKJ法は、結果を保存するために写真などで撮影するか、あるいはラベル、島が剥離しないように、注意深く折りたたむ必要があり、現状のまま保存することは困難である。また、分散型KJ法は、物理的に指などで画面上のオブジェクトを指示することが不可能である。  本研究では、先述の問題点を解決するため、方向依存ディスプレイテーブルLumisight-Tableを使用する。提案手法と既存の分散型KJ法との比較実験を行い、その結果を作業時間や発言回数の観点から評価し、本手法の有意性を示す 2.Lumisight-Tableのシステムの構成  Lumisight-Tableとは、東京大学苗村研究室とNTTコミュニケーション科学基礎研究所が共同開発した方向依存ディスプレイテーブルである。Lumisight-Tableは、4台の計算機を用いて、4方向の画面を出力することで、同一画面を共有しながらユーザの見る方向によって異なる画像を提示することが可能である。これを利用することによって、各ユーザが自分の正面に文字が見えるようにしながら各画面にオブジェクトを同一座標に配置し、ディスプレイ上で共有することが可能である。  本システムはサーバ、クライアントからなる。クライアントで出力された情報をサーバに送信し、サーバが各クライアントへ出力された情報を送信する。クライアントは送信された情報を元に、自身の計算機の番号を参照し座標変換を行う。さらに、文字列のみ各クライアントの正面に見えるようにLumisight-Tableのディスプレイに画像を表示する。 3.評価実験  本システムを使用して、比較実験を行った。被験者は4名1組になり、Lumisight-Tableを使用した分散型KJ法(以下、Lumisight-Table KJ法と記述する)と,物理的に離れた場所に設置された4台のディスプレイを使用した分散型KJ法(以下、分散型KJ法と記述する)をそれぞれ1度ずつ行い、その結果を検証した。  実験の結果、対面でコミュニケーションを取り共有画面を指で指示することで,既存の分散型KJ法と比較して、発言回数が10秒間に1回の割合から4秒間に1回と大幅に増加し、コミュニケーションの活性化をもたらすことがわかった。また、作業時間の比較を行うためt検定を行ったところ、分散型KJ法とLumisight-Table KJ法に有意差がみられた。 4.おわりに  本研究では、紙面上で行うKJ法の利点と既存の分散型KJ法の利点を併せ持つシステムを構築するため、Lumisight-Tableを用いてシステムの開発を行った。その上で、分散型KJ法とLumisight-Table KJ法を本システムを用いて比較・実験・評価を行った。実験の結果から提案手法により、コミュニケーションが活性化され、作業時間を短縮することが可能になることを立証した。

1F-3 (時間: 14:00 - 14:25)
題名大画面共同作業インタフェースを持つ発想支援グループウェアKUSANAGIの開発
著者*由井薗 隆也 (北陸先端科学技術大学院大学), 西村 真一 (島根大学), 宗森 純 (和歌山大学), 杉山 公造 (北陸先端科学技術大学院大学)
Pagepp. 155 - 158
Keywordグループウェア, 発想支援, マルチユーザインタフェース, 大画面, KJ法
Abstract コンピュータネットワークを用いて複数の人々の知的生産活動を支援するグループウェアの研究が行われてきている.近年,Web2.0により集合知という概念が社会一般に注目を集めるとともに,組織経営の分野では,人間が持つ知識を活用,創成するための知識経営が90年代後半より注目されてきている.従って,グループの知識を集約できる会議支援技術は,今後ますます必要になると予想される.その中,衆知を集める発想法であるKJ法 [1]に着目したグループウェアの研究が日本では数多く行われてきた.代表例として,KJ-Editor[2], D-Abductor,発想支援グループウェア郡元[3]が上げられる.KJ法は,収集したデータから新たな構想を発想するための技法として始まり,数多くの収集データを取り扱えることが期待される.そのために,上記の計算機支援において,1台の計算機画面でより多くのデータを取り扱うための工夫が検討されてきた.KJ-Editorではパニング機能[2],郡元では拡大縮小表示機能[3],郡元の拡張であるGUNGEN-DXII[4]ではテトリス型インタフェースの技術開発が行われている.本研究では,1台の計算機画面という制約条件を取り払い,複数の計算機画面を結合し,複数の人々の共同作業を支援するマルチユーザインタフェースを備えた電子会議環境を実現する.  提案するシステムはKUSANAGIと名付け,発想支援グループウェア郡元の研究で支援されてきた分散協調型KJ法[3]の支援と同等な支援環境を開発した.ただし,大きな共同作業空間を実現するために,複数のPC画面を結合できるとともに,複数のマウスでデータ移動操作を可能とした.その開発には,ネットワークを介したマウス操作を実現するミドルウェアGLIAを用いた[5].開発したグループウェアKUSANAGIでは,横5列×縦2行の10画面を仮想画面でなく,物理的に同時に表示している.複数のマウスを用いて,それぞれが別々の意見や島を動かすことが可能である.またその移動は,10画面どこでも動かすことが可能である.また,複数の人が同じ意見を移動することがないように,同時に1人しか意見ラベルを動かせないアクセス制御を実現している  今後,開発したKUSANAGIを用いて大画面共同作業空間の分散協調型KJ法に及ぼす影響を実験・評価する予定である. 参考文献 [1] 川喜田二郎 : 発想法-混沌をして語らしめる, 中央公論社 (1986). [2] Ohiwa, H., Takeda, N., Kawai, K. and Shimomi, A.: KJ editor: a card-handling tool for creative work support, Knowledge-Based Systems, Vol.10, pp.43-50 (1997) . [3] 由井薗隆也,宗森 純:発想支援グループウェア郡元の効果 〜数百の試用実験より得たもの〜, 人工知能学会論文誌, Vol.19, No.2, 105-112 (2004). [4]重信智宏,吉野 孝,宗森 純:GUNGEN DX II: 数百のラベルを対象としたグループ編成支援機能を持つ発想支援グループウェア,情報処理学会論文誌,Vol.46,No.1,pp.2-14 (2005). [5] 西村真一,由井薗隆也,宗森 純:ネットマウスでPC画面を結合するミドルウェアGLIAの開発と評価,情報処理学会マルチメディア,分散,協調とモバイル(DiCoMo’06) シンポジウム論文集, pp.507-512 (2006).

