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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 5B  Web DB(GN)
日時: 2008年7月10日(木) 10:20 - 12:00
部屋: ベガ
座長: 市川 裕介 (NTT)

5B-1 (時間: 10:20 - 10:45)
題名RSSを情報源とする書籍データベースの提案
著者*勝井 美沙緒 (神奈川工科大学大学院工学研究科情報工学専攻), 服部 哲 (神奈川工科大学情報学部情報メディア学科), 速水 治夫 (神奈川工科大学大学院工学研究科情報工学専攻)
Pagepp. 1023 - 1029
KeywordRSS, データベース, 新刊情報, 書籍管理
Abstract1.はじめに 電子書籍市場が拡大しつつある現在でも,紙媒体である書籍の需要は未だ高い.しかし書籍は冊数が増えると書籍名や巻数などの情報の管理・把握が困難になる.自分の蔵書についてきちんと管理・把握できれば,重複購入などのトラブルを避けることができる. また,インターネットが普及している現在では,数多くのネット書店が存在する.このような書店が配信する書籍情報や個人がブログなどで公開する書評のほか,新刊情報をRSSで配信する出版社も存在するなど,書店店頭や新聞・雑誌の書評の他にWeb上にも書籍についての情報は多い.しかし,それらを参考情報として利用したり,ネット書店で書籍を購入するなど,書籍購入時に参考にする情報や購入手段自体でインターネットを活用している人は少ない.これらWeb上の書店や情報を活用することで,購入手段や情報の幅を広げることができる. そこで,RSSを新刊書籍の情報源とすることでインターネットを活用しつつ,新刊と蔵書,さらに購入予定の書籍を一括管理できる書籍管理システムを提案する. 2.機能 本システムはユーザの書籍管理の支援を目的として次のような機能を備えている. ・RSSを情報源とする新刊情報の取得 ・ユーザの手入力による書籍情報の追加 ・語句によるAND検索 ・新刊・購入予定・購入済みの書籍情報をリスト表示 ・書籍情報のリスト間移動,削除 ・備考編集 ・現在情報源とするRSSの一覧表示 ・情報源の編集 これらの機能をID,パスワードによってユーザごとに管理する. 3.システム概要 本システムはApache,PHP,MySQLを用いて作成したWebアプリケーションである.RSS解析にはMagpieRSSを使用した. トップページからID,パスワードでログインし,メニューからリストなどのページへと移動する. リストページでは各リストの表示と共に,リストごとに語句による検索が行える.検索方式はAND検索である.リストは発売日の新しい順に書籍のタイトルや内容,出版社などが表形式で表示される.タイトルとRSS名はリンクになっており,それぞれRSSに記載されたWebページ(タイトルはその書籍の情報ページ,RSS名はそのRSS配信元のWebサイトなど)にリンクしている. 書籍情報を新しく追加する場合は,新刊情報ではRSSによって取得(A情報とする)し,マイリスト・プレリストでは書籍情報追加ページからユーザが手入力(B情報とする)で行う.A情報は新刊情報リストにまず表示される.このリスト中の書籍情報で購入予定のものがあればプレリストへ,既に所持しているものがあればマイリストへ移動できる.移動されなかったもののうち,発売日から2ヶ月以上経過した情報は新刊情報リストには表示されなくなる.B情報は入力時にプレリストとマイリストのどちらに情報を追加するか選択する. 追加された情報は新刊情報リストからマイリスト・プレリスト,またはマイリスト・プレリスト間で移動可能である.一度マイリスト・プレリストに移動(追加)された情報は新刊情報リストには移動できない.マイリスト・プレリストでは,リスト移動の他に備考の編集と情報の削除が可能である.備考は新刊情報リストに表示される内容とは違い,ユーザが自由に記入・編集が行える.備考の内容はそのリストを作成したユーザのみが閲覧でき,他のユーザには公開されない.情報の削除は,今後どのリストにもその書籍情報を表示させないようにする処理である. RSSについてはRSS情報ページで確認できる.ここでは,現在情報源としているRSSを一覧表示しているほか,登録されているRSSからユーザが新刊情報として取得するRSSをジャンル・出版社などで選択できる.また,システム既存のRSSの他にユーザが自由に取得したいRSSを追加することも可能である.出版社が公式に配信しているRSSはまだ少数であるが,ユーザがRSSを追加できることでネット書店の新入荷情報などよりユーザの求める情報を管理することが可能である. 4.まとめ 評価実験より,本システムは書籍管理と言う面においては有効であるとの評価を得ている一方で,ユーザの好みに合う情報の提示が求められていることがわかった.そこでまず,より多くの情報を利用するために情報源であるRSSの追加・編集機能の強化を行った.これにより,ただの「新刊情報」ではなく,「ユーザが興味のある新刊情報」を提示することによってより使いやすさの向上を目指した. 今後は書評の利用など,書籍に関連した情報を活用し,システムの強化を行う.

