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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 3B  教育(GN)
日時: 2008年7月9日(水) 17:20 - 19:30
部屋: ベガ
座長: 國藤 進 (北陸先端大)

3B-1 (時間: 17:20 - 17:45)
題名プログラミング演習における状況適応型指導者補助システム
著者*片桐 由裕, 山本 大介, 高橋 直久 (名古屋工業大学大学院工学研究科)
Pagepp. 520 - 527
Keywordコンテクストアウェアネス, 遠隔教育, 位置情報システム, RFID
Abstract本稿では,指導者の演習に関する状況に応じた指導者補助システムを提案し, その実現法について述べる.はじめに,指導者の演習に関する状況を認識する機能を実現する.演習室内の指導者の位置情報,指導者の近辺にいる受講者との位置関係,指導者の直近にいる受講者の演習状況,過去の指導情報などを認識する.これにより以下の3つの機能の実現を可能とする. 1)指導者の状況に応じて,演習室全体から指導対象となる受講者を提示する機能. 2)指導者の直近にいる受講者が提出した答案から,その答案の誤り箇所や過去に提出した答案との差分などを算出する機能. 3)指導者が受講者を指導する際に,受講差の答案の誤りに対して図やコメントを書き,それをデータ化,保存,再演する機能. また,提案システムのプロトタイプを開発し,演習に適用した.その結果に関するアンケート評価によって提案システムは指導者を補助する上で有効であることを確認した.

3B-2 (時間: 17:45 - 18:10)
題名アセンブラプログラミング演習システムのための命令系列によるプログラム分類機能の実現法
著者*吉田 裕一, 山本 大介, 高橋 直久 (名古屋工業大学大学院工学研究科)
Pagepp. 528 - 536
Keyword遠隔教育, E-Learning, アセンブラ, 連想検索
Abstract本稿では,類似のまとまった処理を行う一連の命令系列を持つ答案プログラムの集合を検索して,その結果をデータベース化するプログラム分類機能を提案する.一般にプログラミング演習では受講者数に比べて指導者数が少ない場合が多い.そのため,誤りや冗長な箇所を抽出して各受講者にそれぞれ指摘することは難しい.そこで我々は,誤りや冗長な箇所が似ているプログラムをまとめ,それらのプログラムを提出した複数の受講者に対してまとめて指導できるようにするシステムの実現を目指している.本稿では,関数の開始処理や引数の読み出し処理などまとまった処理を行う一連の命令系列をチャンクと呼ぶ.提案機能は次の2点の特徴を有する.(1)プログラムを入力すると,あらかじめシステム管理者によって定義されたチャンク条件に従ってプログラムをチャンクに分解する機能.(2)チャンクおよびそれと類似のチャンクの条件を入力すると,同じチャンクあるいは類似のチャンクを含む答案プログラムの集合を求める機能.これらの機能により,同じような誤りを持つ答案プログラムの集合を発見することができる.そして,それらのプログラムを提出した受講者に対してまとめて指導することが可能となる.

