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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 6I  コンテクストアウェアネス(UBI)
日時: 2008年7月10日(木) 13:50 - 16:00
部屋: ビューホール(2)
座長: 今野 将 (千葉工業大学)

6I-1 (時間: 13:50 - 14:15)
題名省電力化に向けたユーザ適応型姿勢推定機構の評価
著者*林 敏樹, 小澤 政博, 川西 直, 川原 圭博, 森川 博之 (東京大学)
Pagepp. 1471 - 1478
Keywordユビキタス, コンテクストアウェアネス, 姿勢推定, 加速度センサ, 省電力
Abstractユビキタスコンピューティング環境で期待される,いまだけ,ここだけ,あなただけのきめ細やかなサービスを実現するためには,時々刻々と変化するユーザのコンテキストの推定が重要となる.これに向けて筆者らは,3軸加速度センサを搭載した省資源な携帯端末をひとつ身に着けるだけで,ユーザの姿勢を推定する機構の開発を進めてきた.しかし,日常生活における実サービスでの使用に耐えうるコンテキスト推定機構の実現に向けては,推定機構のさらなる省電力化と多様なユーザへの適応性が重要な課題となる.携帯端末は外部電源を持たず常時動作するものであるため,携帯端末上でユーザの状況の推定を行う際には,いかに消費電力を抑えて電池持続時間を長くするかが重要である.幅広いユーザを対象とすると,年齢や男女の差,歩き方の癖などによって,推定に用いるべき閾値にばらつきが生じてしまい,画一的な閾値を用いた推定アルゴリズムでは十分な推定精度が得られない可能性がある.このような観点から,本稿では,CPUのスリープ時間を増やすことで消費電力を抑えることを目的とした,計算量削減のための推定計算の高速化と,画一的な閾値ではなくユーザごとに適切な推定基準を設定可能なユーザ適応機構の導入について述べる.推定計算の高速化では,従来計算時間の多くを占めていたFFTの代わりに,より計算量の少ないアダマール変換を適用することで,計算時間が大幅に削減できたことを示す.また,アダマール変換の適用によって歩行ペースの推定誤差が大きくなってしまったが,ゼロ交差法を用いた新たな推定手法によって,高精度でペースの推定ができたことを示す.一方,ユーザ適応機構の導入では,加速度の分散値とスペクトラムの最大値の2値に対する判別直線をユーザごとに引くことで,従来よりも高精度で姿勢の推定ができたことを示す.

6I-2 (時間: 14:15 - 14:40)
題名ウェアラブルコンピューティングのためのユーザ状況を考慮した知覚影響度に基づく情報提示手法
著者*田中 宏平 (大阪大学大学院情報科学研究科), 寺田 努 (神戸大学大学院工学研究科), 西尾 章治郎 (大阪大学大学院情報科学研究科)
Pagepp. 1479 - 1486
Keywordウェアラブルコンピュータ, 情報提示, コンテクストアウェアネス
Abstractコンピュータの小型化により,コンピュータを装着して利用するウェアラブルコンピューティングのためのさまざまなアプリケーションが開発されている.ウェアラブルコンピューティング環境では,ユーザの行動や周辺環境といったユーザの状況が変化するため,状況によっては特定の提示装置では情報が認識できないといった問題が発生する.これまでのウェアラブルコンピューティング向けアプリケーションではあらかじめ決められた提示装置を想定し開発されているため,刻々と変化する状況に適応的に対応させることが困難であった.そこで本研究では,ユーザの状況に合わせて提示装置を動的に変更できる情報提示機構を実現する.提案機構では,すべての提示装置について知覚影響度を計算し,その最適な組合せを動的に選択する.提案機構を用いることで,ユーザの状況に応じた最適な装置で情報を提示可能となる.

6I-3 (時間: 14:40 - 15:05)
題名その場プログラミング環境実現のための状況定義ツールおよび状況処理エンジンの開発
著者*寺田 努 (神戸大学), 宮前 雅一 (ウエストユニティス株式会社), 山下 雅史 (大阪大学情報科学研究科)
Pagepp. 1487 - 1495
Keywordウェアラブルコンピューティング, コンテキストアウェアネス, その場プログラミング

