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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 6B  チャット・掲示板(GN)
日時: 2008年7月10日(木) 13:50 - 16:00
部屋: ベガ
座長: 大平 雅雄 (奈良先端大)

6B-1 (時間: 13:50 - 14:15)
題名リアルタイム遠隔コミュニケーションにおける対人許容レスポンス時間の評価
著者*宮部 真衣 (和歌山大学大学院システム工学研究科), 吉野 孝 (和歌山大学システム工学部)
Pagepp. 1276 - 1283
Keyword協調基礎, コミュニケーション支援, リアルタイム遠隔コミュニケーション, レスポンス時間, アウェアネス情報
Abstract近年,世界規模のインターネットの普及により,ネットワークを介したコミュニケーションの機会が増加し,電子メール,掲示板,チャットなどの様々なツールが利用されている.コンピュータを介したテキストベースのコミュニケーションでは,メッセージを入力,作成する必要がある.しかし,メッセージ作成の長時間化は,円滑なコミュニケーションを妨げる.この問題が顕著となるのが,リアルタイムコミュニケーションである.コミュニケーションを円滑に行うためには,相手が許容できる時間内にメッセージ作成を終える必要がある.これまでに,システムの応答時間に関する人間の許容レスポンス時間については明らかにされている.しかし,システムを介した対人リアルタイムコミュニケーションにおいて,相手の応答をどれだけ待つことができるのかについては明らかにされていない.本研究では,リアルタイム遠隔コミュニケーションにおける対人許容レスポンス時間の評価を行う.評価実験より,以下の知見を得た. (1)対人許容レスポンス時間は,平均で1分51秒であった. (2)対話の序盤においてアウェアネス情報を提示するという条件下において,対人許容レスポンス時間は平均2分35秒であり, アウェアネス情報の提示により,対人許容レスポンス時間が長くなる可能性が高い. (3)対話の経過時間は,対人許容レスポンス時間に対して大きな影響を及ぼさない可能性が高い.

6B-2 (時間: 14:15 - 14:40)
題名機械翻訳テキストおよび画像の注釈を用いた異文化間コミュニケーション支援の効果
著者*吉野 孝 (和歌山大学システム工学部/情報通信研究機構言語グリッドプロジェクト), 藤井 薫和 (和歌山大学大学院システム工学研究科), 重信 智宏 (情報通信研究機構言語グリッドプロジェクト)
Pagepp. 1284 - 1293
Keywordコミュニケーション支援, 協調基礎 , 機械翻訳, 異文化, アノテーション
Abstract異文化間コミュニケーションにおいては,言語や文化の違いは大きな障壁である.とくに文化の違いを克服するための方法として,本研究では,意味情報の共有に着目し,語句へのアノテーション(注釈)付与機能を持つチャットシステムを提案する.チャット中に手動でアノテーションを付与することは,ユーザの負担が大きくなることから,自動的にチャットメッセージからアノテーション付与語句を抽出し,アノテーションコンテンツとなる画像および文章をWebから自動獲得するシステムを開発した.開発したシステムを,日本人学生と外国人留学生の間での異文化間コミュニケーションに適用し,提案手法の評価を行ったところ,以下の評価を得た.(1) アノテーションの語句について,話し手と聞き手の付与に関する意見が一致する対象は,文化独特の事象を表す語句であった.また,話し手と聞き手の付与に関する意見が一致しない語句について,それぞれの文化で多様なイメージがある場合,両者でイメージを共有するためにアノテーションが重要な役割を果たすと推測される.(2) 自動獲得機能で得られるアノテーションコンテンツは,画像に関しては現在の手法がおおむね良好な評価を得たが,文章に関しては翻訳精度が影響するため,対案として提案した``受信者側の言語で作られたコンテンツ''が最も高い評価を受けており,自動獲得の精度向上に対する改良の余地がある.