1F-4 (時間: 14:25 - 14:50)
題名プレゼンテーション発表時のコメント収集に焦点をあてたアノテーションシステムCollabStickyの開発と評価
著者*土井 健司, 井上 正博, 田坂 未来, 平島 大志郎, 勅使河原 可海 (創価大学大学院工学研究科)
Pagepp. 159 - 164
Keywordcontext, webサービス
Abstract1.研究の背景と目的 近年,会議においてプレゼンテーションを用いた質疑応答を含むディスカッション形式の会議が大学の研究室や企業で増えてきており,このような会議を支援するシステムが多く存在する.この形式の会議では参加者から有益な意見を収集することを目的に持っている。そのためこの形式の会議を対象として参加者から意見を収集することを目的としたシステムがあり,代表例としては,議事録システムや,チャットシステムなどがあげられる. しかし、既存の意見収集を目的としたシステムでは、学会発表等のようにプレゼンテーションの後にディスカッションがある会議において、ディスカッション中はコメントを投稿する時間がプレゼンテーション中に比べて多く存在するため参加者のコメントが得られやすいのに対し、プレゼンテーション中は参加者が内容の理解に多くの時間を奪われてしまいシステムにコメントを十分に投稿することができなかったと考えられる。 そこで、本研究では人々が本を読む際に目印をつけたりメモを書き記したりするために付箋を貼るという行為に着目した。そして、プレゼンテーション中にも意見を発想したスライドに直接目印を付けておくことで、後から見直したときに何をコメントしようとしたか思い出すことができるのではないかと考えた。そして、結果的に会議全体のコメントの量と質が向上し、より有益な意見が取得できるのではないかと予測した。そこで、本研究では特定箇所にコメントを挿入することのできる付箋システムCollabStickyを提案する。 2.CollabStickyの概要 2.1付箋の機能 本システムで用いる付箋は、作成・編集・追記・削除・移動・表示の6つの操作を前提としている。 以下にこれらの操作について説明を行う。 (1)付箋作成 ユーザはコメントを付与したい場所を指定して、コメントの種類を選択することで付箋を作成する。作成された付箋は、コメントが挿入されるまでは、コメントを行いたい箇所に対するユーザ個々の目印としての役割を持つ。そのため、後述する編集操作によってコメントが挿入されるまで他のユーザに表示されることは無い。本システムではこのプレゼンテーションの特定箇所に付ける目印のことを「フック」と定義する。 (2)付箋編集 作成された付箋にコメントの挿入を行う。挿入されたコメントは何度でも書き直しが可能となっている。 (3)付箋追記  他のユーザが投稿したコメントに対して更なるコメントを行うことができる。そして、この追記されたコメントの回数が多くなるほど、コメントの種類を表す付箋の色は濃くなっていく。これによって、スライド内のコメントの中で他のユーザがどのコメントに注目しているか知ることができる。 (4)付箋削除 任意の場所に貼り付けられている付箋を削除することができる。 (5)付箋移動 一度貼り付けられた付箋の位置を変更することができる。 (6)付箋表示 投稿した付箋を公開する範囲を選択。これによって、参加者がコメントを躊躇することなく投稿することができる。 2.2参照ウィンドウ 付箋はユーザがスライドの好きな箇所に付与することができるため、かえってコメントを読む際に負担がかかってしまうという問題が考えられる。また、プレゼンテーション中のコメントの投稿を促すことからコメントの量の増加は見込めるが、質を高めるにはシステムに工夫が必要となる。そのため、閲覧しているスライド以外のコメントを参照することのできる参照ウィンドウを設けることで、1つのスライドページを参照しながらもプレゼンテーション内に貼り付けられたスライドごとのコメント数とそれらコメントを参照できるようにする。 これによって、プレゼンテーションのスライドに分散したコメントを参加者が把握することが可能となる。そのため、互いのコメントを参照しあうことで更なるコメントの量の向上が見込めるだけでなく、1つのコメントに対して参加者が意見を交わしあうことで、より発表者にとって影響力の高い意見となり、結果的に質の向上が得られると考える。 3.利用実験と評価 本稿では、検討したシステムのプロトタイプの開発を行った。そこで、会議のコメントの質と量が向上したか既存のコメント収集システムと比較実験を行った。比較の対象としてはチャット系システムの代表としてCollabMinutesを用い、発表者の発言頻度などに偏りがないよう配慮しながら参加者を2つのグループに分けてそれぞれCollabStickyとCollabMinutesのそれぞれのシステムに独立してコメントの投稿を行った。この実験によって、プレゼンテーション中の支援を行うことによって会議全体で得られるコメントの量が向上し、これらのコメントをもとに参加者間で多くの意見を交し合うことで質も向上するという結果を結果を得ることができた。 今後は、さらに多くの利用実験を実施し、コメントの質の向上について定量的に評価する。また、ユーザビリティについても評価を行い利用上の問題点を抽出し、システムの改良を行う。