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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 1E  センサーネット(1)(MBL)
日時: 2008年7月9日(水) 13:40 - 15:20
部屋: コスモ(1)
座長: 長谷川 輝之 (KDDI研究所)

1E-1 (時間: 13:40 - 14:05)
題名センサネットワークにおける大容量データ通信方式について
著者*高田 悠 (静岡大学大学院情報学研究科), 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院インフォマティクス部門)
Pagepp. 112 - 119
Keywordセンサネットワーク, 大容量データ, 協調
Abstract一般にセンサネットワークにおける観測対象となるのは, 気温, 光, 振動などの比較的データ量の少ない数値データである. しかしこれらのデータに加え, 音声や動画によりさらに高度な観測が可能になると考えられる. だが音声や動画のデータは, 数値データと比較するとデータ量が大きく, データの蓄積が困難であることが考えられる. また, センサネットワークにおける課題のひとつであるノードの省電力化という点においても, 既存の方式ではその実現が困難であることが考えられる. そこで本稿では, 大容量データ蓄積を可能とするCB (Cooperative Buffering)を提案する. CBでは, 複数のノードが協調してデータの蓄積をおこない, 単体のノードではオーバーフローをおこすサイズのデータを扱うことを可能にする. また, 複数のノードが蓄積したデータをシンクが移動して回収することで, ノードの消費電力を削減する. 提案手法の消費電力を定式化し, 既存のマルチホップ送信と比較して, CBが低消費電力であることを示す.

1E-2 (時間: 14:05 - 14:30)
題名ローカライゼーションとルーティングプロトコルの融合手法の提案と評価
著者*曽我 和由 (静岡大学情報学部情報科学科水野研究室), 竹中 友哉 (静岡大学大学院情報学部研究科水野研究室), 峰野 博史 (静岡大学情報学部情報科学科), 徳永 雄一, 寺島 美昭 ((株)三菱電機), 水野 忠則 (静岡大学情報学部情報学研究科)
Pagepp. 120 - 126
Keywordローカライゼーション, OLSR, ルーティング
Abstractセンサネットワークを含む無線マルチホップネットワークにおいて,ノードの位置を推定するローカライゼーションと、ルーティングは重要な技術である.無線マルチホップネットワークではノードの位置はイベントの発生場所を示すため,ローカライゼーション技術はもっともよく議論されている研究テーマのひとつである. また,無線マルチホップネットワーク上での経路制御,ルーティングもよく議論される研究テーマの一つである.  ノードの位置を推定する方法の最も簡単な解決方法のひとつとして,各ノードにGlobal Positioning System (GPS) 受信機を取り付けるという方法が考えられる.GPS などを利用して事前にノードの位置を設定されたノードをアンカーノードと呼ぶ.しかし,すべてのノードにGPS を取り付ける方法は,次の2つの理由により現実的ではない.1 つは,GPSデバイスが各ノードに余分なハードウェアコストを強いるということである.もう1 つは,GPS が屋内などの障害物によってGPS 衛星と通信できないところでは,GPS から位置情報を取得することができないということである.  近年,無線マルチホップネットワークを利用してノードの位置情報を取得する方法に関する多くの研究がおこなわれている.いくつかのローカライゼーション技術では,ノードは指向性アンテナや超音波を利用した特別な測位デバイスをノードに装備させることを想定している.しかし,即位デバイスをノードに装備させることはハードウェアのコストが増加するため,大規模なネットワークに適さない.したがってよりコストのかからない方式が求められる.本研究室では,測位デバイスに頼らない,OLSR プロトコルをベースにしたローカライゼーション(ROULA) を提案している. 今までの研究では,ルーティングプロトコルとローカライゼーションプロトコルは別々に評価されてきた.しかしそれは実環境を想定した場合に,2つのプロトコルを別々に動かすのはオーバヘッドの増加につながる.本研究は,無線マルチホップネットワークのルーティングプロトコルであるOptimized Link State Routing (OLSR) と,ROULA のローカライゼーションとの融合手法の提案と評価である.OLSRにROULAの技術を移植し,ルーティングのバックグラウンドでローカライゼーションをする.実装はNS2-allinone-oolsrで行い,評価をNS2で行う.

1E-3 (時間: 14:30 - 14:55)
題名ワイヤレスセンサネットワークの設計開発支援環境D-sense
著者*森 駿介 (大阪大学大学院情報科学研究科), 梅津 高朗, 廣森 聡仁, 山口 弘純, 東野 輝夫 (大阪大学大学院情報科学研究科,独立行政法人科学技術振興機構, CREST)
Pagepp. 127 - 136
Keywordワイヤレスセンサネットワーク, 統合環境, プロトコル設計, 性能評価支援, 実環境実験
Abstractワイヤレスセンサネットワーク(WSN)は大規模な分散システムであるため,そのプロトコルやアプリケーションの開発においては,従来の分散システム開発にみられる課題が生じる.また,ネットワーク性能や処理性能に制約があるセンサノードからなるWSN 特有の課題も生じる.例えば,開発者は高レベルでのアルゴリズム設計後は低レベルのセンサーノードへのコーディングを強いられることになる.また大規模であることからテストベッドを構築することも容易でなく,性能分析や評価が困難である.さらに,維持管理には多数のノードを操作する必要性も生じる.そこで本稿ではWSN プロトコル開発におけるこれらの課題を解決するために,統合開発環境D-sense を提案し,その開発を行う.D-sense では,アルゴリズムレベルでプロトコルを記述できるAPI を提供することで,NesCなどの低レベル言語による実装に要する労力を抑える.それらのAPI を用いて書かれたNesC のプログラムコードをシミュレータ用のコードに変換する機能を提供することで,シミュレーション実験に伴う実装の労力を抑える.また,WSN アプリケーションのモニタリング,ロギング,デバッグといった有用な機能も提供する.我々は既存の著名ないくつかのプロトコルを実装し,シミュレーションと実環境で性能評価を行うことで,D-sense の機能の利便性を示した.

1E-4 (時間: 14:55 - 15:20)
題名自然観測のためのセンサネットワーク構築方式について
著者*高橋 慶太, 萬代 雅希 (静岡大学情報学部), 渡辺 尚 (静岡大学創造科学技術大学院)
Pagepp. 137 - 144
Keywordセンサネットワーク, 環境, サステナビリティ
Abstract無線センサネットワークは, 有線の固定インフラを利用せずに観測データを取得できるため幅広い応用が期待されている. その一つとして, 温室効果ガスの発生量などを観測する自然環境観測応用がある. 一般的に, 自然環境観測のための環境センサネットワークでは, 長期にわたる観測を可能にするために, ノードの回収, 交換などのメンテナンスが必要となる. その際, 自然環境への影響を小さくするよう考慮する必要がある. 本稿では, まず環境センサネットワークにおける自然量と環境への影響度を定義する. そして, 影響度を小さくするセンサネットワーク構築方式の一つとしてLess Impact area(LI-area)集中ルーティングプロトコルを提案する. LI-area集中ルーティングは, 自然量が極端に減少した領域を敢えて集中的に利用し全体の影響度を小さくする方式である. 評価の結果, LI-area集中ルーティングは最短経路ルーティングに対して影響度を30%程度小さくできることを示す.