5B-2 (時間: 10:45 - 11:10)
題名医療分野を対象とした多言語用例対訳収集WebシステムTackPadの開発
著者*福島 拓, 宮部 真衣 (和歌山大学大学院システム工学研究科), 吉野 孝 (和歌山大学システム工学部), 重野 亜久里 (NPO多文化共生センターきょうと)
Pagepp. 1030 - 1036
KeywordWWWの応用サービス, コーパス・言語資源, 医療支援, 多言語, 用例対訳
Abstract医療従事者や外国人患者の支援を対象とした,多言語用例対訳収集WebシステムTackPadの開発を行った. 現在,在日外国人や訪日外国人は増加しているが日本語を理解できない外国人への支援は十分ではない.特に医療の分野ではコミュニケーション不足による医療ミスの懸念がある.また,医療通訳者による支援にも限界がある. そこで,正確な用例対訳群の収集・提供により医療分野の支援を行うシステムの構築を行った.本稿では,多言語用例対訳収集WebシステムTackPadの設計及びシステムの試用実験の結果を述べる.

5B-3 (時間: 11:10 - 11:35)
題名音楽情報サイトからキーワードを自動取得するWeb楽曲データベースの提案
著者*服部 哲 (神奈川工科大学情報学部情報メディア学科), 小林 直矢 (株式会社NSコンピュータサービス), 速水 治夫 (神奈川工科大学情報学部情報メディア学科)
Pagepp. 1037 - 1040
Keyword音楽情報サイト, 楽曲情報, Webデータベースシステム, 形態素解析, キーワード自動取得
Abstract 近年,パソコンに楽曲を保存し,音楽再生ソフトを使用して音楽を聴くユーザが増加している.パソコンで音楽を聴く場合,ユーザは楽曲のリスト(プレイリスト)を作成することが多い.しかし,アーティストやアルバムからプレイリストを作成すると,プレイリストが単調になりやすい.  そのため,ユーザ同士で楽曲にキーワードを付与しあい,ユーザの嗜好にあわせて楽曲を推薦するシステムが研究・開発されている.しかし,ユーザ参加によるキーワードの付与はユーザに手間がかかる.音楽再生ソフトの操作履歴を利用する提案もあるが,長期使用によりデータを蓄積しなければならず,新しい楽曲について推薦すべきかどうかを判断することは困難である.  本研究では,Web上に多数存在する音楽情報サイトや音楽コミュニティサイトに注目し,それらのWebサイトからダイナミックに楽曲に対するキーワードを取得し,ユーザが所有する楽曲に付与するシステムを提案する.これにより多様な視点からのプレイリスト作成を支援する.  本システムはWebデータベースシステムである.ユーザはブラウザに表示される3つのリスト画面を通じて楽曲情報の登録やプレイリスト作成などを行う.サーバは,楽曲の基本情報とキーワードを蓄積する楽曲情報データベース,楽曲情報の登録・検索などを行う楽曲情報管理部,音楽情報サイトから楽曲のキーワードを取得しデータベースに登録するキーワード取得部から構成される. システムの流れは次のとおりである.  (1)ユーザはブラウザを使用してサーバにアクセスしログインする.  (2)ユーザはパソコンに蓄積した楽曲について,楽曲名やアーティスト名などの基本情報をCSVファイルに書き出し,サーバにアップロードする.  (3)楽曲情報管理部がCSVファイルから楽曲の基本情報をデータベースに登録する.  (4)キーワード取得部は登録された楽曲の楽曲名とアーティスト名により音楽情報サイトを検索し,そのサイトで提供されている楽曲コメント文を取得する.  (5)キーワード取得部は楽曲コメント文を形態素解析した結果から不要な語を除去した上で,データベースにキーワードを登録する.  (6)ユーザはキーワードをもとに楽曲を検索し,プレイリストを作成し,プレイリストファイルをダウンロードする. ・楽曲のキーワード取得  キーワード取得では,楽曲名とアーティスト名を使用して音楽情報サイトを検索し,対応するWebページから楽曲コメント文を取り出す.次に,形態素解析を行いキーワード候補を抽出する.キーワード候補は名詞・形容詞・副詞とした.最後に,あらかじめ決めておいた不要語をキーワード候補から除去しデータベースに登録する.数字の羅列などを不要語とした.テレビCMなどタイアップ情報から楽曲名などを知りたいことも多いため,楽曲コメント文を取り出す際,タイアップ情報も取得する. ・楽曲情報の検索とプレイリストの作成  楽曲情報の検索は共有楽曲リスト画面,またはマイ楽曲リスト画面で行う.アーティスト名などによる楽曲情報の検索だけでなく,音楽情報サイトから取得したキーワードを利用した検索も可能であり,同じキーワードを持つ楽曲情報を得ることができる.キーワードは出現頻度が多いほど強調表示される.ユーザがキーワードを手動で追加することも可能であり,その場合,音楽情報サイトから取得したキーワードと区別して管理される.つまり,本システムでは音楽雑誌のライターなど専門家が付与するキーワードと,一般の音楽愛好者が付与するキーワードを同時に閲覧することができる.  マイ楽曲リストから選択することでプレイリストを作成できる.マイプレイリスト画面で作成したプレイリストを編集し,音楽再生ソフトで利用可能な形式でプレイリストをダウンロードすることができる.  本研究では,Apache,MySQL,PHP,MeCab(形態素解析エンジン)を利用して,提案システムを試作した.試作システムでは,音楽情報サイトとして「CDJournal」を利用した.「CDJournal」は有力な音楽雑誌のWebサイトであり,楽曲単位でコメント文を提供しており,他の類似サイトと比べ提供する楽曲数も多い.さらに,アルファベット表記とカタカナ表記など,アーティスト名表記の若干の違いにも対応している.  大学生の協力を得て,本システムで取得した個々のキーワードの適切さ,特定のキーワードによりリストアップされた個々の楽曲の適切さを評価した.その結果,キーワードの取得方法に改良の余地があるものの,聴きたい楽曲のテーマが決まっていれば,プレイリスト作成の支援として効果があるということを確認した.

