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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 6E  アドホックネットワーク経路構築(MBL)
日時: 2008年7月10日(木) 13:50 - 16:00
部屋: コスモ(1)
座長: 藤野 信次 (富士通研)

6E-1 (時間: 13:50 - 14:15)
題名DHTによる高信頼アドホックルーティングプロトコルの提案
著者*鳴海 寛之 (公立はこだて未来大学大学院), 高橋 修 (公立はこだて未来大学)
Pagepp. 1386 - 1393
Keywordアドホックルーティング, DHT, オーバレイルーティング, 信頼性
Abstract 近年,無線通信技術の発達と移動無先端末(ノード)の小型化・高性能化に伴い,モバイルアドホックネットワーク(MANET)に関する研究が活発に行われている.MANETは,基地局などの既存インフラに依存せずにノードが即席で形成する自立分散型のネットワークである.MANETではマルチホップ通信と呼ばれる通信方式を採用しており,通信経路上に位置するノード(中継ノード)がデータを転送することによってエンド−エンド間の通信が実現される.MANETにおけるルーティングプロトコルの代表的なものとして,リアクティブ型と呼ばれるプロトコルがある.本研究では基礎シミュレーション実験を通して,通信密度およびノード移動頻度の高いネットワーク環境ではリアクティブ型プロトコルの経路構築特性がデータ転送に悪影響を及ぼし,データ到達率が低下するという結果を得た.この結果をさらに分析することで,ノード密度の高い環境においてエンド-エンド間の通信経路が長経路となった場合,その経路の構築を行うために周囲のノードが一斉に制御メッセージを送信することによって大規模な混信状態が発生してしまい,その結果経路構築に失敗し送信元ノードがデータパケットを送信キューからドロップしてしまうことが,データ到達率の低下を招く主要因であるという結論を得た.同様の理由によって,従来のリアクティブ型のルーティングプロトコルは,高移動頻度のネットワークにおいて複数のノードが同時に通信を行うと,データ到達率が著しく低下する.このように,リアクティブ型プロトコルによる長経路通信はネットワークに大きな負荷を与えてしまう.  そこで本研究では,長経路通信を複数の短経路通信に分割するというアプローチによって,従来よりも高密度・高移動頻度のネットワークにおいて高いデータ到達率を提供する,新たなアドホックルーティングプロトコルの実現について検討する.  長経路分割を実現するために,本研究ではDHT(Distributed Hash Table)と呼ばれる技術を用いる.DHTは,効率的なデータ分散やスケーラビリティを提供するデータおよびノードの探索手法の総称であり,Pure-P2Pネットワークを構築する際に用いられる.DHTは,物理ネットワーク上にオーバレイネットワークを構築し,オーバレイネットワーク上に一様に分散配置されたノードが協調的に動作することによって任意のノード間の通信を実現する.このDHTのオーバレイルーティングの特性を応用することによって,MANETにおける長経路通信を複数の短経路通信に分割する.これによって,経路構築やデータパケットの中継などといった,1つの通信に関わるノード数を少なくでき,高いデータ到達率を実現することが可能となる.同時に,経路構築時にネットワークに与える負荷を最小限に抑えることもでき,複数のノードの同時通信も可能となる.ただし,DHTはインターネットでの利用を前提として設計されたアルゴリズムであり,MANETの特性でもあるノード移動などについては考慮されていない.そこで本研究では,オーバレイネットワーク上で近傍性を実現するRLM(Random Landmarking)と呼ばれる動的クラスタリング手法をさらに改良することでノード移動への信頼性を高め,ノード移動頻度の高いネットワークにも対応できるようにする.  本研究では,DHTと動的クラスタリングによる新たなアドホックルーティングアルゴリズムを検討方式として提案する.また,ネットワークシミュレータを用いて提案プロトコルと従来のルーティングプロトコルを比較評価し,本提案方式の有効性について評価する.

6E-2 (時間: 14:15 - 14:40)
題名固定宛先通信のためのアドホックネットワークルーティングプロトコル
著者*川口 麻美, 山本 潮 (群馬大学大学院工学研究科情報工学専攻)
Pagepp. 1394 - 1401
Keyword無線アドホックネットワーク, ルーティングプロトコル

6E-3 (時間: 14:40 - 15:05)
題名Multipath RoutingにおけるNetwork Codingを用いた符号化・転送手法の評価
著者*嘉義 智紀 (公立はこだて未来大学システム情報科学研究科), 高橋 修 (公立はこだて未来大学システム情報科学部)
Pagepp. 1402 - 1407
KeywordMANET, Multipath Routing, Network Coding
Abstract近年,無線通信技術が発達・普及し,さまざまな端末に無線デバイスが搭載されている.これに伴い, アクセスポイントなどの通信インフラを介さずに無線端末のみでネットワークの形成を行うモバイルアドホックネットワーク(MANET)の研究が盛んに行われている.MANETでは,通信を行う2つの無線端末が互いの無線到達範囲に存在しない場合,他の無線端末を中継するマルチホップ通信を行うことで通信を可能にしている.無線通信はノイズ・フェージング・コリジョン等の様々な要因からパケットをロストしてしまいデータ到達率が低く,信頼性が低い.さらに,MANETでは,中継端末を中継して通信を行うため,複数回の通信が必要になり,データ到達率がより低くなってしまう.エラーに対してデータ到達率を高める手法として,FEC(Forward Error Correction)がある.FECは,送信側がデータパケットを符号化することによって冗長な符号化パケットを生成し,その符号化パケットをデータパケットとは別に送信し,受信側はデータパケットが正しく受信出来なくても符号化パケットからデータパケットを復元可能とする.関連研究として,FECと複数経路を構築するMultipath Routingを併用することでデータパケットと符号化パケットを複数経路上に分散して送信する手法がある.各経路でデータパケットと符号化パケットを独立して転送する.このため,一方の経路上の中継ノードはデータパケットのみを転送することになり,符号化パケットを中継するという負荷が増えない.しかし,送信元ノードは,データパケット・符号化パケットの全てを送信しなければならず,送信回数が増えて,ネットワーク全体のオーバーヘッドも増加するという問題点がある. そこで,本論文では,Multipath Routingによって複数経路の構築を行い,送信元ノードではなく,中経ノードが符号化を行うNetwork Codingを用いる手法を提案する.送信元ノードは複数経路に対し1つのデータパケットを1回で同時に送信する.ある1つの経路の中継ノードが符号化を行い,符号化パケットを送信する.これにより,送信元ノードの送信回数を増やすことなく,符号化パケットを宛先ノードに転送し,効率的に,パケット到達率の向上を行うことが出来る. 本論文では,中継ノードが複数存在する場合に符号化を行う中継ノードの位置,複数経路の役割(データパケット転送/符号化パケット転送)の決定を理論評価にてを行う.最後にシミュレーションにより、理論評価を実証する.