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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム

セッション 7G  コンテキストアウェア1(DPS)
日時: 2007年7月6日(金) 8:30 - 10:40
部屋: 展望サロンB
座長: 乃村 能成 (岡山大学)

7G-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名グループドリブンのサービス提供に向けたグループコンテキスト管理機構
著者*鄭 哲成 (立命館大学大学院 理工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学 情報理工学部)
Pagepp. 1490 - 1495
Keywordコンテキストアウェア, グループベースサービス, グループコンテキスト, 適応的アクセス制御, アドホックネットワーク
Abstract人は日常生活の中で周囲の人々とグループを不断に形成/解消しているため,グループに関する状況(グループコンテキスト)は実世界における重要なコンテキストの一つだと言える.しかし,「集団登下校中の学童が一定時間以上はぐれたら保護者に通知する」など,グループコンテキストをトリガとしたサービスの実行制御は,現状において困難である.本論文では,各人の所持する携帯端末が近接無線通信によりグループコンテキストをセンシングし,サービスからのグループコンテキストに関する要求を解決する機構であるGRECOM (Group Context Management Middleware for Group Event-based Services)を提案する.GRECOMの特徴は,周囲の端末とのプレゼンスだけでなく相識関係の判断などを通して高位のグループコンテキストを把握する点と,グループコンテキストへのアクセス制御ポリシーを状況に応じて変更できる点にある.本論文では,我々が想定するグループベースサービスやサービス基盤としての要件定義,GRECOMの設計について述べる.

7G-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名利用者コンテキスト認識における電車内外判定に関する検討
著者*中村 友宣 (大阪大学大学院 情報科学研究科), 小川 剛史 (東京大学 情報基盤センター), 清川 清, 竹村 治雄 (大阪大学 サイバーメディアセンター)
Pagepp. 1496 - 1501
Keywordウェアラブルシステム, コンテキスト認識, 加速度センサ, 超音波センサ, サポートベクターマシン
Abstract本稿では,移動中の利用者の状況に応じた連続的な学習支援をするシステムのための利用者コンテキスト認識における電車内外判定の検討について述べる.本システムでは,大腿部にモーションセンサを装着し,計測した角度から「座位」,「立位」,「歩く」,「走る」,「(自転車を)こぐ」という基本5状態に加え,「立位」状態での「電車内」と「電車外」の両状態を加速度センサと超音波センサを用いて認識する.取得した角度と加速度データは短時間フーリエ変換によりパワースペクトルに変換し,超音波による距離データは1秒間の中央値を求めて,サポートベクターマシンにてユーザの状態を識別する.実験にて通学時における「立位」状態での電車内外の認識率は加速度センサのみの場合で「電車内」が98.1%と高い認識率を示した一方,「電車外」及び超音波センサのみ,加速度センサと超音波センサの併用では状況により認識精度が大きく劣化することを確認した.

