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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 7D  シミュレーションと交通予測(ITS)
日時: 2008年7月11日(金) 8:30 - 10:10
部屋: ペガサス
座長: 梅津 高朗 (大阪大学)

7D-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名統合シミュレータによる現実都市環境を模擬した車車間通信シミュレーション
著者*疋田 敏朗, 笠井 俊典, 吉岡 顕 (トヨタIT開発センター)
Pagepp. 1600 - 1605
Keyword車車間通信, ITS, 安全運転支援システム, ネットワークシミュレーション, 電波伝搬
Abstract我々は「シミュレーション要素」をプラットフォーム上で連携させ,対象となるITS 通信アプリケーションの系全体をシミュレートする統合シミュレータの開発を行ってきた.今回,我々は統合シミュレータの特徴である粗結合アーキテクチャを活用し,電波伝搬シミュレータを都市環境向きのシミュレータに変更するとともに,その処理フローを変更することで電波伝搬計算について1000 倍近い高速化を行った.また実際の都市データを元とした3D データを地形データとして活用できるように拡張することで現実の都市環境に極めて近い環境をシミュレータ内に作り出すことに成功した.これらの拡張により,実際の都市を模した3D データ数万ポリゴンが存在する環境においても100 台規模の車車間シミュレーションが可能となった. 本拡張により,従来は大変困難とされていた都市部を模擬した大量の車戴機が存在する環境において,車車間通信アプリケーションによる高度な影響評価が可能であることを確認した.

7D-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名交通流シミュレーションと通信システムシミュレーションの統合
著者*大和田 泰伯, 前野 誉 (スペースタイムエンジニアリング), 高井 峰生 (早稲田大学)
Pagepp. 1606 - 1610
KeywordITS, シミュレーション, モバイルシステム
AbstractITS をシミュレートする際、交通流と無線通信システムの挙動は相互依存の関係にあるため、両方のモデルを含むシステムモデルを構築し総合的にシミュレーションを行う必要がある。しかし、交通流は通常タイムステップを用いてモデル化されている一方、無線通信システムは離散事象システムとしてモデル化されているため、モデル化のパラダイムが大きく異なり、単純に統合を行っても非常に効率の悪いシミュレーションとなる。本稿では交通流モデルと無線通信システムモデルを統合してシミュレーションを行う際に生じる問題点を幾つか挙げ、その対策について議論する。

7D-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名長期休暇中の旅行時間を予測するための統計交通情報の検討
著者*奥出 真理子, 藤原 淳輔 ((株)日立製作所日立研究所), 遠藤 芳則, 天谷 真一 ((株)ザナヴィ・インフォマティクス)
Pagepp. 1611 - 1615
Keyword交通情報, 旅行時間, 予測, 長期休暇, カーナビゲーション
Abstractゴールデンウィーク・盆・年末年始のシーズンには,長期間の連続休暇を取得して旅行を楽しむ人が多く,交通情報を利用するユーザが増え,より信頼できる交通情報が望まれる.しかしながら,このようなシーズンには,従来の統計交通情報では予測できない非日常的な交通状況が発生する.また,このシーズンに人々が取得する長期休暇は,暦上の休日とは限らないため,日種を特定することが難しい.そこで我々は,長期休暇の非日常的な渋滞が発生する日を「特異日」とし,特異日に対応した統計交通情報と日種カレンダーの設定方法を提案し,長期休暇の交通状況の予測を可能とした.本稿では,長期休暇以外の三連休をはじめとする連続休暇の活用を提案する.連続休暇中に発生する非日常的な渋滞を特異日に含めることによって,より新鮮な交通状況が統計交通情報に反映され,長期休暇の交通状況がより精度良く予測できることを確認した.

7D-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名プローブデータを用いたリアルタイム推定補完技術の評価
著者*蛭田 智昭, 熊谷 正俊 (株式会社日立製作所 日立研究所), 鈴木 研二 (株式会社日立製作所 CIS事業部 ), 横田 孝義 (株式会社日立製作所 日立研究所)
Pagepp. 1616 - 1620
KeywordITS, ナビゲーションシステム, プローブカー, 欠損, 補完
Abstract近年、プローブ交通情報システムが国内外問わず注目されている。このシステムは、車両自身が交通情報収集のセンサとして振舞い、プローブカーと呼ばれる車両が走行した位置情報、時刻情報などのデータを収集するものである。収集されたデータは交通情報センタにアップリンクされ、交通情報に変換され、提供される。このシステムの利点は、路上センサなどのインフラの必要が無く、低コストで広範囲の交通情報を取得できる点にある。 しかしながら、プローブデータを路上センサと同様に扱う場合、データの補完手段が必要になる。なぜならセンサであるプローブカーの走行経路は確率的なものであり、その情報品質は路上センサで収集される連続的な情報とは異なり、空間的・時間的に大きな欠損を含み得るためである。例えば、プローブカーの台数を全国で10万台とした場合、プローブデータが取得できる時間密度は、道路リンク当たり1時間に平均1回程度である。このプローブデータを現行の路上センサと同等の5分周期のデータとして利用する場合、同時刻でのデータのカバー率(全リンク数に対するプローブデータを収集できたリンク数の割合)は全体の1割程度である。よって路上センサと同様に扱う場合、欠損しているデータの補完手段が必要になる。補完手段の一般的な手法として、現況のプローブデータを一定時間保持する、つまり、補完データとして、直近に提供された過去のプローブデータを提供する手法(前置補完技術)がある。この方法は安定した補完情報を提供することはできるが、補完情報の精度と補完できるデータ数は、プローブデータのカバー率に依存する。プローブデータのカバー率が高い場合、過去のプローブデータを保持する時間を短くしても、多くの欠損データに精度の高い補完情報を提供することができる。しかし、プローブデータのカバー率が低い場合、過去のプローブデータを保持する時間を長くすることで、多くの欠損データに補完情報を提供できるが、その精度は低いものになる。なぜなら、過去に提供されたプローブデータで欠損データを補完しているため、現況の交通状況を反映できない可能性があるためである。 この解決策として、特徴空間を用いたプローブデータのリアルタイム推定補完技術が報告されている。これは、道路間の混雑の相関を、特徴空間と呼ばれるモデルで表現し、情報の得られている道路の状況から、他の道路の状況を推定することで、欠損しているデータを補完する技術である。道路間の相関現象は、例えば、幹線道路と駅前の道路が同時に混雑することなどに見られる。この道路リンク間の相関パターンを基底ベクトルと言う。さらに基底ベクトルの集合を特徴空間という。リンク間の相関パターンを抽出するためには、蓄積した過去のプローブデータを用いる。 このリアルタイム推定補完技術では、プローブデータのカバー率が5%以上であれば、安定した推定補完を行うことを筆者らは報告済みである。さらに、蓄積した過去データの欠損率が低い場合でも、過去データの蓄積期間を延長することで、十分な特徴空間を生成できるという特徴空間の性質を報告した。ここの特徴空間が十分であるとは、抽出した道路リンク間の相関パターンが、実際の道路間の混雑の相関を十分に表すことができる状況をいう。 しかし、プローブデータのカバー率と、その欠損データを補う前置補完技術の精度及びリアルタイム推定補完技術の精度の関係は明らかにされていない。このため、さまざまなプローブデータのカバー率に対して、欠損データを補完するには、どの方法が適しているのかを決めることが困難であった。 そこで本報告では、プローブデータのカバー率と前置補完技術の精度、リアルタイム推定補完技術の精度の関係は明らかにし、プローブデータのカバー率に応じた適切な補完技術を明らかにする。