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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 7H  情報家電(UBI)
日時: 2008年7月11日(金) 8:30 - 10:10
部屋: ビューホール(1)
座長: 斉藤 健 (東芝)

7H-1 (時間: 8:30 - 8:55)
題名IMクライアントを用いた異種スマート環境制御のためのサービス推薦機構
著者*田中 宏一, 藤原 茂雄 (内田洋行), 岩崎 陽平 (名古屋大学大学院工学研究科), 榎堀 優, 中野 悦史 (立命館大学大学院理工学研究科), 西尾 信彦 (立命館大学情報理工学部), 河口 信夫 (名古屋大学大学院工学研究科)
Pagepp. 1683 - 1691
Keywordスマート環境, ユビキタスコンピューティング, 遠隔コミュニケーション, ネットワーク制御, ユーザインタフェース
Abstract 将来のユビキタス社会では,多数のセンサや情報機器,各種ネットワークによって構築される環境,スマート環境が様々な場所に遍在すると考えられる.これらのスマート環境は,構築された場所に応じて,様々に異なる機器,サービス,アーキテクチャで実装されることが予想される.しかし,これまでの研究は単一のスマート環境に閉じていることが多く,遠隔かつ異種のスマート環境を接続するのは困難である.本稿では,異種のスマート環境間での遠隔コミュニケーションに着目し,異なるサービスをつなぎ合わせて,ユーザにサービスを推薦する「ぬえ」システムを提案する.  遠隔地とコミュニケーションする場合,一般的によく利用される機能としては,映像・音声によるコミュニケーション,PC画面共有,ファイル共有,共同編集作業,などがある.これらは既に各機能を実現するサービスや,用途に特化されたプロトコルが存在する.しかし,これらのサービスはそれぞれに固有の知識,設定が必要で,一般的なユーザが利用するには技術的な知識が不可欠である.また,異種のスマート環境間においては,VPNなどのネットワークの接続,異なるフレームワークとの接続,IPアドレスの入力などのネットワークアプリケーションの設定,といった課題がある.  このような課題に対し,我々は,必要な機能に最適なサービス・プロトコルを利用し,それらを貼り合わせることをコンセプトとした,「ぬえ」システムを提案する.「ぬえ」システムは,異なるサービスを組み合わせて自動的に実行できる機構,ユーザにサービスを推薦する機構を持つ.つまり,「ぬえ」システムは,異種のサービス・プロトコルに対するユーザインタフェースとなり,一連の設定・制御を自動化する.その際には,サービスそのものを使用するとともに,別稿の,遠隔のスマート環境のネットワークを接続する「PeerPool」,異なるプロトコルのスマート環境をRESTによりWebサービスとして公開するアーキテクチャ,遠隔ユーザに対してスケーラブルな権限管理を行うための「チケット認証方式」を使用する.  我々は,遠隔地とのコミュニケーションを行うシーンとして遠隔会議を選び,そこで利用されるサービスを検討した.遠隔会議での一連の作業を自動化する場合には次に挙げる機能が必要である.(1)ユーザ特定:会議相手を特定する.(2)プレゼンス交換:会議相手の状況を確認し,開始を呼びかける.(3)サービス情報の交換:各々の環境で利用できるサービスと,プロトコルやIPアドレスなどのサービス情報を相互に確認する.(4)サービス推薦:ユーザに利用可能なサービスを通知し,使用するかどうかを確認する.(5)ネットワークの接続:双方向の通信が必要なサービスのために,ネットワークのトンネリングを行う.(6)サービス実行:異種かつ遠隔のサービスを実行する.  