7G-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名既存の気象情報を利用した仮想センサの生成
著者*洞井 晋一, 松浦 知史, 藤川 和利, 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
Pagepp. 1502 - 1509
Keywordウェブサービス
Abstract気象庁はAMeDAS(Automated Meteorological Data Acquisition System, 以下ア メダス)を用いて日本国土の気象情報を収集している。 アメダスでは、日本の気象状況を時間的・地理的に細かく監視するために、降水 量・風向・風速・気温・日照時間の観測を自動的に行っている。 降水量を観測する観測所は全国に約1300ヶ所あり、このうち約850ヶ所では降水 量に加え、風向・風速・気温・日照時間を観測している。 この観測所の数は、約17km間隔で降水量を観測し、約21km間隔で風向・風速・気 温・日照時間の観測を行っていることになる。 この観測所の間の地域では、センサが設置されていないため正確な気象情報を知 ることができない。 例えば、観測所で降雨を観測した場合、観測所のすぐ近くでは雨が降っている可 能性が高いが、 ある程度の距離が開くと雨が降っていない可能性がある。 本研究では任意の位置における気象情報の提供を行うために、 仮想センサの生成を行うシステム「VS-RS」を提案する。 従来は利用者がセンサを指定して気象情報の利用を行ってきたが、 VS-RSでは、利用者が利用する位置に仮想センサを生成し、 まるでその位置にセンサが存在するかのようにしてデータを利用する。 この仮想センサの生成を行うことによって、 気象情報を利用することを促進し、精度の高い気象情報の提供が期待できる。 VS-RSを構築するために、プロトタイプシステムの構築を行う。 プロトタイプシステムの概要は次のようになる。 仮想センサは既に設置されているセンサの情報を利用して、気象情報を生成する。 VS-RSを構築するために、まず既存の気象情報を収集する必要がある。 この既存センサの収集した気象情報はアメダスが提供している情報を利用する。 精度の高い気象情報を提供するためには、 実際にアメダスが生成した情報を利用することが望ましいが、 プロトタイプの段階ではインターネット上のデータを利用する。 アメダスの収集した気象情報は気象庁のウェブサイトにアクセスすることで収集 できる。 また、インターネット上のサービスとして気象情報を提供しているウェブサイト は多く存在する。 ウェブページを解析して気象情報を収集することで、 アメダスの収集した気象情報を容易に取得することができる。 こうして取得した気象情報はデータベースに蓄積する。 仮想センサはこのデータベースを利用して、 気象予報に用いられる数値解析の手法を利用して仮想的なデータを生成する。 VS-RSのプロトタイプではサービスを提供するウェブサイトを用意する。 利用者はウェブサイトのCGIから、利用する位置を入力し、 その位置に仮想センサを生成する。 この仮想センサが利用者に対して気象情報を提供し、 また他の利用者の作成した仮想センサも利用可能とする。 仮想センサにはアラートの機能などを保有させることも可能であり、 例えば雨が降ったときにメールの送信を行うといった機能の拡張も可能である。 また、本研究ではVS-RSを用いて仮想センサが提供する情報と、 実際の気象情報の乖離を調べる。 アメダスの観測所が設置されていない地点の気象状況は、理想的な状況であれば 推定可能である。 しかし、現実の地球上では地表の起伏や海面・湖面の影響など、正確な推定は難 しい。 また、特に近年では環境問題としてヒートアイランド現象やビル風の影響、集中 豪雨の発生など、局所的な気象状況の推定が困難になってきている。 こうした局所的な気象状況を知るためには、高密度なセンサの設置が必要である。 高密度なセンサの設置を行うプロジェクトとしては、Live E!プロジェクトがある。 Live E!プロジェクトが設置しているセンサの位置にVS-RSによって仮想センサを 生成し、 その値を比較することによって高密度なセンサの設置の有効性を考察する。 また、センサの設置密度の変化によって、仮想センサの生成する気象情報が どのように変化するかを調べ、有効な設置密度を考察する。 将来的には自動車などに取り付けた移動体センサが様々な位置の気象情報を収集し、 仮想センサの気象情報と比較することで、気象センサを設置すべき位置を特定す ることが考えられる。 また、VS-RSを一般に公開するためには気象法の定める様々な問題があるため、 こうした現状での問題点もまとめる。

7G-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名ユーザのコミュニティ情報を用いたSNSユーザの出会い支援システムDIの開発
著者*村上 豊聡 (和歌山大学大学院システム工学研究科), 吉野 孝 (和歌山大学システム工学部)
Pagepp. 1510 - 1513
KeywordSNS, コミュニケーション, 会話分析
AbstractSNSでは「友人の友人」といった繋がりを通じて人間関係を構築することがメリットのひとつとされる.本研究では人間関係の拡張を行う手段として「友人の友人」という関係に焦点を当てた.「友人の友人」関係であるユーザの位置情報をもとに,コミュニケーションを実際に行うための,きっかけを提供するシステムDIを開発した.「友人の友人」関係にあるユーザが近接すると,共通の友人や趣味,相手ユーザのコミュニティ情報を提示する.本稿では,システム使用の有無で「友人の友人」であるユーザ間の会話を比較し,システムの有用性を考察した.ユーザの所属コミュニティ情報は会話の話題提供に有効であることがわかった.

