(セッション表へ)

マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム

セッション 8E  アドホックネットワーク応用(MBL)
日時: 2008年7月11日(金) 10:20 - 12:00
部屋: コスモ(1)
座長: 渡辺 正浩 (三菱電)

8E-1 (時間: 10:20 - 10:45)
題名無線メッシュネットワークにおけるゲートウェイ分散方式の提案と評価
著者*伊藤 将志 (名城大学大学院), 鹿間 敏弘 (福井工業大学), 渡邊 晃 (名城大学)
Pagepp. 1873 - 1879
Keyword無線メッシュネットワーク, ns-2, ゲートウェイ, MANET
Abstract無線LANは,ケーブルが不要で,自由に端末のレイアウトが組めること,端末の移動が可能であることから,広く普及してきた.一般的な無線LANのシステムでは,無線部分はAP(Access Point)から端末の間のみであり,AP間およびインターネットへのアクセスは有線で接続されている.そのため,大量のアクセスポイントを設置すると,バックボーンとなる有線の敷設コストが増大し設置にも時間を要する.このような問題を解決するシステムとして,無線メッシュネットワークがある.無線メッシュネットワークとは,AP同士が相互にアドホックネットワークで接続されたシステムである.端末は通常の無線LAN のAP に接続する場合と同様の手順でシステムを利用できる.無線メッシュネットワークはAP を適切に配置するだけで無線LAN の通信エリアを容易に拡大することができ,増設や移設にも迅速な対応が可能である.IEEE802.11 委員会では2004 年6 月にタスクグループs を発足させ無線メッシュネットワークの標準化を進めている状況である.しかし,802.11s ではインターネットとの接続方法については,詳しい検討は行われていない. 無線メッシュネットワークのような無線リンクのみで構築されたLAN では,有線バッ ボーンネットワークとの接続点となるゲートウェイ付近での負荷集中が問題となる可能性がある.無線ネットワークの帯域幅は有線ネットワークと比べて劣るため無線資源を有効に利用する必要がある.ゲートウェイの負荷集中を回避するため,複数個のゲートウェイを設置し,AP が適切にゲートウェイへの経路を切り替えられると有効である.この際,端末はゲートウェイの切り替えを意識せずに済むことが望ましい. 複数のゲートウェイを用いる既存の研究として,ゲートウェイを切り替え時に通信ロスを最小限に抑える研究,複数のゲートウェイにパケットを分配転送する研究がある. 前者の方式としては,MANET(Mobile Ad-hoc Network)のゲートウェイ選択手法として議論されている.MANET 内のゲートウェイは有線により上流ルータに接続する.ゲートウェイは上流ルータの設定情報を端末へ配布する.端末は最寄りのゲートウェイを選択してパケットを転送する.端末が移動してゲートウェイを切り替えても端末の選択する上流ルータが変化しないため,端末上のアプリケーションはゲートウェイの切り替えの対処を行うことなく外部と通信が可能となる.しかし,端末が複数のゲートウェイを同時に利用することは想定していない. 後者はAP が各ゲートウェイの状態を検知し,パケット毎にゲートウェイを選択することによりトラヒック量を均等にし,ネットワークの公平性を高める.AP が複数のゲートウェイを同時に使用することによりトラヒックを分散させることができるため,本論文の目的と最も関連する研究である.しかし,単純にパケットを分配する方式では同一TCP セッション内で通信のゆらぎが発生し性能劣化が発生するという課題がある.そこで,本論文ではパケットのプロトコルタイプ,IP アドレス,ポート番号をもとに同一セッションの通信は同一のゲートウェイを選択することとする.これにより同一TCPセッションでの通信のゆらぎを抑えることができ,通信性能を向上させることができる. ネットワークシミュレータns-2 上に提案方式を実装し,その有効性を確認した.シミュレーションの結果,提案方式の方がパケット単位で分配する方式よりもTCPスループットが向上することがわかった.また,ネットワークに背景負荷を与えたとき,その差が更に顕著になることがわかった.今後はテストベッドの構築などによる性能評価を行い,その結果を基に災害通知システムや車車間通信などへの応用を検討していく.

8E-2 (時間: 10:45 - 11:10)
題名スムースな拡散を目指した カウンタベース リブロードキャスティング
著者*榎本 正 (NEC通信システム)
Pagepp. 1880 - 1883
Keywordフラッディング, リブロードキャスティング, スムースな拡散
Abstractネットワークではブロードキャストパケットがさまざまな目的で使われている.無線アドホックネットワーではブロードキャストストーム(中継パケット数の爆発的な増加)は大きな問題でありさまざまな対策の提案がなされている.しかし,これらの提案は中継パケット数の削減と到達率が大きな関心であった. われわれは,上記の2つの指標のほかに,スムースに広がることも重要と考え,カウンタベースの方式をベースにスムースに広がる方式を開発した.提案方式は中継するかどうか判断するまでの待ち時間を従来の[0,Tmax]からランダムに選ぶ方法から、一呼吸おいて[Tmin,Tmax]からランダムに選ぶ方法に改良したものであり、シミュレーションにより、発信ノードからの同心円状のノードまでの遅延時間の標準偏差/平均の値が従来方式に比べ10%程度削減されており、よりスムースに拡散されることを確認した。

