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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 7A  モバイルアプリケーション(MBL)
日時: 2007年7月6日(金) 8:30 - 10:40
部屋: 平安
座長: 清原 良三 (三菱電機)

7A-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名WLAN-IP携帯端末をベースにした学園向け多目的端末の開発と評価
著者*尾川 正美 (富士通(株)文教ソリューション事業本部/北陸先端科学技術大学院大学), 廣田 多加治 (富士通(株)文教ソリューション事業本部), 松澤 照男 (北陸先端科学技術大学院大学情報科学センター)
Pagepp. 1281 - 1286
KeywordWLAN-IP端末, ユビキタス端末, 中等教育機関, 指紋認証, Felica
AbstractWLAN-IP携帯電話をベースにした学園向け多目的端末の開発と評価 初等教育機関では児童の安全確認へのRF-IDの利用が,高等教育機関では個人認証の為のICカード利用,学習支援の為の携帯端末の利用など携帯デバイスの活用が進展してきた.我々は,全寮制の中等教育機関向けに,危機管理支援や生活支援に役立つ電子生徒手帳として,生体認証機能付きでICカードを内蔵したWLAN-IP携帯端末を設計・開発した.この設計の経緯と1年間運用した結果に基づいた評価を報告する.

7A-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名Mobile ER: 救急活動支援画像配信システム
著者*砂原 秀樹, 森島 直人, 神原 誠之, 石橋 賢一 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科), 今西 正巳 (奈良県立奈良病院)
Pagepp. 1287 - 1292
Keywordモバイルネットワーク, 遠隔医療, Mobile IPv6, ネットワークモビリティ
Abstract 救急活動において現場の患者の様子を的確に医師に伝えることが重要である。現在の救急活動では救急隊員は携帯電話を用いて医師と連絡を取りながら応急措置をすませ受け入れ病院へ患者の搬送を行っている。こうした状況を改善するため現場の様子の画像を医師に伝えるシステムの開発が望まれているが、携帯電話等の通信システムの限界、受け入れ病院側での通信システムの整備等、普及展開には困難を伴っている。我々は一昨年よりインターネット技術を用いワイヤレスブロードバンド接続によって救急車と病院を密接に結合するシステムの開発を行ってきた。ここでは、Mobile IPv6やNEMOといった移動体通信支援機能を持ったモバイルルータを核に、救急車内にネットワークを敷設し複数の機器をインターネットからアクセスできるようにしている。今回実現したシステムでは、救急隊員はウェアラブル機器を装着し、隊員が目視している場所の画像を医師に伝達するようになっている。同時に隊員と医師は音声での会話も可能であり、画像と音声を用いた円滑な情報交換が行えるようになっている。さらに、心電図等の各種医療情報機器からの情報もインターネットを経由して送信可能であり、医師が患者の状況を的確に判断できるようになっている。医師側の機器は通常のPCとインターネットアプライアンスを用いており特殊な装置を必要としないため普及展開も容易であると考える。なお、このシステムで扱われる情報は個人情報を含むため通信においてこれらの情報が漏洩しないようセキュリティやプライバシに配慮してシステムは構築されている。  本論文では、これらのシステムの詳細を述べるとともに、現在実現できている機能の概要を示す。また、本システムの実用化へ向けた今後の展望についても述べる。本システムは、生駒市消防本部の救急隊員及び救急病院の医師とも協力して開発を進めており、これらの評価についても述べる。