ユーザを特定し,かつプレゼンス交換を行う仕組みとして,「ぬえ」システムでは,その用途に特化した標準的なサービス・プロトコルを利用する,というコンセプトから,現在最も利用されているインスタントメッセンジャー(以下,IM)を利用している.これにより,ユーザは特殊なソフトウェアをインストールしなくてもよい.ユーザは遠隔地とのコミュニケーションを始めるにあたり,IMによって会議相手とのチャットを始める.「ぬえ」システムはIMクライアントの機能を持っており,このチャットに参加することで,参加ユーザと接続先のスマート環境を把握する.  「ぬえ」システムは,接続先のスマート環境でどのようなサービスが利用できるかを,スマート環境のゲートウェイとなるWebサービスから取得する.また合せて,ネットワークのトンネリングに必要な設定情報と,サービスのセマンティクス,プロトコル,接続先(多くはIPアドレスとポート)の情報を受け取る.これにより,「ぬえ」システムは,遠隔のサービスの実行可能性を判断し,ユーザに対して利用可能なサービスを推薦する.ユーザへのサービス推薦は,システム側からユーザ側へPUSHされる情報であり,一方でユーザは利用するサービスをシステムに伝える必要がある.これら一連の対話的操作に関して,「ぬえ」システムはIMを利用して推薦を行う.推薦のメッセージは「ぬえ」システムの管理するWebサーバへのURLになっており,ユーザはリンクをクリックすることでサービスの利用を指示する.サービスを利用するとき,「ぬえ」システムは「PeerPool」に対してネットワークのトンネリングを指示し,合せてスマート環境のゲートウェイに対して,権限情報を表すチケットとともに,サービス実行を指示する.  このように,「ぬえ」システムではクライアント端末に一般的にインストールされているソフトウェアを利用して,スマート環境のアーキテクチャに依存しないユーザインタフェースを実現している.また,スマート環境やサービスの情報,設定を把握し,自動的にネットワークのトンネリングとサービス実行を可能にする.

7H-2 (時間: 8:55 - 9:20)
題名デジタル家電ネットワークにおける制御メッセージの経路制御方式
著者*田坂 和之, 今井 尚樹, 茂木 信二, 磯村 学, 井戸上 彰 (株式会社KDDI研究所)
Pagepp. 1692 - 1699
Keywordホームネットワーク, 情報家電, 経路制御, DLNA, SIP
Abstract宅内に構築したネットワーク(HNW)で動画,音楽,写真などのメディアコンテンツを送受信可能なデジタル家電が普及している.また,移動端末の普及にともない,宅内外に関わらず,どこにいても,メディアコンテンツを楽しむことができるサービスへの期待が高まっている.そこで移動端末がHNWに接続する場合でも,HNW外のアクセスネットワークに接続する場合であっても,メディアコンテンツを送受信可能とするために,筆者らはデジタル家電の広域接続方式を提案している.しかしながら,アクセスネットワークを運営・管理する事業者は,広域接続方式によるサービスの実現に際し,トラフィックの増加やトラフィックの経路上に存在する装置の処理負荷の増加を懸念している.そこで本稿では,移動端末がメディアコンテンツを送受信する際の制御メッセージの経路を最短とすることで,アクセスネットワーク上のトラフィック量や各装置の処理負荷を抑制する経路制御方式を提案する.さらに本方式は,ユーザの移動により,移動端末の接続するネットワークがHNWからHNW外のアクセスネットワーク,もしくはその逆に切替っても,継続してメディアコンテンツを送受信可能とする.また,提案方式に基づいたシステムを実装し,経路の確立時間や接続方式の切替えにともなうメディアコンテンツの受信断時間などの観点から性能を評価することで,本方式の有効性を示す.