3B-3 (時間: 18:10 - 18:35)
題名多様な媒体からコメントを収集可能な講義支援システム
著者*土井 健司, 平島 大志郎 (創価大学大学院工学研究科), 高木 正則 (創価大学工学部), 望月 雅光 (創価大学経営学部), 勅使河原 可海 (創価大学大学院工学研究科)
Pagepp. 537 - 544
Keywordインタラクション, コメント収集, 講義支援
Abstract1. 研究の背景と目的 近年、ICT(Information and Communication Technology)を活用した講義が増えてきている。ICTを用いる目的の一つに、講義に対する学生のフィードバックを得るというものがあり、これまで様々な研究がなされてきた。しかし、講義を支援する研究が進められる一方で、学生を支援するICT環境は不十分であるといえる。例えば、全ての教室でノートPCやLANの環境が備わっているとは限らない。また、ノートPCを必要とする講義において学生がノートPCを所持していないことや、持ってくることを忘れてしまうことがある。さらに、支援環境が充実していたとしても学生が十分に使いこなすことができないといった問題があり、学生によってコメントを投稿しやすいメディアも異なると考えられる。 そこで、本研究ではPCや携帯端末、紙など多様なメディアからコメントの投稿が可能なシステムを提案する。これにより、本研究では身近に存在するメディアを用いて、学生の参加が容易なコメント収集が可能となるシステムを考える。 2. 学生の意見収集システム 本システムでは、学生から意見の管理、表示を行うために、CollabStickyを用いる。CollabStickyは、プレゼンテーション中に特化したコメント収集システムである。プレゼンテーションのスライドとコメントを統合することで、スライドの特定個所にコメントを投稿することが可能なシステムである。これにより、学生は簡潔にコメントの投稿が可能となり、教師はコメントの内容を容易に理解できるということがあげられる 3. インタラクションを支援する媒介 本システムでは、学生から意見を収集する媒介として、ノートPC、eメール、紙を考えている。本章では、それぞれの媒介と期待する機能について述べる。 (1) ノートPC ノートPCを所有している学生は、Webブラウザを用いて直接CollabStickyを用いることにより、教師が発表を行っているスライドを閲覧しながら、意見を発想した箇所にコメントを投稿することが可能となる。 教師は、講義の合間や終了後にWebブラウザを介してCollabStickyを閲覧することで、学生の各スライドに対する意見や、質問を容易に把握することができる。また、授業後はそれらの意見に対しコメントを返信することが可能である。 (2) 携帯端末 携帯電話では、Webサイトからのコメント入力と、eメールによるコメントの入力を想定している。Webサイトでは、簡易フォームにスライドのページと投稿する場所、コメント内容の入力を行う。 eメールは、主に携帯電話を利用した場合を想定している。現在、大学生のほとんどが携帯電話を所持していることから、携帯を用いてシステムにeメールを送信することでコメント投稿を実現する。学生は、携帯電話からシステムにeメールを送信することでCollabStickyにコメントを送信する。具体的には、題名の場所にスライドページを指定し、本文にコメントの内容を記述する。 (3) 紙 紙メディアによる学生からのコメントの収集は、もっとも一般的な方法である。そこで、従来同様紙メディアによる学生からの意見の収集も行う。 4. 設計方針 上記の機能に基づいて、システムの要求仕様について述べる。本システムの目標として、あらゆるメディアを統合的に用いることができると考える。 4.1. eメールの活用 eメールを送信することでシステムにコメントを反映させるためには、eメールの内容を解析する仕組みが必要である。 4.2. Webサイトにおける簡易入力 Webフォームに入力された項目をDBに入力する仕組みが必要である。 4.3. 紙メディアに対応すること 本研究では、学生から回収した意見を、OCR(Optical Character Reader)などを用いてデジタルデータに変換する。そして、これらのデジタルデータを解析する仕組みが必要である。 これにより、紙と電子メディアのそれぞれが持つ長所を生かすことができると考える。 5. まとめ 本稿では、複数の媒介からコメント可能な同期講義支援システムの提案を行った。本システムを用いることにより、これまでインタラクションが困難とされてきた大規模な講義の支援を特別な設備を用意することなく実現でき、学生から具体的な意見を収集することが可能になると考えられる。そこで、今後は本提案に基づいたシステムの開発及び評価を行う。