7A-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名モバイル端末向け自動通訳システムにおける複数アーキテクチャの統合
著者*長田 誠也, 山端 潔, 花沢 健, 奥村 明俊 (日本電気株式会社 共通基盤ソフトウェア研究所)
Pagepp. 1293 - 1298
Keyword携帯端末, 自動通訳, ユーザインタフェイス, 音声認識, 機械翻訳
Abstract複数の自動通訳システムをモバイル端末向けに統合する手法を提案する。 多くの自動通訳システムでは、音声認識エンジン、機械翻訳エンジン、音声合成エンジンの3つのエンジンを持っている。 音声認識エンジンの出力の正しさは、利用者が見れば判断できるが、自由文機械翻訳エンジンの出力の正しさは、利用者が判断することは難しい。 一方、機械翻訳エンジンには例文選択型翻訳エンジンがあり、翻訳精度は保障されているが、カバレッジが不十分であるという課題がある。 そこで、この自由な入力を許す通訳システムと、例文ベースの通訳システムを統合することで翻訳精度とカバレッジを両立させながら、ユーザにとって使いやすい統合方式が望まれている。 一方、自動通訳システムは、人との対面での使用を想定しているため、簡単に持ち運べたり、使いたいときにすぐに使えるように、小型の端末で動作することが望まれている。 しかし、複数のシステムを統合した統合システムは、一般的にはシステムが複雑化し、それに伴いシステム内の状態遷移が複雑化し、更にユーザインタフェイスも複雑化するため、小さな画面と簡単な入力デバイスしかもたない携帯端末への搭載は難しい。 そこで、我々は自動通訳システムの特徴となる翻訳結果の出力という点で、複数の自動通訳システムの結果をユーザインタフェイスレベルで統合することにより、携帯端末上でも使いやすい統合手法を提案する。さらに、小型の携帯端末上での実現について述べる。 これにより、従来の統合システムでは利用者がシステム全体を理解して、システムの内部状態を意識しながら使用する必要があったが、提案手法では利用者がシステム状態を意識せずに使うことが可能である。 また、ユーザの操作数は、従来の統合手法よりも、提案手法の方が少ないことを示す。