7H-3 (時間: 9:20 - 9:45)
題名DMPで操作するDLNA機器とテレビ放送の遠隔視聴システムの提案
著者*小山 卓視, 武藤 大悟, 吉永 努 (電気通信大学 情報システム学研究科)
Pagepp. 1700 - 1707
KeywordDigital Living Network Alliance (DLNA), Universal Plug and Play (UPnP), Digital Media Server (DMS), Digital Media Player (DMP)
Abstract 我々はDigital Media Player(以下DMP)を用いて操作する、DLNA機器とテレビ放送の遠隔視聴システムを提案する。以前、我々は従来同一のホームネットワーク内に限られるDLNA通信をインターネット経由で行うことが出来る、DLNA情報家電の相互遠隔接続支援機構Wormhole Device(以下WD)の提案を行った。今回、我々はテレビ放送動画をコンテンツとするDLNA情報機器「TV-DMS」を作成した。これらを用いて、インターネットを介してDLNA機器とテレビ放送を遠隔視聴することができるシステムを構築した。また、我々は視聴に関する操作を全てDMPから行うことができるようWDに改良を加え、テレビ放送動画をDMPの接続されたテレビやメディアプレーヤを搭載した携帯端末から再生することを実現した。 近年、ホームネットワーク機器の相互接続に関する統一規格であるDLNA対応の情報家電が普及している。また、インターネットへのブロードバンドアクセス回線が広く普及している。このことから、宅外からもDLNA情報家電を簡単・安全に利用したいという要求が生まれる。そこで我々はWormhole Deviceと呼ぶ、DLNA情報家電の相互遠隔接続支援機構を開発した。WDはインターネットを介したDMPとDigital Media Server(以下DMS)のDLNA通信を実現する。例えば、孫宅のDMSに蓄えられたホームビデオの動画を、インターネットを介して祖父宅のDMP で再生することが可能となる。また、我々はWDを携帯端末に応用し、Mobile-Wormhole Device(以下M-WD)を開発した。M-WDとWDを用いることで、携帯端末に搭載したDMPと自宅のDMSのインターネットを介したDLNA通信を実現する。例えば、自宅のDMSに蓄えられた音楽や動画をホットスポットに繋がった携帯端末で再生することが可能となる。  WD及びM-WDは、DMPとDMSのみならず種々のDLNA情報家電同士を相互遠隔接続させることができる。そこで、我々はTV-DMSと呼ぶ、テレビ放送の動画をコンテンツとするDLNA情報家電のプロトタイプを開発した。TV-DMSはUPnP Deviceとして動作するため、ローカルネットワーク上のDMPからSSDPを通じて検出される。TV-DMSの提供するコンテンツは、テレビ放送のリアルタイムストリーミング動画である。コンテンツのタイトルはテレビ放送局名であり、DMPからそれを選択することでテレビ放送を視聴することが出来る。また、録画機能も備えており、録画した動画はTV-DMSが内蔵するDMSに蓄えられ、いつでも視聴可能となる。TV-DMSのプロトタイプは、テレビチューナ付きビデオキャプチャボードを搭載したPCに、ビデオキャプチャボードから取得したMPEG2動画をストリーミング中継する機能を持ったUPnP Deviceソフトウエアを実装して開発した。そして、このTV-DMSとDMPをWDやM-WDによって遠隔接続することで、インターネットを介したテレビ放送の遠隔視聴システムを構築した。  ところで、WDはUPnP Deviceとして動作し、その操作はUPnP Control Pointとして動作するWD CPから行うよう設計されている。WD CPもWDと同様に現在はPCに実装されており、その操作インタフェースはキャラクタユーザインタフェース(CUI)である。しかし、CUIのコマンドラインからWDを操作することはホームネットワークのユーザにとって敷居が高いと考えられる。それに対して、DMPはホームネットワークユーザにとって最も慣れ親しんだ操作インタフェースであり、WDはUPnP Deviceとして動作するため市販のDMPからWDを検出することも容易である。故に、DMPのみを用いてWDを操作し、遠隔にあるDMSにアクセスすることができればホームネットワークユーザにとって WDの操作に関する敷居を低くすることが出来る。そこで、我々はWDにDMPから操作を行うことが出来るよう改良を加えた。DMPにはWDがUPnP Deviceとして認識され、これを選択すると遠隔にあるDLNA情報家電の一覧が表示される。そして任意の情報家電を選択すると自動的にDMPと情報家電の遠隔接続が開始される。すると、選択した情報家電に蓄えられたコンテンツのリストが表示され、あとはコンテンツを選択して再生を行えばよい。この仕組みを用いて、DMPからWDを操作し、インターネットを介してTV-DMSのテレビ放送動画をDMPにて視聴するシステムを構築した。  関連研究としては、ロケーションフリーとスリングボックスが挙げられる。ロケーションフリーはテレビ放送をMPEG2やMPEG4にリアルタイムに変換し、インターネットを介してテレビ放送動画をPCやロケーションフリーTVボックスを用いてテレビで視聴することが出来る。また、スリングボックスはPCと携帯端末にてテレビ放送動画を視聴することが出来る。それに対し、我々の構築したシステムはDLNAに準拠したホームネットワークにて使用することを想定しており、オールIPでDMPによるテレビ放送の遠隔視聴が出来るほか、種々のDLNA情報家電の相互遠隔接続が可能である。