3B-4 (時間: 18:35 - 19:00)
題名仮想Linux環境を用いたネットワーク教育システムにおける通信可視化機能とネットワーク保存・再現機能の開発
著者*上田 拓実 (近畿大学大学院総合理工学研究科), 井口 信和 (近畿大学理工学部情報学科), 島村 博 (株式会社イーラボ・エクスペリエンス)
Pagepp. 545 - 552
Keyword情報技術者教育, 分散システム運用・管理, 仮想Linux環境, ネットワーク学習
Abstract本研究は,仮想Linux 環境であるUser Mode Linuxによる仮想的なネットワークを用いて,1台のPC 上でネットワークの構築手順やトラブルシューティングについて学習するシステムe-Netlab(以下,本システム)の開発を目的とする.本システムを使用することで,ネットワークの構成要素に対する深い理解と,ネットワークの構築経験による知識の定着が可能となる.仮想環境を利用することで,実機では実現が困難な課題を手軽に実習することができる.さらに,実機による学習では機器が故障した場合の復旧作業が指導者にとって作業負担となるが,仮想環境の利用により,指導者の負担の軽減が可能となる.また,GUIによる操作環境を用いることで,実機に近い操作性を学習者に提供できる. 従来のネットワーク学習の形態として,実機による実習と書籍やWeb資料による学習が挙げられる.実機による実習では,ネットワークの構築経験による実践的な知識が身に付くため教育効果が高い.しかし,機器の購入費用や設置場所の確保が困難な場合,学習者に対して十分な数の機器を用意することは難しい.また,トラブルシューティングの学習には,何らかの障害や誤った設定を含むネットワーク機器を用意しなければならない.しかし,ネットワークにおける故障や障害は多種多様であり,そのすべての事例を実機によって再現することは困難である.書籍やWeb資料による学習では,通信プロトコルの仕様や通信の処理手順に関する知識が身に付く.しかし,実機の操作を伴わない学習であることや,例として用いられるネットワークの構成が固定であることから,学習内容がパターン化し実践的なスキルを習得できないといった問題がある. そこで本研究では,User Mode Linux(以下,UML)を用いて,1台のPC 上に仮想的なネットワークを構築することで,通信プロトコルや通信の処理手順を学習するシステムを開発した.本システムは,仮想ネットワーク構築支援GUIを実装しており,マウスやキーボードによる直感的な操作によって仮想ネットワークを構築できる.仮想ネットワーク構築支援GUIには,仮想ネットワークのトポロジや仮想ネットワークを構成する機器の設定が一覧表示される.さらに,通信の可視化機能とネットワークの保存・再現機能を実装した. 本システムで利用可能な仮想ネットワーク機器は,クライアントやサーバとなるホスト,およびルータとレイヤ2スイッチである.仮想ルータでは,静的ルーティングとRIP,OSPF,BGP4による動的ルーティングが可能である.また,仮想スイッチでは,VLAN(Virtual LAN)とSTP(Spanning Tree Protocol)の設定が可能である. 通信の可視化機能は,通信ログ表示機能とアニメーション機能からなる.ネットワーク学習では,構築経験を重ねることで知識と理論が定着し,高い学習効果につながる.本システムは,ネットワークの構築経験による知識の定着のため,学習者が構築したネットワークを教材としても利用可能とする.学習者自身が構築したネットワークにおいて,機器間でやりとりされるパケットの情報や,ルータやスイッチによって経路選択される様子を視覚的に確認することで,知識と構築経験をより深く結びつけることが可能となる. 通信ログ表示機能は,任意の仮想ネットワーク機器のインタフェースを通過したパケットを一覧表示し,選択されたパケットの情報をプロトコルの仕様と合わせて表示する機能である.本稿では,機器間でやりとりされるデータを総称してパケットと呼ぶ. アニメーション機能は,機器間の通信を視覚的に把握するための機能である.プロトコル名が付記されたアイコン画像でパケットを表現し,ネットワーク図上を移動させることで,通信経路を視覚的に提示する.また,各ネットワーク機器を通過する際にパケットの情報をダイアログ表示する機能も備えている.この機能により,パケットの伝送経路と宛先情報の変化を把握できる. ネットワーク保存機能は,仮想ネットワーク機器の設定やネットワークのトポロジを,XML(eXtensible Markup Language)で記述したファイルとして保存する機能である.本稿では,このファイルをネットワーク定義ファイルと呼ぶ.ネットワーク再現機能は,ネットワーク定義ファイルを読み込み,仮想ネットワークを再現する機能である.この機能により,本システムを用いた学習の中断・再開が可能となる. ネットワーク保存・再現機能の用途としてトラブルシューティングの学習が挙げられる. 指導者が予め用意した障害情報を含むネットワーク定義ファイルから,トラブルシューティングの学習課題となる仮想ネットワークを本システム上に再現する.学習者は,発生している障害の原因を特定し,対策の検討・実施によりトラブルシューティングについて学習する. 近畿大学では,実機によるネットワーク学習の場としてシスコネットワーキングアカデミーを開講している.シスコネットワーキングアカデミーの課題を用いて,本システムの評価実験を実施した.被験者はシスコネットワーキングアカデミーの受講生である.実験後に実施したアンケートにより,実機に近い操作感,通信経路やパケットの情報が確認できることから,本システムがネットワーク学習に有効であるという結果が得られた.

3B-5 (時間: 19:00 - 19:25)
題名泡メタファーを用いた子供向けWeb提示手法について
著者*岩田 麻佑 (大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科), 荒瀬 由紀, 原 隆浩, 西尾 章治郎 (大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻)
Pagepp. 553 - 560
Keywordインターネット, WEB, ブラウザ, WEBページ提示, 泡メタファー
Abstractインターネットが爆発的に普及し,小さな子どもがインターネットを使用することが当たり前になっている.しかし,Webページをそのまま提示する現在のWebブラウザの表示形式は,初めてインターネットに触れる小さな子供にとっては面白みのないものであり,新聞のように文字が密集したページを子供が楽しく閲覧できるとは考えにくい.また,インターネット上には子どもにとって有害な情報が溢れており,安全にWeb閲覧できる状態にあるとはいえない.そこで本稿では,泡メタファーを用いたWebページ提示手法について述べる.Webページ中の各コンテンツを海中の泡で表し,Web閲覧にエンタテイメント性を持たせることで,初めてWebに触れる子供が楽しくインターネットを利用することを可能とする.更に,有害なコンテンツはアニメーションにより排除することで,子どもが安全にWeb閲覧できるようにする.