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マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2012)シンポジウム

セッション 6B  省電力センサネットワーク
日時: 2012年7月5日(木) 15:25 - 17:30
部屋: 長流の2
座長: 石原 丈士 (東芝)

6B-1 (時間: 15:25 - 15:50)
題名流れるセンサネットワークにおけるデータ回収率に関する基礎検討
著者*三竹 一馬 (静岡大学創造科学技術大学院 石原研究室), 石原 進 (静岡大学創造科学技術大学院)
Pagepp. 1463 - 1470
Keywordセンサネットワーク, 流れるセンサネットワーク, モデル化
Abstract本論文では,河川や下水等の水流領域を対象とした「流れるセンサネットワーク」を用いた観測データの回収過程のモデル化を行い,観測データの回収量に関する理論的評価を行う.流れるセンサネットワークとは,河川や下水道などの水路に流された複数のセンサノードと水路沿いに設けられた複数のアクセスポイントを利用して,水流上のデータ収集を行うシステムである.河川や下水の様な水流環境は長距離・広範囲にわたっていることが多いため,小型のセンサノードを水路に流すことで,各ノードが上流から下流まで流れる間に画像や,水位,温度等のセンシング情報を収集し,観測したデータを固定のアクセスポイント(AP) へ送信することで,水流の調査が短期間かつ少ない人的コストでデータを収集可能であると考えられる. 流れるセンサネットワークにおける観測データの回収量は,水流に依存したノードの移動や,利用するノード数等に影響する.そのため,システム評価の際にノード数などの適切なパラメータを設定するための基準の値を知ることが重要である.筆者らは,流れるセンサネットワークにおいて,観測領域内のデータを低コストでかつ確実に回収するためのノード数等の適切なパラメータの値を得るために,流れるセンサネットワークにおけるデータ収集過程のモデル化を行い,データ回収率(距離に対するデータ回収量の割合)の定式化を行った.モデルを基にデータ回収率の期待値を解析的に求めた.様々なパラメータにおける評価結果から,各ノードが与えられた確率に従ってランダムに起動する場合には,それぞれのノードの起動確率が小さいほうが回収したデータの重複が少なく,最終的なデータ回収率が高くなることが分かった.また,高いデータ回収率を得るためには,ノードの電源容量を考慮し,各ノードが一度はAPと通信できるような場所へのAP の配置が重要であることが分かった.

6B-2 (時間: 15:50 - 16:15)
題名アクセスポイントとの間欠的通信機会を持つ流れるセンサネットワークのための優先度を考慮したデータ回収方法
著者*石原 進 (静岡大学創造科学技術大学院), 佐藤 大輔 (静岡大学工学部)
Pagepp. 1471 - 1478
Keywordセンサネットワーク, クラスタリング, 流れるセンサ, アドホックネットワーク, HEED
Abstract老朽化した下水管の問題箇所発見には,高価な自走式カメラを使ったり,水路をせき止めた上での人手による作業が必要であり,高いコストが伴う.カメラやガスセンサを持つ小型かつ安価なセンサノード群を下水管に流すことで観測が可能であるならば,比較的安価かつ安全に作業が可能と考えられる.本稿では,このような「流れるセンサネットワーク」について,水路沿いに設置されたアクセスポイントとセンサノードの接続機会が限定的であるという条件の下,消費電力,端末数を抑えた上で高い確率で対象領域の観測データを地理的な偏りなく収集するためのセンサノードの動作スケジューリング方法とバッファ管理方法について検討する.シミュレーションの結果,センサノードの電池容量の制限が厳しい場合には,他のノードが回収したデータを預かってアクセスポイントへの転送を行う起動ノードの選択に改良HEED方式を用いることが良いこと,アクセスポイントへの未転送のデータが大きくなる条件では,バッファ管理にRandomDrop型の方式を用いることが有効であることを確かめた.

6B-3 (時間: 16:15 - 16:40)
題名トリアージネットワークにおける参加・離脱特性を考慮した省電力データ収集手法の提案
著者*斎藤 卓也 (慶應義塾大学大学院理工学研究科), 岡本 卓也, 重野 寛 (慶應義塾大学理工学部情報工学科)
Pagepp. 1479 - 1486
Keywordトリアージ, センサネットワーク, ルーティング
Abstract近年,列車事故や地震等の災害時に傷病者の状態に応じて治療優先度を決定するトリアージと呼ばれる救急救命方式が利用されている. このトリアージにおいて傷病者に電子センサを付与し,災害現場でセンサネットワークを構築することで傷病者の生体情報を収集するトリアージネットワークの研究が活発に行われている. トリアージネットワークはノードの参加・離脱が頻繁に発生することでトポロジー変化が大きくなり,情報収集を行うシンクまでの経路切断が発生しやすい特徴を持つ. 経路切断が発生すると経路再構築数と経路制御パケットの送受信回数が増え電力消費量が増加するため,省電力に優れたデータ収集手法が必要となる. 本稿では電力効率経路と安定経路の二種類の経路を形成し,ノードの参加・離脱特性を考慮して使い分ける手法を提案する. 二種類の経路を使い分けることで,電力消費を抑制し,センサの電力切れを回避する.計算機を用いたシミュレーションにより,本提案の有効性を示す.

6B-4 (時間: 16:40 - 17:05)
題名環境発電型WSNsにおけるデータ到達率向上のための送信電力制御方式について
著者*稲葉 友紀, 猿渡 俊介, 渡辺 尚 (静岡大学大学院情報学研究科)
Pagepp. 1487 - 1495
Keyword無線, エナジーハーベスティング
Abstract近年,太陽光や熱,振動から電力を供給する環境発電(エナジーハーベスティング)が無線センサネットワークの電力源として注目されている.エナジーハーベスティングは従来のバッテリとは異なる不安定な電力供給となるため,データ収集時に中継ノードが常に動作可能とは限らない.そのため,ノードの配置位置によってデータの通信頻度が異なり,頻度が高いノードは,周囲のノードからデータが送信されたときに充電期間であることが多く,データの損失が頻繁に発生する.そこで本研究では,各ノードが平均データキュー長によって自律的に送信電力を制御し,ネットワーク全体の通信頻度を高めるRT-TPC(Relay Traffic-based Transmission Power Control)を提案する.

6B-5 (時間: 17:05 - 17:30)
題名6LoWPAN無線センサネットワークにおけるネットワーク長寿命化のためのルーティング制御方式
著者*高橋 進一郎, 阪田 史郎, 小室 信喜 (千葉大学大学院融合科学研究科)
Pagepp. 1496 - 1502
KeywordROLL/RPL, 6LoWPAN, スマートグリッド, スマートメータリング, ルーティング
Abstract端末がバッテリで動作する無線センサネットワークでは,できるだけ電池交換をせずに長時間動作するネットワークが求められており,これまでにも省電力化に関する多くの研究が行われてきた.近年,IPv6に対応したセンサネットワーク技術の研究が盛んに行われているが,過去の研究では十分にネットワークライフタイムが考慮されていない. 本稿では,6LoWPAN無線センサネットワークにおいて,経路選択にバッテリ残量を用いるルーティング方式を提案する.提案方式では,各ノードのバッテリ残量情報を周囲のノードと共有し,バッテリ残量の多いノードをデータ中継経路として選択する.この方式を計算機シミュレーションにより評価し,既存方式よりネットワークライフタイムが増加することを示す.