7H-4 (時間: 9:45 - 10:10)
題名多様な機器を赤外線で制御可能なWebサービスの構築
著者春原 雅志 (名古屋大学大学院情報科学研究科), *河口 信夫 (名古屋大学大学院工学研究科)
Pagepp. 1708 - 1723
Keyword情報家電, Webサービス, 赤外線リモコン, 機器連携, 機器制御
Abstract 近年,ネットワーク環境の整備や情報端末の小型化により,いつでもどこでも誰でも情報やサービスを受け取ることができるユビキタス環境が実現されつつある.ユビキタス環境では多数のセンサや機器を相互に連携させることにより,我々の快適な生活をさりげなく支援することが期待される.機器同士の連携を実現するためにUPnP(Universal Plug and Play)やDLNA(Digital Living Network Alliance),Bonjourといった仕組みが利用され始めている.これらの仕組みを用いると,機器をネットワークに接続するだけでIPアドレスの設定や機器が提供するサービスの公開を自動的に行うことができる.これらの仕組みはネットワークに接続して利用することが想定される情報家電を中心に広まりつつある.しかしながら現在我々が生活している環境にはネットワークへの接続性や機器連携機能を持たない「非情報家電」が多数存在している.非情報家電の多くは赤外線リモコンやシリアル通信を用いて外部からの機器制御が可能である.このような機器をネットワークを経由して制御したり,他の機器と連携動作させるためには,機器自体にそのような機能を組込んだり,ネットワーク経由で赤外線やシリアル通信を制御を行うシステムを構築する必要がある.しかし,機器自体に組込むのは容易ではなく,またそのようなシステムを構築するためには,機器ごとに赤外線通信やシリアル通信を行うためのプログラムを実装しなければならない.また多くの機能を持つ機器は制御を行うたびに内部状態が変化し,単純な制御指示では意図しない動作をさせてしまう可能性がある.例えば,機器の電源をONにするためにON/OFF制御を行った場合,既に機器の電源がONの状態の場合は電源がOFFになってしまう場合がある.そのため非情報家電を制御するシステムは,一方的に制御に対して指示を行うのではなく,機器の現在の状態や状態遷移を考慮して指示を行う必要がある.  本研究では非情報家電の内部状態を含んだ制御情報を効率的に制御システムに登録し,プログラムのコーディングなどを行わずにネットワークへの接続性や他のシステムと連携可能な環境を構築する手法の提案を行う.提案手法ではまず機器情報の登録を簡略化するために,様々な機器が持つ内部の状態をモデル化し状態遷移の仕方についてパターン分けを行う.そして,各パターンごとに状態遷移を含んだ機能テンプレートを作成する.この機能テンプレートに対して,機器を制御するために必要な赤外線信号やシリアルコマンドなどの対応付けを行う.このような手順を繰り返すことにより,様々な機器の情報を効率的に制御システムに登録することが可能となる.そして制御システムに登録した機器の制御をWebサービス化することにより,ネットワーク経由での機器制御や他のシステムとの連携が容易になる.さらに,Webサービスを用いて登録した機器情報を共有することにより,登録作業の手間を軽減することが可能となる.  上記の手法に基づき,機能テンプレートを用いた機器情報の登録とWebサービスの提供を行うシステムをWebサーバ上に実装した.機器情報の登録は,Webブラウザ上から利用可能なWebアプリケーションとして実装し,機器情報を管理するWebサーバ上にXMLファイルとして蓄積した.また,登録された機器をWebアプリケーションや他のシステムから利用するためのWebサービスAPIを実装した.そして実装したシステムを用いて赤外線リモコンによる制御が可能な機器の情報を登録するために赤外線送受信機を作成し,様々な機器の情報を登録した.実際にAPIを用いて機器情報の取得や制御を行うWebアプリケーションを作成し,携帯端末からの非情報家電の制御や連携制御が可能になることを確認した.  本手法を用いることにより複雑な手順を踏まずに非情報家電の制御をWebサービス化し,ユビキタス環境へ組込むことが可能となる.