5B-4 (時間: 11:35 - 12:00)
題名Webを活用した国際会議発表支援のためのナレッジ収集・共有システム
著者*服部 哲, 速水 治夫 (神奈川工科大学情報学部情報メディア学科)
Pagepp. 1041 - 1046
Keywordナレッジ収集・共有, 国際会議発表支援, Web, ワークフロー
Abstract1.研究の背景と目的  国際会議で発表するまでには,論文を作成し投稿する,査読結果を受けて修正し再投稿する,航空券を手配するなど様々な作業(タスク)を実施する必要がある.各作業を実施するためには多くの情報が必要となる.しかし,国際会議の経験が少ない人には分からないことも多いため,各作業で非常に苦労する.  国際会議で発表するまでに必要となる情報は,個人のパソコンにファイルとして存在していたり,Webや書籍から得られたり,研究室のメンバーからメール・電話・対面で得られたりする.そして各作業を実施した結果として新たにファイルが作成されたり,ノウハウが蓄積されたりする.  一連の作業を通じて必要になったり得られた情報・ノウハウなどのナレッジは国際会議での発表経験が少ない人にとってとても役に立つと思われる.そのため,これらのナレッジを研究室内で共有できれば非常に有益であるが,現状は個人的に管理されているだけである.Webページや書籍では国際会議への参加のプロセスなどが説明されていることもあるが,継続的にナレッジを蓄積する環境にはなっていない.  本研究では,国際会議で発表する人,特に発表経験が少ない人を支援するために,発表までの各作業で必要なナレッジをWebや研究室や研究グループのメンバーから収集し共有できるようにする. 2.国際会議発表までの作業と必要情報の分析  国際会議で発表するまでの作業は発表に関連する作業と参加に関連する作業に大きく分類でき,それらの作業にはある程度共通のフローが存在する.筆者らの経験を踏まえ,国際会議で発表するまでの必要作業および必要になった情報をピックアップし,その分類に当てはめて検討した結果,次のようなことが分かった. ・発表に関連するタスクは,英語論文や発表スライド作成とレジストレーションなどの手続きに分かれる.前者では自分で作成した英単語メモなどのファイルを利用することが多い.英単語メモや,成果物である投稿論文などは研究グループ内で共有すると便利である.国際会議発表のための手続きでは,投稿時のフォーム入力内容などを研究室や研究グループを問わず全体で共有すると便利である. ・参加に関連するタスクは,主に旅行の手続きや準備と大学の事務手続きに分けられる.前者ではWebも重要な情報源であるが,口頭発表とポスター発表で知りたい情報が異なることもある.大学の手続きに関するナレッジは研究室全体で共有すると便利であるが,他大学や研究機関の共同研究者と共有する必要はない.さらに,大学の事務手続きはユーザの身分(教員,学生など)によっても異なる. 3.国際会議発表支援のためのナレッジ収集・共有システムの提案  以上の検討を踏まえ,次の4機能を備えたシステムを提案する. (1)作業ナレッジ管理機能  作業を実施するとノウハウなどが得られるので,ユーザの入力により,作業単位でメモや成果物などのナレッジを収集する.収集したナレッジは研究室内で共有,研究グループ内で共有というレベルに分けて管理され,ユーザに応じて提供する.また,ナレッジに対して別のナレッジを追加したり,自身で入力したナレッジに簡単にアクセスできるようにもする. (2)Webからの情報収集支援機能  国際会議では,開催地や会場,スケジュールが初めにわかる.その後,航空券やホテルの手配など作業が進行すると経由地や宿泊先も明らかになってくる.そこで,広く共通的なユニバーサルブックマークを用意しておき,作業が進むにつれ,手配したホテルへのリンクを追加したり,開催地や経由地の空港へのリンクに変更したりして,ユーザ向けにユニバーサルブックマークをカスタマイズして提示する.Webページはダイナミックなものなので,カスタマイズされたブックマーク先の更新をチェックし,新着情報があればユーザに提示する.さらに,収集すべき情報の一覧や,そのために検索エンジンに入力するキーワードも支援情報として提供する. (3)ワークフローの管理機能  国際会議までの作業は所属する研究機関の違いなどにより相違がある.そのため,基本的なフロー(基本フロー)と組織などに固有のフロー(追加フロー)を管理し,ユーザ情報を利用し基本フローと追加フローから個別フローを生成する.基本フローと追加フローの定義にはXMLを使用する.国際会議は開催地やスケジュールなどが決まっている.これらをユーザが入力すると個別フローを提示する.これによりWebからの情報収集支援機能も起動されサポートを開始する. (4)ユーザ管理機能  ユーザ情報として,所属組織,身分,所属する研究グループなどを管理する.さらに,参加予定の国際会議,宿泊先,経路なども管理する.  今後は,これらの機能の詳細設計を行い,システムの実装・検証を実施する.