7A-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名ホスト情報を用いたユーザコンテキスト推測機構
著者*坂本 憲昭, 倉田 哲也, 西尾 信彦 (立命館大学/情報理工学部)
Pagepp. 1299 - 1304
Keywordコンテキストアウェア, モバイルコンピューティング
Abstract近年,ユビキタス環境の実現の期待と共に,ユーザ自身のコンテキストに応じたサービスの提供を目指すコンテキストアウェア・コンピューティングの研究が盛んに行われている.これまでの研究の多くは,ユーザのコンテキストを取得するために,種々多様なセンサを我々の生活空間の中に遍在させ,そこから得られる情報を元にコンテキストの推測を行っていた.しかし,そのようなセンサが我々の生活空間の中に張り巡らされるといった環境が実現されるには,まだ多くの時間がかかることが予想され,ユーザのコンテキストを推測することが難しいのが現状である.一方,センサとは異なり,PCやPDAなどの小型・高性能なホストを使用する機会が増加している.仕事や会議の場での使用はもちろんのこと,プライベートやコミュニケーション手段としても使用されるなど,我々の生活の一部として,とても身近な存在になりつつある. そこで本稿では,ホストから取得できる情報のみを用いてユーザのコンテキストを推測することを目指す.ホストを使用する際には,ユーザは必ず何らかの目的をもって使用することが多いため,そのコンテキストをホストのみから取得することが出来れば,コミュニケーション支援や周囲の環境との連携など,様々なサービスに応用可能であると考えられる.ここで述べるコンテキストとは,「会議中」や「休憩中」などといったユーザがホストをどのような場所及び目的で使用するかに合わせたものである.また,そのようなコンテキストはユーザごとに無数に存在することが容易に想像できる.よって,ユーザごとの意思を反映するものでなければならず,システム構築の際に静的に定めておくことは適切ではない.本稿で提案するシステムは,ホスト管理部,コンテキスト管理部,コンテキスト推測部の三つのモジュールに分類される. ホスト管理部は,ユーザがホストを使用することで変化する様々なホストの情報や,ホストに接続されたデバイスなどの情報を取得・管理する役割を持つモジュールである.本モジュールにおいては,Probe Promptを使用する.Probe Promptとは,現在立命館大学ユビキタス環境研究室で研究されているシステムで,ホストに常駐し,アプリケーションからの統一的なアクセスによってホスト情報,あるいはホストの履歴に関する情報を容易に取得できるシステムである.現在CPU利用率やネットワーク状況などの取得が可能となっている.しかし,本稿ではホスト情報として,ホストの現在地や,近年のハードディスクに搭載されている三軸加速度センサの情報,実行中のアプリケーション,閲覧しているWebページなどの情報の取得・管理が必要なため,これらの機能の追加を行う. コンテキスト管理部は本システムにおいて最も重要となるモジュールである.ユーザコンテキストを推測するアルゴリズムなどの研究は,近年盛んに行われている.しかし,システム開発者がすべてのユーザに適したアルゴリズムや,その推測のための要素となるものを静的にシステムに組み込むことはユーザの意思を反映しにくく,コンテキスト認識確度の低下を招く原因となるため適切ではないと考える.一方,ユーザが逐一細かい設定を行うことは,ユーザの意思を推測システムに反映可能であるが,設定の煩わしさなどの問題もあるため現実的ではない.よって本システムのコンテキスト管理部では,ホスト管理部から取得したリアルタイムなホスト情報とその履歴からユーザの癖を見つけ出してユーザに提示し,取捨選択及びラベリングのみを行わせる.このことで,ユーザは少しの手間をかけるだけでシステムがユーザに合わせたコンテキスト推測を学習し,より高いコンテキスト認識確度が望まれる. コンテキスト推測部は,コンテキスト管理部で学習したユーザに合わせたコンテキスト推測基準を用い,ホスト管理部から取得したリアルタイムのホスト情報から現在のユーザコンテキストの推測を行うモジュールである.例えば,ACアダプタがはずされており,ホストに内蔵されている加速度センサが反応している場合は,現在ユーザはそのホストを持って移動中であることが推測される.また,会議室においてホストにプロジェクタが接続され,プレゼンテーションの資料のウィンドウが多く使用されている場合には,現在ユーザはプレゼンテーション中であることが推測される. 以上の三つのモジュールを用いて本システムを構築する.評価については,複数ユーザに数日間本システムを利用してもらい,そのコンテキスト認識確度の評価及びユーザビリティの調査を行う. 本稿では,ホスト情報のみを用いたユーザコンテキスト推測機構の提案を行った.また,システムがユーザの癖を抽出し,提示することでのユーザごとの意思をコンテキスト抽出機構に反映するための仕組みを提案した.今後は更なるコンテキスト認識確度の向上と,システムにかかる負荷の軽減を目標に提案システムの改善に取り組んでいく予定である. 参考文献 ・首藤幸司,西尾信彦,”センサフュージョンを利用した個人行動の未来予測機構”,ユビキタスコンピューティングシステム研究会報告,2006-UBI-12,2006年. ・森川大補,本庄勝,山口明,大橋正良,”コンテキストを活用したサービスプラットフォームの検討”,DICOMO2003,2003年.

7A-5 (時間: 10:10 - 10:35)
題名公共空間における周囲の第三者とのコミュニケーション支援のための自己プレゼンス
著者*通山 和裕 (立命館大学大学院 理工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学 情報理工学部 情報システム学科)
Pagepp. 1305 - 1313
Keywordubiquitous and mobile computing, mobile communication, shared encounters
Abstract近年,街中のような公共空間での第三者間コミュニケーション支援を目的とする研究/開発が各所で進められている.それらは,これまで表出していなかった人間関係を発見し,興味や嗜好,目的を共有する人々を結びつけることで,より価値の高い生活の実現を支援することを大きな目標としている.しかし,既存の手法は第三者間に交友関係を持たせるプロセスが急であり,心理的な抵抗が強い.本稿では,携帯電話などの携帯無線端末を用いて周囲の第三者とのゆるやかなコミュニケーションを支援することを目指し,そのために「いま周囲にいる第三者との共感」を実現する自己表現(自己プレゼンス)の要件について述べ,一手法として写真とテキストメモを周囲の第三者間で共有することを提案する.また,Web上のソーシャルブックマークを利用した予備調査から,公共空間において第三者たちの自己プレゼンスを利用して「場所の属性」や「潜在的なコミュニティ」を発見する手法の実現可能性を検討する.