6B-3 (時間: 14:40 - 15:05)
題名絵文字チャットコミュニケータIIの開発と適用
著者福田 太郎, Binti Mohd Yatid Moonyati , 橋崎 裕人, 伊藤 淳子, *宗森 純 (和歌山大学システム工学部)
Pagepp. 1294 - 1301
Keyword絵文字, チャット, 異文化コミュニケーション, PC, 履歴タブ
Abstract  1.はじめに  現在、チャットやインスタントメッセージといったテキスト形式でのコミュニケーションが普及している。しかし、言語の異なる人同士においてテキスト形式での会話は言語の違いが壁となる。また、習得するにも時間が掛かり手軽にできるものではない。そこで感情や微妙なニュアンスを伝えることのできる絵文字に注目した。絵文字はテキスト形式での会話を行う場合、主にテキストでは伝えきれないニュアンス等の補足や感情の強調といった、あくまで補助的な役割で使用される。しかし、本システムでは絵文字のみでのコミュニケーションの実現を目指した。絵文字の場合、その絵が何を表しているか知っていればコミュニケーションをとることは可能だと考えた。今回作成した絵文字チャットコミュニケータ?は「どのように文章を作ってよいかわからない」や「目的の絵文字を探すのに時間が掛かる」といった既存のシステムの問題点を履歴タブの作成、入力フィールドでの絵文字の削除方法の変更、過去の会話からの予測入力という方法での解決を目指す。これにより目的の絵文字を探し、文章を作成する時間の短縮や円滑に会話が進めることを目標にした。また、本システムは異なる言語の人同士のコミュニケーションを考えているので、基本的にテキストを一切用いないものを目指す。 2.絵文字チャットコミュニケータII  本システムの概要を示す。 (1)VAIO type U上での実行  本システムはSONYのVAIO type UのVGN-UX90PS上で実行させるためにいくつかの特徴がある。画面を直接タッチして操作するので、押し間違えが起こりにくいよう、本システムの絵文字の大きさを54px×54px、VAIO-U上で約5mm×5mmで表示されるようにした。また、キーボードが小さくキーが押しにくいためキー入力をしない設計とした。 (2)絵文字の種類  絵文字は550種類用いた. (3)絵文字の選択方法  絵文字選択画面では、タブによりどこにどの絵文字があるか分かりやすいように分類し、また最近使用した絵文字を選択できるタブ(履歴タブ)を作成した。 (4)絵文字の追加方法  チャットはスムーズにメッセージを入力し、情報交換できることが重要である。そのためにVAIO-Uの特徴であるタッチパネルを利用し絵文字を直接クリックすることで選択できることで また、絵文字の削除もより直感的に行えるよう考慮した。 3.実験  被験者の組み合わせは、留学生(中国人2名,マレイシア人1名,インドネシア人1名)と日本人学生の4組で行った。実験前に被験者には絵文字の追加や消去などシステムの使い方のみ説明し、絵文字の意味については説明していない。実験はLANで結ばれた2台のPCを用いて30分間行った。実験終了後、被験者には自分の発言と相手の発言について全て意味を書き留めていってもらった。  30分間で入力された絵文字の行数は平均29行(36行,23行,13行,42行)である。また,理解度の平均は83%(79%,94%,70%,88%)である.履歴タブの使用は平均24%(21%,30%,9%,36%)であった。  履歴タブの使われ方を考察する。履歴タブは、直前の相手の内容や相手のアイコン、「?」といった良く使われるものを選択するのに非常に有効だったと考えられる。特に普段行わない絵文字の会話においては、「○○は好きですか?」といった簡単なやりとりが会話のきっかけに使用されることが多いことから、絵文字では「?」や「ハート」が使われることが多い。このように質問や同じような話題が続く実験では履歴タブの使用が増えたと、割合から考えられる。また、相手の発言の意味が理解できずに聞き返すといった場合にも有効であると考えられる。絵文字を入力した個数と履歴タブの使用頻度から、絵文字を多く入力した被験者の方が履歴タブを多く使用しているという結果となったが、履歴タブ表示されている絵文字を必ずしも履歴タブから選んでいるというわけでもないこともわかった。 4.おわりに  適用実験で得た絵文字の入力個数と履歴タブの使用頻度、実験後のアンケートの結果から以下のことが分かった。 (1)30分で入力された文章が平均29行となった。 (2)平均の理解度が83%となった。 (3)履歴タブは入力された絵文字の中で、平均24%使用された。 (4)履歴タブは絵文字の行数が増えてくると使用頻度が高くなる。 (5)使いやすくするためには、カテゴリ分けと絵文字の整理が必要である。  今後は実験結果を踏まえてシステムを改良するとともに、外国等で実験を行い、その効果を検証する。

6B-4 (時間: 15:05 - 15:30)
題名対話フレーズによる検索情報を自動付与するチャットシステム「GaChat」
著者*堀口 悟史 (慶応義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻), 井上 亮文, 星 徹 (東京工科大学 コンピュータサイエンス学部), 岡田 謙一 (慶応義塾大学理工学部 情報工学科)
Pagepp. 1302 - 1307
Keywordチャット, インスタントメッセンジャー, テキストコミュニケーション
Abstractテキストチャットは手軽に利用されている。 しかし会話のニュアンスや相手の理解度が伝わらないため、冗長な やりとりが発生しがちである。 本論文ではチャットの会話内容に関連する情報を会話テキストに同 期表示させるシステム「GaChat」を提案する。 GaChatでは会話テキストを解析し、その中の固有名詞に対してオン ラインの画像情報と百科事典の記事情報を付与して表示する。 任意の語句に対する意味を明示的に固定・統一することで、未知の 用語に対する検索活動や知識すりあわせといった冗長なコミュニケーションの 削減が期待できる。 本稿ではプロトタイプの実装と最初の基礎的評価について述べる。