6I-4 (時間: 15:05 - 15:30)
題名ホスト情報を用いたユーザコンテキスト推測機構とその応用
著者*坂本 憲昭, 西尾 信彦 (立命館大学情報理工学部)
Pagepp. 1496 - 1503
Keywordコンテキストアウェア, モバイルコンピューティング
Abstract近年,ユビキタス環境において,コンテキストアウェアコンピューティングの実現が重要視されている.これまで,様々なセンサやRFID タグなどを我々の生活空間に遍在させ,それらから取得したデータを解析することでユーザの状況(ユーザコンテキスト) を推測する研究が多くなされてきた.また,そのユーザコンテキストに応じたサービスを提供するためのフレームワークやミドルウェアの研究も多く存在し,今後それらの研究が行われるにつれ,有益なコンテキストアウェアサービスの提供が増加していくことが予想される.しかし,外部的にセンサなどのデバイスを特別に持ち歩くことや,生活空間内に配置させることは,コストやユーザの煩わしさなどの問題があり,未だに解決されていない. 一方で近年,PC やPDA,スマートフォンといった小型・高性能化された端末を持ち運ぶことが一般的となっている.ユーザは何気なく高性能なデバイスを持ち歩き,様々な用途で利用する機会が増加している.ユーザは,何気なく端末を持ち歩き,仕事やプライベートに関することなど,様々な利用する機会が増加している.つまり,我々の行動の多くは持ち歩く個人の端末に大きく依存しており,逆に言えば,それら個人端末の情報のみからユーザの行動を予測することが可能となれば,様々なコンテキストアウェアサービスに適応できる. 以上のような背景より,我々はこれまで,ユーザは必ず何らかの目的を持って端末を操作していることに着目し,端末に関係する情報のみを用いることによって,ユーザのコンテキストを推測することを目指し,ホスト情報を用いたユーザコンテキスト推測機構の提案と実装を行ってきた.実装したシステムでは,実行中のプロセスや,接続されているデバイス,接続しているネットワーク(位置情報)などのユーザがホストを使用する際に動的に変化するものを対象とした.それらホストコンテキストを取得し,ユーザコンテキスト推測を行うためのセンサ情報として扱う.また,ホストコンテキストとユーザコンテキストの対応付けはユーザ自身が行う(ラベリング).これは,そのユーザにとって最適なホストコンテキストの組み合わせが異なるためであり,ユーザ自身がラベリングすることによって,高精度な推測が可能となることが予想される.そのため,ユーザにとってラベリングしやすいGUIの実装も行った.実装したGUIでは,取得している現在・過去のホストコンテキストを一覧表示しており,ユーザはこのGUIを用いてラベリングを行う.ラベリングされたユーザコンテキストとホストコンテキストの組み合わせは,コンテキストルール集合として保存される.このコンテキストルール集合と現在のホストコンテキストを用いて最適なユーザコンテキストを推測する.また,推測されたユーザコンテキストやホストコンテキストは,変化が生じるたびにログデータとして保存される.さらに,すべてのユーザコンテキストはAPIを通じて実装する外部アプリケーションから取得可能にするためにAPIの実装も行った. また,実際の日常行動を基に評価を行い,その妥当性や有用性の検証を行った.評価に用いる指標として,ポジティブマッチ・ネガティブマッチを用いた.ポジティブマッチとは,実際のユーザコンテキストを漏らさず推測できる確率であり,その分誤差を拾ってしまう.一方,ネガティブマッチとは,推測してはいけないときに推測しない確率であり,漏れが生じてしまう.今回の評価では,これら両方の評価指標で結果の値を求める.両方ともに値が高いほど,正確な推測が出来ていることを示す.評価方針として,一日間システムを動作させ,ユーザ自身でコンテキストを記録しながら評価を行った.その結果,全体的なコンテキストを対象とした場合,84.4%の精度を記録した.全体の場合は,ポジティブマッチとネガティブマッチが等しくなる.また,ユーザコンテキストに対して個別に評価結果を算出すると,ポジティブマッチかネガティブマッチのどちらかが極端に小さいコンテキストが観測された.この結果より考察を行うと,ネガティブマッチの値のみが小さい場合は,他のコンテキストに対して影響力の強いルールが記述されており,推測してはいけないときに誤って推測してしまう.影響力の強いルールとは,他のルールで対象となっているものや,普段常駐させているホストコンテキストを多くルール内に含めていることを示す.また,ポジティブマッチの値のみが小さい場合は,影響力の強いルールに引っ張られてしまい,推測しなければならないときに推測できなかったことを示す.これらの結果より,重みづけを行い,ルール記述の際に影響力の強いホストコンテキストを対象とする場合はその重みを減らすなどの対応を行う必要がある. また,本機構を用いての応用事例として,自動的なクエリ生成機構の実装も行った.ホストから得られる情報のみを用いて,位置情報や,グルーピング,検索履歴などを用いて学習し,自動的に検索クエリを生成するものである.発表時に利用状況の映像を含めて報告する.

6I-5 (時間: 15:30 - 15:55)
題名Bluetoothデバイス存在検出手法の考察
著者*新井 イスマイル (立命館大学総合理工学研究機構), 広渕 崇宏 (産業技術総合研究所情報技術研究部門), 藤川 和利 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学情報理工学部), 砂原 秀樹 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)
Pagepp. 1504 - 1509
Keyword存在検出, Bluetooth
AbstractBluetoothデバイスの普及性と低コスト性に着目し、コンテクストアウェアサービスのためのデバイス存在検出手段としてBluetoothを活用することを試みた。ユーザが持ち歩くBluetoothデバイスには仕様上Inquiry Commandに応答しないものがある。一方、MACアドレスを指定してデバイス名の返答を要求するRemote Name Request Commandがあり、これはスタックの仕様上、返答時間は長いが、全てのデバイスが返答可能といった特徴を持つ。本論文ではそれぞれの要求に対する一般的なBluetoothデバイスの応答性能について基礎評価を行い、Bluetoothデバイスを活用した位置検出の有効性について述べる。