8E-3 (時間: 11:10 - 11:35)
題名移動飛行体を用いた無線ネットワークサービスに関する一考察
著者*島田 秀輝, 藤川 和利, 砂原 秀樹 (奈良先端科学技術大学院大学)
Pagepp. 1884 - 1887
Keywordモバイルネットワーク, アドホックネットワーク

8E-4 (時間: 11:35 - 12:00)
題名セルラーネットワークとアドホックネットワークを併用したBitTorrent風動画広告配信手法
著者*花野 博司 (奈良先端大), 村田 佳洋 (広島市立大), 柴田 直樹 (滋賀大), 安本 慶一, 伊藤 実 (奈良先端大)
Pagepp. 1888 - 1893
Keywordセルラーネットワーク, アドホックネットワーク, BitTorrent
Abstract 近年,携帯端末に動画コンテンツを配信するサービスが提供されている.その一つとして動画広告配信が近年注目を集めている.動画広告配信において,高い広告効果を得るためにはユーザのコンテキストにあった動画の配信が重要となる.動画配信に利用できる帯域幅には制限があるため,多数のユーザがそれぞれ多様なコンテンツの配信を要求すると,セルラーネットワークの電波資源を圧迫し,すべてのユーザに満足の行く配信を行うことは困難となる.そのため,多数のユーザが多様な動画広告を要求する環境において,効率的な動画広告配信手法が必要となる.携帯端末への広告配信の現状として,コンテキストアウェアな動画広告配信サービスは提供されていない.現在行われている待ち受け画面へのヘッドライン広告はセルラーネットワークのみで行われているが,セルラーネットワークの帯域は限られているため,同じ方法で多種多様な要求が発生するコンテキストアウェアな動画広告配信は行えない.一方,携帯端末同士でアドホックネットワークを使ってBitTorrentを適用し効率的にファイルのやり取りを行う研究が行われている.しかし,端末同士のアドホック通信では通信範囲が限られており,広域に情報を伝えるのは伝達率などの面で実用上問題がある.  本研究では,多数のユーザの多様なコンテンツ要求に対応できる動画広告配信を行うことを目的として,セルラーネットワークとアドホックネットワークを併用した動画広告配信手法を提案する.多数のユーザが居る都市を対象とし,ユーザの携帯電話はセルラーネットワークとアドホックネットワークが同時に使用できるものとする.提案手法では,ユーザのコンテキストによって,端末が自動的に受信したいコンテンツを決定し,ユーザのスケジュールや生活パターンから各コンテンツに対してデッドライン(受信期限)を設定する.以上に対して,各ユーザ端末が近隣の端末と協力して如何に効率よくデッドラインを満足するよう動画広告を受信するかという問題を扱う.  提案手法では,以下の3つの基本方針を採用する.1つ目はセルラーネットワークの通信帯域をできるだけ抑えることを目指して,近隣端末が持っていないファイルはセルラーネットワークから,近隣端末が持っているファイルはアドホックネットワークからダウンロードする.2つ目は近隣の端末同士が協力して効率的にダウンロードするために,BitTorrentの様にファイルを断片に分割し近隣の端末と交換する.3つ目は多数の端末が存在する時にもうまく動作させるため,サーバによる集中制御は行わず,各端末が自律的・確率的に取るべきアクションを決定する.  提案手法では,端末はアクション決定アルゴリズムにおいて2つのフェーズを持っている.近隣の情報を収集するフェーズと端末がアクションを決定するフェーズである.近隣の端末と断片を交換するのに必要な情報を交換するために,近隣の情報を収集するフェーズでは各端末がハローメッセージを定期的にブロードキャストする.ハローメッセージには自分が欲しいコンテンツのリストと,各コンテンツに対し自分が持っている断片の情報が含まれている.各端末は周りから送られてきたハローメッセージから近隣端末の断片所持状況や需要情報を収集する.アクション決定フェーズでは,端末は近隣の情報から自律的・確率的に行動を決定する.自分が持っている断片は周りに貢献するためにブロードキャストする必要があるが,その断片を持っている全端末がブロードキャストすると電波資源を無駄に使ってしまう.そこで持っている端末数,欲しがっている端末数に依存した確率でブロードキャストを行う.すなわち,各断片に対し,その断片を持っている端末が多かったり欲しがっている端末が少ない場合には確率を下げ,持っている端末が少なかったり欲しがっている端末が多い場合には確率を上げる.  自分が持っていない断片は,周りにその断片を持っている端末があれば送られてくるのを待つが,周りで誰も持っていない断片についてはセルラーネットワークでダウンロードする必要がある.しかし,その断片を欲しがっている全端末がセルラーネットワークからダウンロードしようとするとコストが高くなってしまう.そこで欲しがっている端末数に依存した確率でダウンロードする.つまり欲しがっている端末数が多ければ確率を下げ,少なければ確率を上げる.  提案手法の評価を行うためにユーザの満足度を,実際の都市を模したシミュレーション空間でのシミュレーションにより調査する.デッドラインに遅れるとユーザが見たい時に見られないため評価値は0となる.逆にデッドラインより早くダウンロードできると評価値が高くなる.これをあるタイムスパンで全ユーザ,全リクエストについて評価を行う.