6B-5 (時間: 15:30 - 15:55)
題名ネット掲示板の議論の盛り上がりと参照関係の可視化
著者*塩澤 秀和, 中山 博文 (玉川大学工学部)
Pagepp. 1308 - 1315
Keywordネット掲示板, 情報可視化, ネットワークサービス, 2ちゃんねる
Abstract【1 はじめに】 インターネットにおける掲示板サイトは日本においては特に盛んであり、日々膨大な情報がやり取りされている。このようなネット掲示板は、玉石混交の情報が飛び交っているが、多くの人が議論に参加し議論が盛り上がっている状態には、価値のある情報が含まれている可能性が高いと考えられる。しかし、通常の掲示板のインタフェースでは、メッセージを順々に読んで議論の盛り上がっている状態を探し出すのは非常に時間がかかる。そこで、本研究ではネット掲示板の議論の盛り上がりとメッセージの参照関係を可視化するソフトウェアを提案する。 現在のところ試作したソフトウェアは、日本最大(おそらく世界最大)の掲示板サイトである「2ちゃんねる」を対象としている。2ちゃんねるは様々な話題を扱う多数の掲示板の集合である。各掲示板には議論のテーマごとにスレッドが作られ、各スレッドにはユーザから投稿されたメッセージが1から最大1000までシーケンシャルに表示される。 【2 関連研究】 ネット掲示板の盛り上がりについては、2ちゃんねるのログを分析した松村ら[1]の研究がある。松村らは2ちゃんねるの全掲示板のデータを収集し、1メッセージあたりのサイズ、1スレッドあたりのメッセージ数、1メッセージあたりの返信数、1スレッドあたりのアスキーアート(文字絵)のサイズ、などの8つの指標によって定量化し、2ちゃんねるの各カテゴリの傾向を定量的にモデル化した。 また、ネット掲示板のスレッドごとの議論の盛り上がりを可視化するソフトウェアには、2ちゃんねる型掲示板用のブラウザV2C[2]がある。V2Cは、横軸を時間、縦軸を累積メッセージ数として、スレッドを折れ線グラフでプロットする。このグラフでは、傾きが単位時間あたりのメッセージ数(スレッドの“勢い”)を表すことになる。 ネット掲示板とは直接関係ないが、本研究で参考にしたものに、Thread Arcs[3]がある。これはシーケンシャルに並んだメッセージの関係を可視化する手法であり、個人のメールボックスの中の電子メールの返信関係を可視化する手法として提案された。これは、メッセージの返信元と返信先を弧(半円)でつなぐことによって、ツリー表示などの2次元的な配置を用いずに、1次元配置のままでメッセージの返信関係を可視化するものである。 【3 試作したソフトウェア】 本研究では2章で紹介した研究を参考にして、ネット掲示板の議論の盛り上がりとメッセージの参照関係を可視化するソフトウェアを試作した。基本的な表示としては、横軸を時間、縦軸を書きこみ数としたグラフによる可視化を用いた。これはV2Cと同様である。これにより、グラフの傾きが議論の盛り上がりを表すことになり、傾きが大きければ議論が盛り上がっている状態、傾きが小さければ議論が盛り上がっていない状態を表すことになる。 また、個々のメッセージの情報量の目安を示すため、各メッセージの全文字数と、同じく記号を除いた文字数を、グラフ上のプロット位置から上に伸びる小さな棒グラフで示した。全文字数と記号を除いた文字数の差は、多くの場合アスキーアートと呼ばれる文字絵の部分を示すことになる。松村らは辞書を用いてアスキーアートをメッセージサイズから除去しているが、メッセージごとの可視化としては本手法で十分であろう。 さらに、このグラフ上でThread Arcsの手法を応用し、メッセージの返信関係を返信先と返信元を結ぶ半円の弧で表示することにより、対話的な議論の盛り上がりの様子が分かるようにした。Thread Arcsは1次元上に配置できる手法であるため、折れ線グラフ上に付加的な情報としてプロット点同士のつながりを可視化することが可能になった。上述のメッセージの文字数の可視化と重ならないように、弧は折れ線グラフの下側に表示する。 また、スレッドごとの経過表示では盛り上がりの分析に限界があると考え、1日のそれぞれの時間帯における掲示板サイト全体の平均メッセージ数(≒アクセス人口)を取得して、個々のスレッドと比較表示することも行った。このために、数週間にわたり2ちゃんねるのデータを約20GB収集し、1スレッドあたりの10分間での平均メッセージ数を算出した。 【参考文献】 [1] 松村真宏他: 2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズム, 情報処理学会論文誌 Vol.45, No.3, pp. 1053-1061, 2004年3月. [2] n|a氏: Java+Swingによる2chブラウザV2C, http://v2c.s50.xrea.com/, 2004年3月〜. [3] B. Kerr: THREAD ARCS: An Email Thread Visualization, Proc. IEEE InfoVis 2003, pp. 211-218, 2003.