7G-5 (時間: 10:10 - 10:35)
題名共同作業を支援する情報共有Webエージェントの方式
著者*清水 好明, 三井 広海, 小泉 寿男 (東京電機大学大学院理工学研究科情報システム工学専攻)
Pagepp. 1514 - 1519
Keywordエージェントシステム, オントロジ, コンテクストアウェアネス, グループウェア
Abstract1.はじめに  共同作業においてよりよい製品を開発するためグループウェアの研究が多く発表されているが,共同作業により蓄積される知識アーカイブの量は膨大であり,ユーザ自らが検索エンジン等を用いてこの中から目的の知識を抽出するためには多大な時間を要するという問題がある.このため知識処理を用いてこれらのアーカイブを有効活用する必要がある.  本研究では共同作業においてより良い製品を開発するために,エージェントとオントロジを用いてユーザから共同作業にとって有用な知識を自動的に収集・共有・提供するシステムを提案する.提案システムでは共有した知識を共同作業の内容や専門性に応じて再構成して作業者へ提供することで,異なる専門性を持つ作業者の知識の差異を埋め,作業者の知識レベル向上を目指す. 2.方式と構成  一般的に共同作業には機械・電子機器・プログラムなど異なる専門・異業種の作業者が参加するものであり,共同作業の過程で発生する知識は各作業者の専門性によって異なるため,膨大な知識の中から共同作業の集団全体にとって有用な知識を判別して抽出・提供するのは非常に困難となっている.そこで提案システムではソフトウェアエージェントとオントロジを用いて有用な知識の抽出を実現し,これを知識共有データベースへ格納する.  エージェントにはユーザエージェントと管理エージェントの2種類が存在する.ユーザエージェントは作業者のPC上に存在し知識の抽出と知識共有データベースへの送信,およびユーザの行動を観察し共有サーバへ知識提供リクエストを送信する.管理エージェントはユーザエージェントから送信された知識をオントロジに基づいて管理し,ユーザへ提供する.なお,本システムにおけるエージェントはJADEを用いて構築する.  本研究におけるオントロジは「目的層」,「構造層」,「タスク層」の3階層により構成される.「目的層」にはよりよい製品であるための要件や条件を記述する.「構造層」では各作業者の専門性や関係,および「目的層」に記述されたの要件をどの作業者が担当すべきかなどの共同作業場の構成を記述する.「タスク層」では,各作業者がすべき仕事の概念が記述されている.例えば目的が「よりよいソフトウェア開発」であるならば,「タスク層」にはソフトウェアを構成するプログラムの概念が処理内容を基準としたモジュールの集合としてオントロジ記述言語OWLを用いて記されている.また,オントロジを構成する各概念間を結ぶ関係には概念間の関連性の大小に応じて重みを付加する.これにより概念同士の関連が定量化でき,「目的層」におけるある1つの要件概念にとって「タスク層」に記述されたどの仕事の概念がより関連深いかを把握することが可能となる.すなわち本システムのオントロジにより共同作業におけるタスクの重要性を把握できる.本研究ではこのオントロジをタスクウエイトオントロジ(TWO)と呼ぶ.  ユーザエージェントは,ユーザが作成したプログラムや製品に関するドキュメントなどの共同作業の成果物に対し検索や形態素解析・構文解析処理をおこない,共同作業に関連する品詞を抽出しこれにメタデータを付加してドキュメントをXML文書化した後,共有サーバ上の管理エージェントへ向け送信する.また,ユーザエージェントはユーザの専門性を表す小規模なオントロジのテンプレートプロファイルオントロジ(PO)を有する.このテンプレートはTWOの「構造層」に基づいて記述されており,抽出されたXML文書のメタデータの種類および出現頻度を概念として付加することで作業者の専門性を表現する.  管理エージェントはユーザエージェントから送信されたXML文書のメタデータを用いてTWOのタスク層を検索しタスク概念とドキュメントを結びつける.その後管理エージェントは,結び付けられたタスク概念と「目的層」における要件概念との距離を概念間をたどることで計測しXML文書の有する重要性としてこれを付加する.さらに管理エージェントはユーザエージェントが作成したPOからユーザの現在の専門性を把握し,これに最も適しておりかつ重要性の高い知識を共有DBから検索して作業者へ送信する.  以上のようにして,本システムでは共同作業に従事する作業者の成果物から動的に知識を抽出・共有し,作業者の専門性に応じた共有知識の自動的かつ最適な提供を実現する. 3.評価と考察  本研究では,抽出・共有すべき知識アーカイブが膨大であり,提案システムを適用することでよりよい製品が開発できる共同作業のモデルとしてオープンソースソフトウェア開発を選択する.そのうえで仮想的なオープンソースソフトウェア開発場として小規模なソフトウェア開発場を設定し提案システムの適用・評価を行なう.  評価は,2つの共同作業グループを設け,そのうち一方にのみ本システムを適用したうえで同一のソフトウェアを開発することで行なう.一定の期限内に作成された成果物とアンケート・テストによる知識レベルの変化について,両グループでの違いを検討し考察する.